13 手抜きってわかるよね

 馬鹿の考え休むに似たり。似たり?元は下手だっけ?分からぬ。


 考えてても名案が浮かぶことはなく埒も開かないので適当に暴れながら進む。

 体を動かすことで血流もよくなり頭が働き名案が浮かぶ。たぶん、きっと、おそらく。


 そしてそんなどうでもいいことを考えているとふと思う。

 そういえば、ここって何でアンデット系湧いてるんだ?


 始めの野生動物達は分かる、フィールドとマッチしてるし生態系や環境と言われれば納得できる。


 じゃあアンデットは?何でここにいる?夜だからか?切り替わった?それにしても他が一切いないってのはないだろ。


 そもそも夜に出るにしたってそれなりの理由はあるだろ。

 土葬メインの地域で夜にゾンビやスケルトンでるフィールドですってんならさ、ファンタジーってかゲームなんだし全然乗れる。


 そう、ゲームだから全然関係ない所で関係ないもの配置されたら萎えるんだよ。

 作った奴は何考えてるんだって。

 勿論それが初見では唐突に見えても伏線だったり見返したらしっかりと理由があったりで感心することはある。


 一方で理解のないまま適当に投げやりに作られたものは存在してやっぱりわかってしまうのだ。それが嫌なんだ。

 自分の我儘だとわかっていても。


 じゃあそれを踏まえてここは?アンデットが湧いてる理由があるのか。

 答えは多分YES。


 ここまでのゲームを作る奴がこんなところで手を抜くとは思えない。それにゲームというより世界そのものといっていい。


 だんだんと考えがまとまってきた気がするね、仮定の上に仮定を重ねてるだけだけども。何となく大きくは外れてない気がする。


 アンデットとは、今回はゾンビとスケルトンとゴースト。いずれも起源に人間、エルフとかもいるから人型範疇かな? 


 とりあえず人とそれに近い生命体が死んだりしてそこから生まれるってのが多いだろう。

 ってことはだ、どういった理論で死体から変化したのかはわからないけど、おそらく大量に死人が出る事件があったわけだ、事故かもしれないし災害かもしれないけど。

 そしてそこから溢れたアンデットがここをさ迷い歩いていると。


 後半雑になったけどそれっぽいな。


 土砂崩れか洪水か疫病か…… とにかくフィールド一つ埋めるだけの数となれば街の一つくらい滅んでてもおかしくはなさそうだな。


 モンスターとして認識されてからはゲーム側でリポップとか調整されてそうだけども。


 ―――フィールドを書き換えられる?いや、さすがに話が飛躍しすぎたか。一旦忘れよう。本題はそこじゃない。


 アンデット発生の背景が設定されているなら、発生元があるなば、そこに向かえばいいわけだ。


 そう思えばあいつら種類もバラバラなのに進行方向同じだなよな?

 道外れてアンデットたちのやってくる方角にでも向かってみましょうか。











「浄化」


 ふと思い出したんだけどね、職業が侍祭で浄化のスキル持ちな訳ですよ。そして敵はアンデット。

 結果はこちら。


「uva..aaa....a....」


 白煙を上げながら崩れ落ちるゾンビさん。ボロボロと塵へ変わるその姿は人によったら絶叫ものかも。


 この浄化スキル、2種類の使い方がありまして、超近距離ってかほぼ接触レベルで近づいて相手に掛ける使い方と武器や魔法にエンチャントする方法。

 手とかの任意の発動始点から300mm程度の半径の光を出せるからそれを押し付ける感じ。


 直接なら接触部位から浄化の特攻判定で部位崩壊が発生するし、その付近もどんどん光に侵食されて広がっていく。


 エンチャントは大体3発程度は効果が持続、魔法エンチャントとは違って一律効果時間じゃないっぽい。浅い当たりなら5発程度、深く突くなり切り込めば2発で消えるときもある。


 それでいて消費は極小、リキャストも5秒程度。

 強すぎない?いやこれまじで特攻とかそのレベル超えてるんだけども。MP消費なんて自然回復で相殺レベルだしリキャストも次使うまでに空けるじゃん。


 職業選択による取得可能スキルの範疇だとしてもバランスブレイカーじゃんこれ。


 あ、いやでもあれか、ここってまだ一応1エリアだし格下なるのか。格下の初期エリアの雑魚に特攻スキルぶっ放して一撃って考えたら普通な気がしてきた。ってか多分こんなもんだ。


 とりあえず浄化スキルは有用ということがわかってきたところで探索スピードも上がってきた。


 アンデットのやってくる方角を遡るように進めば明らかに見覚えのないルートに出てきた。所々草木に呑まれた石畳も見える。そして明らかに敵の密度が上がってきた。


 一体一体で考えれば正直南の狼のほうが強いだろう。それでも数は暴力でひとたび後手に回れば飽和し押しつぶされかねない物量である。


 まぁPTならまとめて範囲で焼けばいいんだろうけど。ソロなもんで。リソース管理考えると範囲をポンポン連打したりはあんまりね?

 DPSやらDPMで考えれば悪くないんだけども。


 エンチャントした斧槍を振り回しながら蹴りと魔法で間を埋めていく。そしてたまに殴る。

 どうしても周りの木に引っ掛けてしまわないようにコンパクトな取り回しが要求されて力が乗りきらない。でもこれもいいね、反復、練習新しい使い方を覚えて出来ることが増えていく。ゲームの醍醐味の一つだ。


 振り下ろしから跳ね上げて蹴り、石突で殴打して魔法で追撃してまた振り下ろす。

 エンチャントすれば倒しきらずともDotで落ちるから楽でいいね。前へ行くことのが楽になる。


 アンデットを薙ぎ倒し続け自然に埋もれた道を辿り続ければ視界が開けてきた。

 そしていつぞや見たアイコン、ボスエリア。


 いやぁここまで長かったね、いやほんと冗談抜きでさ。

 MPは8割弱、スタミナゲージはちょうど半分。合間に間食してたからね。学習するんですよ私は。


 フィールド境界線を越えてインスタンスエリアへと足を踏み入れる。


 前に感じたのと同じゲシュタルト崩壊でも起こったかのような独特の地に足のつかないというか不安定感を感じる。


 エリアの境界を抜ければ森の中にぽっかりと空いた広場のような空間が広がっていた。

 広場の端には切株がいくつも存在し、ここ切り開かれた空間であることを主張してくる。


 そしてこのフィールドの主であろう彼はただそこに立っていた。

 確かな質量を持ったその姿、これまでに相手にしてきたアンデットとは一線を画す格を認識させられる。


 ランバージャック・スピリットLv?/?

 フィールドボス/ノンアクティブ

 適性:?/属性:?

 スキル:?


 俯いたまま立ち尽くしていた彼が顔を上げる。ダラリと下げられていた両腕が、何かを支えるよう持ち上げられる。

 モヤが渦巻きその手に現れたのは皆大好きチェーンソー。


「まじかよ、おかしいだろそれぇ!!」


 心からの叫びは駆動音にかき消される。落ち窪んだ眼孔に怪しい光がともり俺を見据えている。

 唸りを上げ高速回転するチェーンソーの圧力や否や。


 勝てる気しないんですけどこれ?

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