腐れ乙女の茶話拾遺
赤樫いつき
第一話 狂った茶番 ①
巨大であることは純粋に支配者の権威を象徴する。それは長い歴史のなかで育まれてきた民族の精神性が色濃く表れた形質だ。
一方で、
忍は茶室が気に入っていた。校舎から離れているおかげで、そこは周囲の
だがそれゆえか、忍は現在、昼休みの自由を
入学からまだ間もないというのに茶室で昼寝に耽ってばかりいた忍の
なかでも、忍が通っているのは〝お嬢さま学校〟の名門で知られる梓山女学院大学の附属学校。いちおう、高等学校までは男女共学制を取っているものの、入学者は女性比率が高く、親御が箱入りの娘を安心して預けられるような規律に正しい学び舎を
忍の素行を見かねた学校から小倉家に状況の改善を求める連絡が届いたのは昨晩のことだった。同僚いわく、受話器を握っていた家政婦長は
現在、一年三組の教室では四限目の数学の授業が行われている。
忍は隣席の女生徒から奇異の目で見られていることに
今朝がた、家政婦長に道場まで呼び出され、
右頬に触れてみれば、
「昼の時間、しばらくは一緒だから」
授業を終えて、購買部に向かおうと教室の引き戸に手を伸ばしたところだった。
唐突に背後から掛けられた言葉は
声を掛けてきた女生徒の名は小倉
「ああ……いや、わざわざ、お嬢さまの手を
「でも、にいさんのことをちゃんと見ているようにって、かおるが」
忍は数年前、小倉家に養子として拾われた。
迎えられたのではなく、拾われたというのは、実際に異国の路地で
小倉家は町では名の知れた名家だった。いまでは財界から身を引いているが、かつての小倉家は旧
されども、忍は朝露の使用人―――小倉の姓を名乗っているものの、跡目を継ぐような立場ではない。
朝露と比べれば、忍の立場など気楽なものだ。とはいっても、身勝手な振る舞いは
「はあ、そいつは頭が上がりませんね。普段は友人と昼食を取っているようですが、今日は断ってきたんですか……?」
「うん、まあ。もしかして、いまさら気遣いの心が芽生えてきた?」
「やはり、暴力に勝る教育はありませんよ。持てるものに
「ふうん、元気そうでなにより。ねえ、購買部に寄るつもりなら、早く行かないと。にいさんの目当てのもの、取られてしまうんじゃない」
忍の軽口を朝露は
「ああ、行きましょうか。それはそれとして、オレは名前で呼んでもらえるほうが……」
義理の兄妹とはいっても、同年代の男女であることに変わりはない。なにより、忍と朝露は主従関係を結んでいる。忍は自身が兄のように扱われることに違和感を
朝露は忍を
忍は無言で朝露のとなりに並ぶ。自身の立場を
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