美しい傷
葵染 理恵
第1話
「パンティを脱いで、パパの所においで」
松島克也は小麦色に焼けた裸をベッドに沈めて、制服姿の倉根真奈美に向かって手招きした。
真奈美は羞じらいの色を見せつつ、白い下着だけ脱いで、大の字になった松島の顔の上に股がった。
「美味しそうなキャンディーだ。さあパパに舐めさせて」
と、言うと艶やかな太腿を撫でながら、口元に陰部がくるよう、しゃがませた。
陰毛の隙間から見えるクリトリスが、より見えるように二本の指で、かき分けると、ひと舐めした。すると真奈美の体はピクリと反応する。
松島は嬉しそうに、唾液をたっぷりつけながら真奈美のクリトリスを舐め回す。柔らかかったクリトリスが一瞬でぷっくりと膨らんだ。
「ぁあん…ぃや……」
と、言いつつ生暖かい舌で舐め回される行為に、くねくねと体が感じていた。
松島はスカートの中から顔を出すと、上半身を起こした。
「真奈美ちゃんは敏感だよね」
とニヤニヤしながら、真奈美のブラウスのボタンを外す。すると、こんもりとしたおっぱいが、早く舐めてと言わんばかりに乳首を固くして顔を出した。
松島は、弾力のあるおっぱいに顔を埋めるようにして抱きつくと、片手で優しく胸を揉み、片方の胸にしゃぶりついた。
「あぁ…ぃやあ……んん…」
真奈美は我慢が出来ず、松島の固くなったぺニスに自分の陰部を擦り付ける。
「ん、パパが欲しいのか?」
と意地悪に聞く。
顔を火照らせた真奈美はコクリと頷く。
「可愛い、やつめ」
鍛えた腕を真奈美に絡ませて、抱きかかえたまま体勢を変えた。
松島は素早くゴムを付けると真奈美の液と唾液で、ぐちょぐちょになった膣に、ぺニスで円を描いて焦らした。
「ん…はやく…」
甘えた声で催促すると厭らしい顔で真奈美を見つめながら、ゆっくりペニスを挿入した。
「あぁぁぁーーん」
ピストン運動が激しくなると、真奈美の喘ぎ声が大きくなり、松島も低い声を漏らす。
「もうだめ…いっちゃう…」
「俺も…いく…」
と、力強く膣の奥まで擦り上げると二人同時に頂点に達した。
「はぁはぁ…真奈美ちゃんのここは、絞まりがいいから…はぁ…すぐいっちゃうな」と言うと、また指でクリトリスを触り始める。
すると真奈美は腰を捻らせて拒んだ。
「ピクピクしちゃうから、触っちゃ駄目」
「はーい、ごめんごめん」
お預けをくらった子犬のように、しおらしく手を引っ込めた。
その隙をみて「私、明日も学校があるから先にシャワーしてくるね」と、駆け足でバスルームに避難した。
(変態親父!)
嫌悪で顔を歪ませた真奈美は貸衣装の制服を乱雑に脱ぎ捨てた。唾液と汗でベタベタになった体に熱いシャワーを浴びて念入りに洗い流すと、急いで私服に着替えて部屋に戻った。
すると松島はスーツに着替えて煙草を吹かしていた。
「シャワー浴びないの?」
「もう二十三時過ぎているから、俺は帰ってから浴びるよ。終電に乗り遅れたら困るだろう」
と、真奈美に六万円を渡してから部屋の出入り口に向かった。
自動精算を済ませると、二人は薄暗い廊下を足早に歩いて駐車場に向かう。
「真奈美ちゃん、明日も会える?」
「御飯だけ?それともプラスアルファ?」
「勿論、プラスアルファで!」
「分かった。じゃ十八時半に鳳来の前ね」
「OK!明日は中華料理か、楽しみだな。けど、一番の楽しみはデザートだよ」
と、言うと真奈美に口づけをしようとする。
真奈美は咄嗟に鞄で顔を隠した。
「約束を忘れたの!キスとフェラと生の行為NGって言ったよね」
「ごめん、あまりにも真奈美ちゃんが可愛かったからつい」
「次、約束を破ったら、真奈美のパパじゃなくなるからね」
「はい、了解」
と、黒光りした高級車に乗り込むと、近くの駅まで真奈美を送りとどけた。
「気をつけて帰るんだよ」
「うん、おやすみ」と、言って真奈美は駅の構内に消えていった。
秋晴れの気持ちいい午後。
真奈美は使われていない部室で米澤里香を待っていた。
二人の出会いは、当時、三人目のパパと里香が腕を組んでカラオケ店に入店した時、受付をしていたのが真奈美だった。二人は別のクラスだったが、スタイルの良さと好きなファッションも似ていて、お互いに何となく気になっていた。なので、私服で薄化粧をしていた里香が同じ学校の同級生だとすぐに分かった。
けど、プライベートで誰が何をしていようと興味がなかった真奈美は何も言わずに淡々と業務をこなした。
そんな真奈美を気に入った里香は一緒にパパ活しない?と誘ったのである。
始めは断ったものの、早く独り暮らしがしたい真奈美は一回で何万も貰えると訊いた瞬間、二つ返事でパパ活をスタートさせた。
「お待たせー!」
里香の明るい声が部室に響き渡った。
「びっくりしたー、なに?何か良いことでもあったの?」
「ふっふっふっ…」
里香はニヤつきながら、後ろに隠していたバッグを掲げて見せた。
「ただぁーん!バタフライミュウルの新作バッグ!」
「うわあー可愛い!持たせて」
「いいよー」
オリーブ色に、ビビットピンクの蝶が大小合わせて五羽が描かれたバッグを受け取ると、色んな持ち方でポーズをきめて見せた。
「どお?」
「あはは、真奈美、似合うよ」
「いいな。マジで可愛いね。私も欲しいな」
と、羨ましそうにバッグを返した。
「真奈美も買って貰いなよ。 新しいパパって大きな病院の息子なんでしょ?」
「うん…」
「だったら三十五万くらい出してくれるよ」
と、言われても、真奈美は浮かない顔をしていた。
「どうした?新しいパパに嫌な行為を強制させられた?」
「嫌な行為じゃないけど……唾液が…」
「唾液?」
「そう…もう身体中、唾液と汗で、ベトベトにされるの!それが気持ち悪くて…」
「なーんだ、そんな事か。私なんて顔に精子をかけられた事があったよ」
「えーっ」
「キモいでしょ。けど、一時の我慢で福沢諭吉が何人も手元に来ると思えば我慢できるよ。真奈美は、まだ二人目だから難しいと思うけど、そのうち唾液くらい馴れちゃうよ」
「そうかな……てかさ里香は、どうやって三十
五万のバッグを、おねだりしたの?」
「八人目のパパが、ド変態野郎でさ、透明な液が付いたパンティが欲しいって言うから、ならバタフライミュウルの新作バッグを買ってくれたらあげる。って言っただけ」
「うわぁー、そんな奴もいるの?」
「いるよ、いる。逆にこんな、か弱き乙女と金で、どうこうしたいと思っている奴は変態しかいないよ」
「えっ?か弱き乙女は、自分のショーツをバッグに替えたりしないよね」
と、的確なことを言うと、一瞬、なんとも言えない間が流れて、二人は同時に笑い転げた。
ひとしきり笑い合った後は、売店で買ったお弁当を広げてコスメやファッションの話題で盛り上がり昼食の時間が終わった。
「真奈美、今日は?」
「今日も会いたいって言われているよ。里香は?」
「私もだよ。それじゃまた明日ねー」
「うん、バイバーイ」
真奈美と里香は手を振って、自分のクラスへ戻っていった。
ホームルームが終わり外は薄暗くなっていた。真奈美は一人で電車に乗って帰宅した。
真奈美の父は倉根法律事務所を経営している為、都会に三百坪程の大きなモダンな家に住んでいる。
「ただいま」
リビングのソファーで紅茶を飲みながら寛ぐ母の姿を見て真奈美は「今日もお出掛け?」と訊いた。
「そう、後でお友達と食事に行くから、真奈美は何か頼んで食べてね。お金はいつもの所に置いてあるわ」
と、言うとファッション雑誌に目を戻した。
真奈美はダイニングテーブルに置かれた五千円札を掴むと自分の部屋に戻った。
(あんな胸の空いた服で友達と食事……またホ
スト通いのくせに…嘘がバレバレなんだよ!)何ともいえない寂寥感からスクールバッグをベッドに叩きつけた。
「あームカムカする」
まだ真奈美がカラオケ店でバイトをしていた頃、体調が悪くなって早退した時に、母が若い男と一緒にホストクラブへ入って行くのを目撃していた。それ以来、服装とメイクで母の嘘が分かるようになっていた。
白で統一された部屋に、かかっている壁時計で時間を確認する。
「はぁ、用意しなきゃ…」
気が進まない思いを持ちながら私服に着替えて、メイクをしていると、玄関が閉まる音が聞こえた。真奈美は扉の先を睨み付けたが、母が戻ってくるわけもなく、気持ちを切り替えて支度の続きをした。
髪を巻いてオレンジ色の口紅で大人可愛い感をだして完成させると、待ち合わせ場所に行
くために駅へ向かった。
五つ先の有楽町駅で降りたらすぐに二十代の男性に声をかけられた。
「お待たせー、これから何処いく?」
真奈美は瞬時にナンパ男の持ち物をチェックすると、首を横に振って歩き続けた。
ナンパ男は諦めず声をかけてついてくる。
しつこくついてくる男性にイラつき始めた時だった。後方からクラクションが二度聴こえた。
二人はクラクションが鳴った方を振り向くと、濃紺のスーツを着た松島が「おいで」と真奈美を呼んだ。
真奈美は男性にむかって「あんたウザすぎ!」と言い放つと、松島の車に乗り込んだ。
「パパ、ありがとう」
「どういたしまして。で、今の男は誰?」
「ただのナンパ男。真奈美、お金を持ってない男性には興味ないから無視していたの」
「あははは、真奈美ちゃんは素直だな。ます
ます気に入った」
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