サナギ雄也

第1話  学習と反省

学習と反省をしない人間はクズだ。


ゴミと言ってもいい。

なぜ自分のしたことを素直に失敗を認められない? なぜ改善しない?


私がそれは変えるべき、やめるべきと言っても聞きはしない。

むしろ私に原因があるかのように言ってくる。私に落ち度があるように言ってくる。

ふざけるな。

お前が失敗をしたのだろう。それで良くない結果が起きたのだろう。だったら素直にその失敗を認めて学習し、反省すべきだ。そうすれば同じような失敗をしなくてもよくなる。


なのに目の前の失敗から目を遠ざけ、私が悪いかのように言って、「私に変われ」「臨機応変にしろ」と言ってくるその精神がわからない。


変わるべきはお前の方なのに、失敗したのはお前が原因なのに、なぜそれを認めない?


ふざけるな。


私がどれだけ苦心したと思っている。どれだけ苦労をしたと思っている。

限りある時間を使って良い方向へ行けるよう調整し調整し切磋琢磨して色々と考えて行動したのにお前は何もしない。


いや、深く考えもしないで感情論ばかりで行動して結果を台無しにする。


意味がわからない。

失敗したということはした人間に原因があるはず。それが原則のはず。なのにそれを考えない。自分以外の何かを、誰かを原因として決めつける。目をそらす。


それは最低の行為だ。

なぜ素直に認められない? プライドか? 性格か? そういう生き方? それが正しいと思っている?


愚かなことだ。


失敗は誰にでもある。それはいい。当たり前のこと。失敗はゼロなんて人間は存在しない。

でも、失敗したのなら反省し、学習すべきだ。自分を盲信しすぎて、考えることをやめて同じ失敗をするのは愚かとしか言いようがない。


そういった人間は口だけは回る。声だけは大きい。自分と深く関わり合いのない人間には良い顔をする。

それが気に入らない。


周りに良い顔をしているからその反動で私に来るのか? 憂さ晴らしを?

それとも私なら何を言っても良いと思って侮っている?


■すぞ。


誰にでも言って良いことと悪いことがある。誰にでも言われたくないことがある。

ましてや努力した人間に「努力が足りない」「自分がまず変わらないと」と言うのは戯言だ。何様だ?


説明しても覚えていない。失敗してもすぐに忘れる。

その尻拭いを誰がしていると思っている。お前のせいでどれだけ迷惑を被っているのか分かっているのか?


馬鹿は死んでも治らないと言う。

確かに。

死んでも治らないほどの馬鹿がいるならば、生きているうちはとてもではないが治るわけがない。

ではどうすればいいのか。


諭す? 怒鳴りつける? 同じことをやり返す?


どれもやった。

しかし効果がなかった。

反省と学習をしない人間は過去を自分の都合の良いものに作り変えるらしい。

失敗を他人のせいにし「もう終わったことだ」と開き直る。


ああ……確かに救いようがない。


馬鹿だ。馬鹿だ。馬鹿だ。


どうして……運の良い人間と悪い人間がいるんだろう。


持っている人間は自然と幸運を引き寄せてさらに何かを得ていく。


持っていない人間はさらに何かを押し付けられ、削られていく。


もう私には削られて平気なものなどほとんど残っていないのに。

まだ不幸になれというのか。

なぜ不幸にならなければならないのか。


いつまで自分がまともな文章を書けるか分からない。


駄文と思っていてもさらに悪い文章になっていく。


精神や体も疲弊し元には戻らない。少しずつ、真綿に首を絞められるように何かが軋んでいく。


一つ一つは重大ではない。些細なことだ。

だが100の不幸が起こらずとも1の不幸が積み重なればいつか人間なんて崩壊する。



他人に相談しても意味はない。

なぜなら不幸なんて目には見えないから。

見える不幸があるとしてもそれは骨折や出血などわかりやすいものだけ。


目に見えないものは軽く見られる。軽い傷は軽く見られる。「なんだそんなことか」と言って小馬鹿にされる。


……だったら同じことをお前にしてやろうか?


そんな、怒りや憎しみを抱く気持ちも薄れてきた。


感情が失われた先にあるもの、それを私は知らない。


けれど予想はつく。


文章を書いていられるうちはいい。けれど……。


文章が書き続けられること、それだけは出来るから、今はまだ大丈夫だと、自分に言い聞かせるしかない。


いつか誰かが言った。

「これ以上不幸になることはないから。あとは良くなるだけだから」


……失笑する。

これ以上不幸になることはない。そんなことは有り得ない。

不幸はどこまでも下がある。際限などない。


あるとしたら……。


































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