ソロモンへの挑戦
海月結城
序章
プロローグ
ダンジョン都市ギラクス、そこに根を張る最恐のダンジョン【ソロモン】
その都市が出来てから1000年以上が経過した今、数多の冒険者がそのダンジョンに挑み、破れ、結果、第4階層までしか攻略されていない最恐のダンジョン。
そのダンジョンは幾つもの種族がシグマとなり攻略に乗り出し、星の数のシグマが消えてきた。
ダンジョン都市ギラクスのダンジョンから少し離れた街外れに白髪蒼眼の少年とオレンジ髪のウルフカットの女性がいた。
「師匠!!」
「どうしたの、ポラリス?」
「今日ですよ! 今日、やっと! 《女神の吐息》に挑戦できるんですよ!!」
「あれ、もうそんな大事な日なのか」
「ちょっと、師匠。僕の人生が掛かってるんですよ! 忘れないで下さいよ」
「あはは、すまんすまん。朝食を食べ終えたら行くのか?」
「そのつもりです」
女神の吐息はギルドが神から与えられた神具を使った儀式の道具の名前で、その神具に魔力を与えることにより、神から色を与えられる。今まで無色透明だった魔力に色が乗ることにより更なる力を引き出すことができるようになる。
朝食を食べ終え、僕は早速ギルドに行くために準備を整えてギルドに赴いた。
ギルドのスイングドアを押して中に入って、初めて訪れるギルドの内装を辺りを見渡しながら受付に向かった。
ギルドの中はとても綺麗で、左側にクエストが貼ってある掲示板と冒険者同士が立って会話できる丸机が置いてある。今もそこでいくつかの丸机を冒険者たちが使っている。
右側にはギルド職員と冒険者が対話のために使う椅子と机が置いてある。その奥に受付が備えられている。
日が昇って間も無いが、冒険者の朝も早い。受付は全て埋まっていた。列になっているのを確認して最後尾に移動して少し待った。
程なくして前の人が呼ばれ、受付に用があった人が終わったみたいで受付から離れた。
「次の方、どうぞ〜!」
僕の番になり呼ばれた受付に移動した。
「ようこそいらっしゃいました。今日はどの様なご用件でしょうか?」
「あの……ぼく、冒険者なりたくて、来ました!」
「そうでしたか、それでは《女神の吐息》を受けに来たという事でお間違えないですか?」
「は、はは、はい!」
僕は緊張で舌が回らず噛みまくっていた。
僕のそんな姿を見た受付嬢は右手を口元に持って来て、笑っているのが見えないようにして笑っているのを見て、顔が熱くなるのを自覚した。
「ほら、吸ってー、吐いてー。はい、もう一回。……どう? 落ち着いた?」
「はい、落ち着きました。ありがとうございます」
「よし、それじゃ、自己紹介をするわね。これから貴方の専属サポーターになるクルスよ。よろしくね。それで、貴方の名前と住所をこの紙に書いて欲しいんだ」
渡された紙に僕の名前と住所を書いてクルスさんに渡した。
「ふむふむ、ポラリスね。覚えたわ。それでポラリス、《女神の吐息》の儀式には魔力が必要なんだけど、魔力操作は出来る?」
「はい! 出来ます」
「それじゃ、部屋を移動するわね。ついて来て」
ギルドの丁度中央に奥に続く廊下があり、幾つもの小部屋が用意されている。その中の一つ、一番奥にある儀式の間にクルスさんを先頭に一緒に入った。
儀式の部屋はとても簡素な作りになっている。壁は一面の白。部屋の中央に《女神の吐息》が台座の上に置いてある。それだけの部屋だった。
「ポラリス、そんなに固くならなくて良いわよ。そんなんじゃ、普段の魔力を出せなくなるわよ」
「は、はは、ははは、ハハハハ、ハハハハハ……!」
「ちょ、怖い怖い! 落ち着いて、ね? ほら、深呼吸しましょう……」
クルスさんの指示に従いながら深呼吸をして緊張を息と一緒に吐き出した。
「ごめんなさい、クルスさん。僕、緊張すると言葉がうまく出てこなくなるんですよ」
「そ、そう。……それにしても、さっきのは怖かったわ……まぁ、良いわ! さ、神具に触れていつも通りに魔力を注いでちょうだい!」
「は、はい!」
深呼吸をしたお陰で緊張は最小限だ。この丁度いい緊張感を持って僕は《女神の吐息》の前に立った。
《女神の吐息》は透明な水晶で出来ていて、女神様の顔に台座から翼が生えた様なものだった。
生唾を飲み込みながら普段通りにそれに魔力を込めた。
魔力が込められた《女神の吐息》は、その中でぐるぐると魔力が回り、どんどん色がついていった。
そして、魔力を込めて数秒後。女神様の口から色の着いた魔力が吹きかけられた。
その色は『黄色』だった。
「……黄色」
それを見ていたクルスさんはあまり喜んでいなかった。どちらかと言うと落ち込んでいる様に見える。
それもその筈だろう。何せ、魔力の色が『黄色』と言うことは、世間一般的に見れば『ダンジョンに挑む権利なし』と認識されているからだ。
だけど、僕はクルスさんのリアクションとは真逆のリアクションをした。
「よっしゃああああああぁ! 黄色、きちゃあああああぁ!!」
僕は両手を握り締めて高く上げて大声で喜びを露わにした。
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