ツンデレ彼女がデッレデレ
でずな
ツンツンデレデレデレ
私と
席が近かったので、気が合う私達が仲良くなるまでそう時間はかからなかった。最初は友達。けど徐々に私の凛への想いが強くなり、告白した。最初は断られた。でも、その回答とは裏腹に嬉しそうに前髪をいじっていたあの顔は今でも鮮明に覚えている。
凛は心の内を話そうとしない。本当は友達がほしいのに、話しかけてきた人を馬鹿にし突き放す。本当は私のことが好きなのに、つい嬉しくなって断ってしまう。可愛いことに、凛は俗に言うツンデレという類だ。そうわかっていたから私は何度も。季節が変わっても告白し続けた。ついに恋人になれたのは高校3年生の時。ピンク色の花びらが地面に落ち、枝木から緑色の葉っぱが生えてくるような季節だった。
あれからもう5年が経つ。
私は大学に行き、就職。いわゆるOLっていうやつになった。凛は料理の専門へ行き、海外へ修行にいってしまった。
恋人の私のことを残して海外に行くのはどうかと思うけど、やりたいことを突き進むそんな凛が彼女として誇らしい。
と、そんな凛は今日帰ってくる。聞くところによると修行が終わったとか。テレビ電話で顔は見ていたけど、実に数年ぶりの再会。普通の人ならこんな感動の再会、空港に行ってするものだと思う。けど私がいるのは一人だとちょっと広く感じる自分の家。私が外に出ず、家にいてほしいと頼んだのは他でもない凛。どうせ外だと泣いてるところを見られて恥ずかしいから家がいいとか、そういう理由だと思う。
「よし。完成」
テーブルや壁にセッティングした飾り付けをみて、額に浮かんだ汗を拭う。
大変だったけど凛が帰ってくる。そう思えば、これくらいの作業どおってこもない。
時刻は11時。
予定だともう飛行機で日本に到着しているはずだから、帰ってくるのももうすぐ。
『ピーンポーン』
インターホンが鳴った。
「はい」
「凛だけど。帰ってきたらドア開けて」
「今行く〜」
全く。凛ってば感動の再会のなのに、高校生の時から変わってない。でもそれがいいのかも。
「あぁ〜疲れた……。飛行機で長時間座ったあとに、まさかこんな歩くことになるなんておもってなかった。ん? なんか部屋すごいことになってるじゃん」
「まぁね! 凛が帰ってくるってなったから、折り紙から頑張って作ったんだ。どう? 嬉しい?」
「ふん。好きな人にこんなことされて、嫌だなんて思うわけ無いでしょうが」
「ん? ん? それって嬉しいってことだよね? んふふ。冷静に喋ってるかもしれないけど、顔赤くなってるの隠しきれてないよ?」
「こ、これは違う! えっと……歩いてきて、暑いだけ。うん。顔が赤いのは暑いからなの」
「へぇ〜じゃあ、さっきからにまぁ〜ってとろけてる顔も暑いからなの?」
「もちろん!」
「ふぅ〜ん。私にはそうは見えないけど」
必死に嬉しい気持ちを隠すの可愛すぎる。からかわれて、嬉しそうにもじもじしてるのも可愛い。
ちょっと会わない期間が長かったけど、やっぱ凛は凛のままで安心した。
「じゃ、荷物とかは後にして再会のパーティーと洒落込もうか……」
「ご、ごくり」
お涙ちょうだい感動の再会……とまではいかなかったけど、私達らしい再会だったと思う。
この日は一緒に映画を見ながらご飯を食べて、寝るまでここ数年間の話をした。
それからしばらくして、無職だった凛は高級レストランにスカウトされ、私は退職した人の穴埋めとして昇進した。
お互い仕事をして時間が合わない。
だから私達は一週間の中でも、数少ない二人の時間を大事にしている。
「おぉ〜!! これが海外にまで行って修行した、コックの包丁さばき……!?」
「いや、こんなのちょっと練習したらできるようになるから」
「ん〜!! これが海外にまで行って修行した、コックの料理……!?」
「いや、こんなのレシピ通りやれば誰でも作れるから」
なんか普段の凛と違う。いつもなら私が褒めると大体「んふ。そ、そんなのあなたに言われても全然うれしくないから!」って、言い返すのに。
嫌なことでもあったのかな?
「ねぇなんかあったの?」
「別に」
いつもより素っ気ない態度をとられると、余計心配になっちゃう。
「私が役に立つかはわからないけど、何かあったのなら話してほしいな。いやなんもなかったら、なかったでいいんだけど」
「流石私の恋人。何も口に出してないのに、まるで私のことをわかった気になって……」
「不快に思ったのなら謝るわ。ごめんなさい」
「ふん!」
ぷいっと目をそらされた。
絶対に何かあった。なんでその内容を私に話してくれないんだろう? 言えない内容? もしそうだとしたら、話題を逸らしてくるはず。逸らさないということは、私に聞き出してほしいってこと?
全部ただのあてずっぽうだけど、不器用な凛ならそうしかねない。
「……凛。元々私達は他人じゃん。いくら恋人だとしても、あなたのこと全部なんてわからない……。けど、恋人のだからこそ、あなたのことを知りたいの。もし私がいきなり凛のことを避け始めたら、その理由知りたいって思わない?」
「思うに決まってるでしょ」
「私は今、その状態なの。普段とは違う理由を知りたくて、けど言ってもらえなくて、でも知りたいの。それを踏まえて凛。何かあったの?」
「な、何も……あったかも、その、しれない」
「何があったの?」
「この前……」
凛が泣きながら語ったのは仕事場での、実力不足についてのことだった。海外に修行に行ったのに、周りの人たちが自分より数段凄い、と。
私は料理のことなんて一切わからない。だから何も、凛のためになるようなことは言えなかった。私に唯一できることは励ますこと。凛が頑張ってきたのは恋人である私がよく知ってる。
あの夜から一週間が経った。
凛はいつもの調子に戻っている。
「なんで私があなたの料理を食べないといけないの? 料理なら私が作ればいいじゃん」
「のんのん。料理下手な私が作るっていうのに意味があるの。ささっどうぞコック。お召し上がり下さい」
「じゃあ。……まっず」
「え? そんなに?」
「これ、なんでこんなに甘いの? 絶対砂糖と塩、入れ間違えたじゃん……。料理に入れ間違えなんて、現実でする人初めて見たかも」
一週間前、私に向かって泣き崩れたのにもうこの饒舌っぷりである。
「もー! そんなバカにするんなら食べないで。捨てるから」
「もぐもぐ。もぐもぐ」
「ちょっと! なんで全部食べるの!? 正気じゃないわ……」
「ごっくん。……せっかく恋人であるあなたが、私に初めて作ってくれた料理を捨てさせるわけないでしょ」
「それって、ん? 今凛、私のこと恋人っていった?」
「言ってない」
「いやいやいや。言ったでしょ。もしかして認めたくないってのは私のこと、好きじゃなくなったってこと?」
「あなたのことが好きだなんて言わなくてもわかるでしょ!」
からかうつもりで言ったので驚きの返答。
えへへ。そんなこと面と向かって言われると、いくら私でも照れちゃうな。久しぶりに見た凛の本気の顔。
「さぁ〜? 人には直接言葉にして言わないと伝わらないことってあるし? わからなぁ〜い」
「うぐぐ……。知らない! もうあなたのことなんて知らないんだから!」
可愛い。やっぱ、私のツンデレ彼女可愛いすぎる。
「よぉ〜し。凛が美味しそうに食べてくれたし、今度はカレーでも作ってみようかな」
「わ、私が教えてあげるからもう1人で作るのは勘弁して!」
ツンデレ彼女がデッレデレ でずな @Dezuna
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