第5話「はじめてのオーディション」
「テレビに挑戦しねえか?」
パクからのこの言葉が刺さった。
「やろう」
僕はすぐに返事を出した。
「もうすぐ、スター発掘!って番組が始まるらしいんだ。色んなジャンルのエンターテイナーが出場して観客が審査して5つの予選勝ち抜いたら決勝に行けるらしいそこで優勝したらその番組のスターって表彰されまた新しい番組のレギュラー出演権を与えて貰えるらしい、その上名誉も地位も確実に手に入れれる。」
「簡単では無いな」
「もちろん、でも今の俺とお前ならやれる気がするんだ」
初めて見たパクの本気。というか親父の真剣な眼差しに俺は少し感動した。
マジックや人を笑わせることにはこんなに熱い人間だったんだって初めて気付かされた。
俺らは、すぐに桜木さんに話に行った。
「いいじゃねぇか!もっとこの演芸場盛り上げてくれや!」
この時代、テレビなんかあまり許す演芸場は少なかったので
桜木さんがいい人でよかったなってふたりで
話した。
「パク!ロン!」
「おお!クニ!」
光邦が笑顔で近づいてきた。
「凄いね!最近のふたり!僕ふたりみたいになりたいんだ!」
「なれるさ。なあ、パク」
「あぁ、あたりめえだ!」
「あ!舞香ちゃんがパク呼んでたよ!」
「おお!ありがとう、すぐ帰る!」
「うん!じゃあね!」
まさかこの時代でも光邦さんと知り合いになるとは思ってなかったけど
光邦さんがいなかったら、俺はこの時代でもダメだった。
「クニ!明日も観に来いよ!」
「初めてその呼び方してくれたね!ロン!うん!約束!観に来るよ!」
この時代なら俺は頑張れる。
生きていける。ちゃんと人間として生きている実感があった。
そして、ついにスター発掘の1回戦の日。
結果は死ぬほどウケ、マジックも全て成功。
自信はあった。発表まで時間があった。
「パク、飯でも行くか?」
「いや、ほかの出場者の見とくわ。一応」
「そっか、じゃ俺行ってくる」
「おう」
初めて気付かされるパクの本気や真剣さに
俺はいつもびっくりするばっかりだった。
「唐揚げ弁当ひとつ」
「あいよ!」
「あ、ごめん!やっぱりふたつ」
持っていってやろう、あいつが待つ楽屋へ。
「ほい」
「あれお前飯は?」
「お前と食おうと思って」
「お、そっか」
あの時のパクの顔は忘れることが出来ないぐらい、最大の照れと恥じらいと喜びが感じられる表情だった。
そして、結果発表の時
「予選通過者を発表します!
岡崎香織!青春ハンバーグ!
浜味ゆうこ・りょうこ!Gera!大吉!
ロン&パク!松井仁!」
名前が呼ばれた瞬間、ふたりで喜んだ。
久々に握った親父の手は大きかった。
「俺初めてなにかで勝てたかも」
「お!俺も!」
「親父も?」
「お前何言ってんの、浮かれすぎて頭おかしくなったか?www」
「ごめん、間違えたw」
思わず呼んでしまうぐらい今のパクには
心を開いていたし、友情のようなものを感じていた。
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