6通目

拝啓、航。


カレンダーはもうすぐ10月だってのに激暑だねぇ。私が夏が嫌いだから余計にそう感じるのかもしれないけど。


もうすぐ誕生日です。私の。

また1つ年齢を重ねてしまうよ。

お前との差が、どんどん開いていって、もう、なんか、さ。


私は多分、あの時から

ろくに前に進めてないんだなって最近思ったりするんだよね

あの時、突然失った航や凪が、まだ私の胸の中でキラキラしてて

突然今日、思わずお前の名前を口にして

涙が止まらなくなったりして


お前がいなくなってから、まぁ一応何人かの人とお付き合いしたりしたんだけど

結局ぜーんぶダメだった

こんなヤベー奴のこと、まるっと理解してくれてた航は偉大だよ、ほんと。(笑)


思えば私と航は違う境遇のくせに

何故か似た者同士だった

順風満帆な家庭、先生からの信頼はあったけど、同級生に上手く馴染めず孤立してた私と

同級生や先輩に顔は広かったけど、先生と家庭環境に恵まれなかった航と。

行き着いた先が「サボること」になったからこそ、私たち仲良くなれたんだけどさ。


同時、最初私のことどう思ってた?

私はさ、「やべー陽キャ来た怖えー」です。

(笑)

多分航も、「なんだこの陰キャ気持ち悪いな」位だったと思うんですけどね!


なんだかんだサボりが重なるうちに

仕方なく挨拶だけ交わしたり

ぽつりぽつりと会話したり

仕方なく昼飯一緒に食べたり

最初はわりとお互い喧嘩腰で穏やかじゃなかったけど、何で仲良くなったのかなーって思ったら航のおかげだったなって思い出した。


押し付けられた特別教室の掃除、ダルいけどやんなきゃなーって思ってたら

その教室に航が6限サボったまま寝てて。

無視して掃除始めて、結局起こしちゃったんだけどなんか掃除手伝ってくれて。

それから会話するようになったなーって。


あの時、別にまだ好きじゃなかったけど

小さく笑った航の顔を見て

「なんだ、別に怖くない…いい奴じゃん」

って思ったんだよね。

この話したっけ?してたらごめんよ。(笑)


まだ今でも高校で過ごした日々が

そうやって鮮明に振り返れる自分は

多分全然先に進めてないんだと思うよ。

怒られそうだけど。


航。

名前を声に出して、泣いちゃったわ。

好きだよ。今でも。

また、もうすぐお前との差が開いていく。

置いていきたくないのに、

心はずっとあの時のままなのに、

私の身体は未来に進んでしまう。


ダメだな、ほんとなんか最近センチメンタルだわ。

仕事場で新しい仕事任されたプレッシャーかな?ごめんな?

最近役職上がって、担当業務増えたんだよ。

バリバリ働いてる。元気に。


わたしだけが、元気に。




ごめん、きょうはもう無理だ。

また今度。


葵より

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