アース・ガード・フロント~笹栗艦隊出撃セヨ!~

惟宗正史

序幕 人類興亡史

 一九九九年。その怪物は突如現れた。

 スコットランド海域に現れた巨大な怪物。その怪物は航行していた豪華客船を沈め、多数の死傷者を出した。

 それから同じ種類と思わしき怪物は世界中に現れ、多くの民間の船や輸送船が襲われ、人類にとって無視できない被害となった。

 スコットランド地方の海の怪物の名前をとって『レイン・クロイン』と名付けられたその怪物を人類は世界中の海軍が一体となって討伐軍を組んだ。

 当初は討伐できると楽観論が多数を占めていたが、これは覆される。

 多数のレイン・クロインによって人類の討伐軍は壊滅させられたのだ。

 この衝撃のニュースと同時にレイン・クロインの活動は活発となる。

 二〇〇〇年四月、レイン・クロインによって大西洋占拠。

 同年五月、レイン・クロインによってインド洋占拠。

 同年十二月、レイン・クロインによってアメリカ太平洋艦隊壊滅。太平洋占拠。

 一年の間に世界の海域はレイン・クロインによって占拠された。

 レイン・クロインによって世界のシーレーンは分断された。陸路などによってかろうじて保っていた人類の物流であったが、レイン・クロインによって滅ぼされるのは時間の問題となっていた。

 だが、二〇〇三年。転機が訪れる。デンマークの最初の装甲艦である『ダーネブログ』を名乗った女性が海から現れたのだ。

 彼女に導かれる形で人類最初の『提督』となったアイナー・オルリック名誉元帥がダーネブログが展開した戦艦に乗り込み、核兵器でも倒せなかったレイン・クロインを倒すことに成功する。

 同年、七月。第二次世界大戦以前に海軍を保有していた世界各国にダーネブログと同じ存在と名乗る女性達が現れた。

 国連は彼女達を『艦嬢』と名付け、対レイン・クロイン作戦において協力を取り付けることに成功した。

 しかし、無敵と思われた彼女達にも欠点があった。艦嬢達は『提督適正』のある人物の指揮下でしかその力を発揮できなかったのだ。

 そこで人類は世界中で『提督適正』のある人々を探し求め、ついに十二人の提督を発見した。

 後世において『始まりの十二人』と呼ばれるその提督達は艦嬢の艦装に乗り込んで艦隊を組み、ドーバー海峡の戦いにおいて勝利。イギリスの解放に成功した。

 二〇〇五年、極東の島国である日本において艦嬢の協力の下に建造された対レイン・クロイン用特殊艦、通称・特装艦が建造され日本海海戦に勝利。続いて艦嬢と特装艦の艦隊は南下して南シナ海の解放に成功する。

 日本の技術供与によって世界各国は特装艦の建造と改造に着手するが、特装艦に使われる資源物資の多さによって打ち止めとなる。

 二〇〇六年、五月。当時のアメリカ大統領であるトム・キュアリーズによって『世界解放作戦』が宣言され、国連加盟国がこの宣言に参加。資源を潤沢に持つ国が特装艦を建造し、艦嬢の協力を得られている国々がレイン・クロインの討伐に乗り出すこととなった。

 ここに人類とレイン・クロインによる本格的な生存戦争が始まったのである。

 二〇〇八年一月、『地球防衛戦線(アースA・ガードG・フロントF)』に名称を改めた国連海軍がインド洋に侵攻。レイン・クロインの駆逐に成功。

 同年四月、AGFは大艦隊を組んで大西洋に侵攻。レイン・クロインの駆逐に失敗。

 二〇〇九年二月、インド洋陥落。

 二〇十〇年八月、第一次太平洋奪還戦を実行。レイン・クロイン側にも多数の損害を出すが解放に失敗。

 ここから大小の海戦が行われるが一進一退の攻防となる。

 二〇六七年十一月、念願であった大西洋の解放に成功。

 二〇七二年六月、インド洋の解放に成功。

 二〇七五年十月、レイン・クロインとの戦いに終止符を打つべく第二次太平洋奪還戦を実行。

 同年十一月、AGF総旗艦の艦嬢であるエンタープライズが轟沈。提督も戦死。これによってAGF艦隊の連携が崩れ多数の艦嬢と特装艦が轟沈、多くの戦死者を出した。

 二〇七六年一月、大西洋陥落。

 同年五月、インド洋の死守に成功。ここから再びレイン・クロインとAGFの争いは小康状態となる。

 この小康状態を利用して人類は戦力の増強を図っていた。

 そして二一〇〇年、後世において『人類の守護者』と呼ばれた人物がついに歴史の表舞台に現れる。

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