第19話 神のイタズラ?
「……」
「……」
俺の朝は早い。
社畜時代と違い、健康的な生活習慣を送っているため、朝は日の出とほぼ同じ時間に起きる。
とても幸せだ。
何たって、質が高く十分な量の睡眠が取れるのだから。
だが、今日ほど改善した生活習慣を後悔したことはないだろう。
今朝の5時頃に起床。
朝食はヴィーに6時半と伝えてあるので、その前に畑で一仕事する。
土をいじり、雑草を引き抜き、苗の状態を確認。
一時間もする頃にはすっかり日が昇り、土まみれになる。
だから軽くシャワーでも浴びようと、着替えを持って浴場に向かった。
その方が洗濯物を運ぶ手間もない。
その考えが間違えだった。
話は冒頭に戻る。
浴場に繋がる更衣室の扉を開けた俺の目の前に飛び込んできたのは肌色。
風呂に入るため、今まさに服を脱ぎ終えたエイルの姿だった。
すらっとしながらも魅力的な肢体。
身長は高めだが、それが逆に彼女のスタイルの良さを引き立たせているように思える。
『お手本のようなラッキースケベですね。よっ、主人公!』
『女神……これはお前の仕業か?』
『またまた~、そんな憎まれ口叩いて。本当は嬉しいくせに~』
『……』
『冗談です! 誓って私は何もしていません!』
誓って何もしていないって、お前は誓われる側の存在だろ。
エイルは口をパクパクさせて微動だにしない。
その顔は彼女の燃えるような髪色に引けを取らないほど紅く染まっていた。
いや、肩まで真っ赤になっている。
何か声を掛けないと。
「その……スマン」
「~~ッ!!!」
拳が飛んできた。
***
結局、俺は自室でシャワーを浴びた。
着替えて食堂に向かうと、そこには既にエイルの姿があった。
顔が赤いのは、風呂上がりだけが理由ではないだろう。
「……悪かったな、さっきは殴って」
「いや……お前の方こそ大丈夫か?」
俺とエイルには身体の強度的に大きな差がある。
例え魔法を使っていたとしても、殴った彼女の方がダメージを受けるくらいには。
こんなことなら避ければよかった。
不可抗力とは言え、覗いた形になってしまった罰と思い、エイルの拳を甘んじて受けたんだが。
ヴィーにも治療の手間を掛けたしな。
てか、回復魔法まで使えたんだな、アイツ。
「ああ、怪我は討伐者稼業にはつきものだからな」
「そうか」
「……」
「……」
スゲぇやりずれぇ。
エイルは俺に見られたのを思い出したのか、そっぽを向いて再び赤くなっている。
誰か、このヘンな空気を打破してくれ。
「どうしたの」
「……ぶっ殺す!」
「いきなり!?」
俺が願ったからか知らないが、食堂にネアとシルヴィアがやって来た。
……何となく状況が見えてきたな。
ネアがエイルに風呂を勧める。
エイルは浴場に行くが、どちらが女湯か分からない。
俺は土いじりから帰ってきた時の為に湯を張っていたので、そちらに入ればいいとエイルは勘違いする。
そこへ俺がやって来る。
二人の言い争う様子からも間違っていないようだ。
シルヴィアはどうしていいのか分からず、ただあたふたする事しかできない。
最終的にネアとエイルの喧嘩は、朝食を運んできたヴィーによって成敗されるまで続いた。
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