第3話 姫の魔女1
急激に風景が変化したためクロヌシの頭にとある可能性が浮かぶ。
「
しかし、それはあり得ないものだった。
(いや、違う。
考えても原因が分からなかった、それよりも今はどうしても残念さのほうが勝ってしまう。
「なんにせよ、惰眠ちゃんのスーパープレイが……無駄になっちゃったなー」
あの惰眠ちゃんの完璧なムーブが無駄だったのだと考えると悔しさが込み上げて来る。
そう、クロヌシが
対人で使われることもあるテクニカルな魔術の一つだ。〈レクイエム〉のボスも希に使用してくることがあった。
あの光は経験がある人なら誰だって
(でも、それじゃあ一体なんだったんだ? 新しい
可能性を考えていたクロヌシであったが、それよりさらに重要なことを思い出す。
「あっそうだ。皆と連絡と取らないと!」
あまりにも驚いていたために肝心なことを忘れていた。
そこでクロヌシは一つの違和感に気づいた。
「あれ……? オプション画面が開けない……」
一つの違和感に気づくとそれに連鎖するように違和感に気づく。
「HP、MP、経験値も表示されてない。HUDはいじってないのに……」
視界に存在している筈ものが消えていた。
この不思議な事態に不穏な可能性が一瞬、クロヌシの頭を過った。
「まさか、バグ!? この転移もまさか!?」
(僅かだがあり得る。けど、あの運営に限ってこんな致命的なバグを未発見、未修正なんてことがあるだろうか?)
「ログアウトも出来ないし……これは6時間後の強制ログアウトまで待機だなぁ……」
VRMMOには強制ログアウトというものが存在する。10時間連続でログインしている者が対象だ。時間を忘れてプレイしてしまった人や、現実世界と区別がつかなくなってしまった人の為に存在する法律の一つだ。これのせいでVRMMOプレイヤーは連続ログイン時間に気を付けている。
しばらく絶望していたクロヌシだったが、ふと周囲の異変に気づきキョロキョロと辺りを見回した。
「な!? え!? ここもしかして、新マップ!?」
今まであまりにも既視感を覚える風景であったため気づかなかった。
〈レクイエム〉の中で何度も見た光景だ。だが、人らしき姿はそこには見えず、代わりに二足、もしくは四足歩行をする虫の姿が目に映る。
アダムとイヴで終わりだと思っていたクロヌシには背筋が震えるような喜びがあり高揚感を隠せずにいた。
「なにこれ! ぞくぞくする! 作り込まれたマップに見たことないモンスター! まだ皆で〈レクイエム〉を遊べるんだ……」
(じゃあ、この転移は仕様だったか! それなら許せ……ないな。でも、最後かと思えばまだ続きがあると教えてくれる。きっと運営はこの感動を与えたかったのか! 最後まで戦ったものに与えられる感動を。これだから〈レクイエム〉は面白い)
「よし、今出来ることないし、事前調査という名の観光でもしとこう! もしかしたら皆も飛ばされて来てるかもしれないし」
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