#新匿名短編コンテスト・四季の宴
板野かも
開催要項
開催にあたって(長文につき読み飛ばし可)
皆様、平素は匿名短編コンテストシリーズへの格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
このたび、晴れて新匿名コンの第2回「四季の宴」を開催できる運びとなりました。
このページをご覧下さっている全ての皆様に厚く御礼申し上げるとともに、今回からの新機軸と、そこに至った経緯を改めてご説明させて頂きます。
幸いにも多くの方のご参加を賜り、盛況の内に幕を下ろした新匿名コン第1回「再会編」ですが、その盛り上がりの一方で、主催者としては一つの大きな課題に改めて直面することにもなりました。
それは、旧匿名コンの時点から根強く存在した、応募作の掲載順による得点機会の圧倒的な不均衡です。
投票者に全作品の完読義務を設けない自由投票形式においては、どうしても、序盤の作品にPVが集中し、掲載順が後半になるにつれてPVが漸減する傾向があります。加えて、あらゆる方に投票をオープンにしている以上、通りすがりで興味を持って下さった方が、序盤の数作品にのみ目を通し、その全てに応援ハートを押したきり、それ以降の作品は読まずに去ってしまう――という現象すら頻繁に起こりえます。かくして、序盤掲載の作品群は、言葉を選ばずに言えば、それ以降の作品群よりも一回り多い票数を実質無条件に得られる立場となってしまうのです。
もとより、行動・執筆の早い作者が多少の有利を得るのは妥当であるとの意見もありますが、その不均衡を容認できるのは、その優位性が「多少」にとどまる場合に限られます。しかし、前回の匿名コンでは、「多少」といえる範囲を遥かに超えて、序盤組と後発組の間に、作品自体の魅力によっては埋めがたい圧倒的な得点格差が生じてしまっていました。
参考までに、前回の匿名コンにおける、初日掲載分の37作品の得点の平均値・最大値・中央値・最小値は、それぞれ「35.30」「70」「33」「16」であるのに対し、それから第1回中間発表までに掲載された30作品では「27.33」「46」「26」「15」、第2回中間発表までの41作品では「26.02」「49」「26」「13」、それ以降の68作品では「21.85」「39」「22」「7」であり、一回り以上の格差が存在していることが見て取れます。最終順位では、上位16作の内、実に13作を初日掲載分の作品が占めており、後発組で最も読者の支持を集めた作品でも7位にしかランクインできていません(それとて掲載順においては半分より前であり、それ以降の作品群については何をか言わんやです)。
ありていに言って、後発に回った時点で、いかに作品が魅力的であろうと序盤組に対して全く勝負にならないのです。ここまでの不公平が数字で実証されてしまった以上、主催者にとってその解消は責務であり、次回開催にあたっての絶対条件となります。
旧来、こうしたイベントにおける得点機会の公平性の担保に関しては、以下のような方法が考えられてきました。
第一に、投票者を参加作者のみに限定し、かつ全作品の完読義務を設けるという方法。過去、実際にこの方式で開催されたイベントもあります。しかし、参加のハードルが非常に高くなり、また閉鎖的な雰囲気となるため、匿名コンにおける採用は考えられません。また、参加作者のみに完読義務を設け、それ以外の方からは自由に投票を受け付ける形にすると、参加作者以外からの投票は現状と同様に序盤作品に集中することとなるため、意味がありません。
第二に、開催期間中、作品の掲載位置を定期的に並べ替えるという方法。これも他の方のイベントで過去に行われたことがありますが、結局番号が付いている以上は順番通りに読みたがる方が多く、また単純にどの作品が既読か分かりづらいという不便さもあり、煩雑な処理に見合うだけのメリットは期待できません。
第三に、掲載位置に応じて得点に加算処理を行ったり、匿名コンの「参考スコア」のような実得点以外の数値指標を正式順位の算出に用いるという方法。これは一見有望に思えますが、不均衡の存在を前提とした処理をルールとして組み込んでしまうと、実際にそこまでの不均衡が生じなかった場合をはじめ、諸々の突発的な事情に対処できず、却って公平感を削ぐ形となりかねません。また、後半の作品ほど有利になる扱いを明文化すると、誰も前半に作品を出したがらず、初動の盛り上がりが損なわれる可能性も危惧されます。
第四の方法は、応援ハート等による無制限投票の形式ではなく、全作読了者を対象に、気に入った作品を上限数まで選ぶなり、持ち点を割り振るなりして投票してもらうという形。これが最も公平と思われますが、しかし、参加者間の友好的な交流を旨とする匿名コンにおいて、上限を定めて「選ぶ」形式は、誰が誰の作品に点を入れただの入れないだのでイヤな気持ちになる方が必ず出るため、採用したくないという事情があります。その点を解決するには、投票者の内訳を公表しつつ、投票者名のみを隠して各投票内容を公開する(→誰からも「自分の投票が反映されていない」との指摘がなければ、主催者の不正がないことが証明される)という形が考えられますが、上限なしの投票の自由さに優るメリットは見出せないでしょう。
このように、既存の案のいずれも改善の決め手とはならない中、有志の皆様との意見交換の中で新たに浮上してきたのが、作品単位ないしグループ単位で公開期間を定め、期間の過ぎた作品を順次非公開にしていくというアイデアでした。確かにその方法なら、前半の作品ばかりに得票機会が集中することは防げます。しかし、短期間で早々に作品を非公開としてしまう仕様にはそれはそれで不満が続出することが予想され、さりとて開催期間の最後に改めて全作品の投票期間を設けることにすれば、またしてもそこで前半組にばかり票が集まる問題が繰り返されます。
そこで、この発想を出発点として、さらに一捻りを加え、今回は、一つのイベント内で複数のテーマを設定し、テーマ単位で公開期間を切り替えていく方式を導入することとしました。順位自体もそれぞれのテーマ内でのみ競う形とすれば、テーマ間のPV格差も問題となりません。さらに、従来のように、日々投稿される作品をその都度公開するのではなく、事前の受付期間中に投稿された作品を、テーマごとの公開開始日に一斉公開することにすれば、各テーマ内での掲載順によるPV格差も可能な限り抑えることができます。以上が今回の匿名コンにおける新機軸のその一、「テーマ別コンテスト」です。
しかし、それでも、実際に掲載順というものが存在する以上、それぞれのテーマ内において、やはり前半組が後半組と比べて有利となるのは否めないでしょう。特に各テーマ冒頭の作品群には、現状と同様、無条件に多くの投票が寄せられることが予想されます。
そこで、新機軸のその二として、各テーマの掲載順の冒頭に、主催者および有志の執筆による「ダミー作品」を何作か配置することとしました。ダミーという言い方が味気ないなら「オープニングエキシビジョン」でもいいのですが、冒頭の作品群にのみ無条件に多くの票が入る現象を回避できない以上、その位置には応募作を置かなければいいという逆転の発想です。各テーマの冒頭にはダミー作品のみが並び、そのあとに真の応募作が並ぶ形となりますが、どこまでがダミーでどこからが応募作かは結果発表時まで誰にもわかりません(100%ダミーとわかる一作目にはオレオでも置いておきましょう)。
ダミー作品の執筆は、主催者自身に加え、参加作者をはじめとする有志の皆様にご協力をお願いする形と致します。ダミー作品には最終順位が付きませんが、最も多くの人に読まれる美味しい立場でもあるため、通常の応募とはまた違った楽しみを見出せるかと思います。
以上、新機軸その一・その二をもって、得点機会の不均衡の解消には一定の成果が望めるのではないかと考えています。しかし、これだけでは、従来の匿名コンの楽しみ方に慣れた方にとっては、新たな不満も生じることでしょう。第一に、テーマごとに公開期間を区切り、かつ事前に受け付けた作品を一斉公開する形式とすると、それだけ投稿から公開までの空白期間が長くなり、間延びが懸念されます。第二に、一斉公開形式では、日々作品が増えていく楽しみや、既存作に対応して新たな作品を執筆するといった遊び方の余地がなくなり、参加者間の双方向性が削がれる形となります。第三に、最後に改めて全テーマの投票期間を設けるとはいえ、公開時期を過ぎた作品が一旦非公開となってしまうのは、単純に面白くないと感じる方も多いでしょう。
そこで、これらの不満を解消する手段として、カクヨムの「下書き共有機能」を用いて、応募作を順次、皆様に閲覧可能な状態とし、本公開・投票期間に先立って作品を物色したり、感想を語ったりできるようにします(作者が特に望むなら、本公開まで作品を伏せておくことも可能とします)。これを新機軸のその三とします。
投票(応援ハート及びコメントの付加)は本公開まで不可能なので、従来のように、先に投稿された作品が後発組に比べて圧倒的に有利になるということもありません。また、テーマごとの公開期間を過ぎた作品も、引き続き「下書き共有」では公開を続け、いつでも読み直せる形とします。
この形なら、得票機会の不均衡を抑えつつ、限りなく従来の匿名コンに近い楽しみ方ができるかと思います。
最後に、不均衡への対処の話からは離れますが、前回匿名コンの終了後のアンケートにおいて、比較的多くの方から寄せられたのが、「参加者数・作品数が多すぎる」という意見でした。
そこで、今回は試験的に、お一人あたりの応募作品数を「各テーマ2作まで」と制限してみます。各テーマ1作とせず2作なのは、どうしてもコメディとシリアスと両方書きたいとか、同テーマ内の自作品同士で関連を持たせたいといった需要も少なからずあると思われるためです。
多作派の方にとっては窮屈な制限となり恐縮ですが、それ以上書きたい場合はダミー作品にてお願いします……ということでご勘弁下さいませ。
以上、長々とご説明致しましたが、今回の各施策により、匿名コンをより多くの方に不満なくお楽しみ頂けるイベントに生まれ変わらせることが私の願いです。気になる点がございましたら、お気軽にお尋ね頂けますと幸いです。
それでは、いよいよ開幕です。今回のテーマは「春」「夏」「秋」「冬」、イベント名は「新匿名短編コンテスト・四季の宴」とします。
皆様の才気溢れる物語の数々を拝読させて頂けることを、私も一読者として楽しみにしております!
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