家の中

バブみ道日丿宮組

お題:希望のモグラ 制限時間:15分

「そろそろ外に出たらどう?」

「寒いし、嫌だよ」

「夏でも同じこと言うじゃない」

「外は危険でいっぱいだよ」

「不健康っぽい肌の色、痩せすぎに見える体型」

「食べないし、太陽を浴びないからね」

「モグラのほうがまだ健康的じゃない? 土の中でも動いてるじゃない」

「僕だって、家の中じゃ動いてるよ。トイレにもいくし、お風呂にも入ってる」

「それは人として当たり前の機能というか、動物ならやることじゃない」

「怒らなくたっていいじゃん」

「怒ってるわけじゃない。一緒にでかけたりできないでしょ」

「○ーグルマップ使えば、家でもおでかけタイムできるよ」

「それはおでかけっていわないから」

「欲しいものは通販で手に入るし、家のことだって家政婦さんがやってくれてるよ」

「お金だけあるって残酷よね。おばさまたちも呑気に長期旅行とかいってる場合じゃないのに」

「少なくとも不自由はしてないよ」

「もうちょっと希望を持てるモグラになってほしいわね」

「頑張ったって生態系は変わらないよ」

「あなたが人間なのも変わらないわよ」

「それもそうだね。じゃー諦めも必要だよね」

「……ねぇ知ってる?」

「なにを?」

「赤ちゃんできたみたいなのよね」

「へぇ……、えっ?」

「もちろんあなたとの子どもよ」

「ちゃんと……避妊してたよね? そもそも僕らの関係上とある行動をしないと作れないよね」

「それをしたから、こうなってるの」

「……どうしよう」

「付き合い始めてもう十年。そろそろそういう時期に入ったのよ」

「でも、君大学生だよね?」

「あなたは無職」

「だ、大丈夫かな!?」

「おばさまには連絡したけど、さっさとくっついちゃってきたわ」

「……お母さん」

「あなたは二人目のお母さんになるのだからね」

「メスとメスでもできるようになった生態系ってすごいよね」

「革命的な進歩ともいえるわね。誰とでも結婚できるいい発展」

「それでーーいつ僕の体液を取ったの?」

「あなたがイって痙攣してるときにね」

「意識がないときじゃん。不可抗力だよ」

「そうでもしないと、あなた動いてくれないじゃない」

「それはそうかもしれないけど……うーん」

「結婚式はしなくてもいいからさ。私と結婚して欲しいの」

「そ、そう……わ、わかった。子どもができるなら、そうする」

「じゃぁ、これに記入して」

「婚姻届ね」

「はい、書いたね? じゃぁ、もう結婚したのと一緒!」

「え、え? どういうこと? 子どもは嘘だってこと?」

「これからかこれまでの違いでしかないよ」

「えー」

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家の中 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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