転生した元社畜は異世界でスローライフを送りたい
匿名Xさん
プロローグ
元一般社畜は異世界でスローライフを満喫しています(多分)
※1話目なので格好つけましたが、本作品はスローライフを本筋としたほのぼの作品(たまにバトル)となっております。
よろしければ、ご意見・ご評価・ご感想などをお聞かせください。
――
大気を切り裂き、鈍い唸りを上げて向かってくるは紅蓮の一撃。
それはまるで巨大な壁が迫ってくるかのようであり、常人ならば当たったが最後、次の瞬間にはミンチになっていること間違いなしだ。
まあ俺の場合、まともに食らってもさして問題はないのだが。
そうだとしても、これだけの攻撃が直撃すれば普通に痛い。
俺は振るわれた
直後、目標から外れた攻撃は大地へと打ち付けられ、ミサイルでも着弾したのかと思うような爆音が轟く。
一拍遅れ、風圧とともに土や石が周囲に飛び散る。
だが、それも見越して大きく回避したので俺には何らダメージはない。
初撃を無傷で切り抜けられたのが気に食わなかったのか、攻撃を放った主は面白くなさそうに低く唸った。
心臓が弱い者なら睨まれただけで命を落としそうな鋭い眼光。
口の端から洩れる赤い吐息は、何℃あるのか考えるのも馬鹿らしい高温。
小山ほどある巨体を燃え盛る炎のような鱗が覆い、広げた翼はスーパーセルに匹敵する竜巻さえ引き起こす。
――特級指定生物
世界の一つや二つ簡単に滅ぼせそうなこのドラゴンだが、これでも幼竜――つまりは幼体だと言うのだから驚きだ。
事実、あと数百年くらいして成竜になれば、山と見紛うばかりの巨体に成長する。
俺と赤竜は互いに睨み合う。
先程の攻撃は小手調べだったとはいえ――いやだからこそ、あの尻尾の一撃を軽く避けて見せたことで、赤竜は俺をそこらの有象無象とは違うと理解したようだ。
示し合わせたかのように、俺と竜が同時に動き出す。
赤竜が一つ咆哮を上げると空中に無数の赤い魔方陣から現われ、そこから俺の身長と同程度の火球が斉射される。
流石、幼竜といえどドラゴンだ。
一発一発の威力もさることながら、これだけの数の魔法を並列行使するとなると、莫大な魔力に加え、緻密な魔力操作技術も要求される。
そこらの一般宮廷魔術師とは雲泥の差だ。
迫り来る火球の群れに臆することなく、俺は縦横無尽に回避しながら赤竜との距離を詰める。
ふと、背後の地面をチラリと見る。
そこには融解してガラス状になった窪みが幾つもできあがっていた。
回避はともかく、このままだと周辺被害が凄いことになりそうだ。
短期決戦。
やはりこれに限る。
俺は右の拳に力を込めた。
迫り来る赤竜の牙。
刹那、俺と赤竜の影は重なり――
さて
どうして俺は現在、RPGの勇者バリに赤竜とタイマンを張っているのか。
それには深い――訳でもないが、まあそれなりの理由がある。
これは何の取り柄もない元一般社畜の俺が、スローライフを満喫するために奮闘する物語だ。
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