雲猫記
あんとん
第1話
地の球の周りにはいつも猫がいる。白かったりオレンジだったり灰色など日によって色や大きさも変わるが確かに猫なのだ。機嫌がいいと唾液をこぼしながらお気に入りの玩具を舐め回したり、仲間を連れて走り回ったりと暴れ回っている。まあ我からすれば可愛いものだ。
人間界では猫は気まぐれといわれる。全く姿を現さないと思ったら急に仲間を引き連れて大移動を始めて各地を舐め回しているかと思えば白猫になって凍った唾液をぽろぽろとこぼしているのだ。そりゃきまぐれと言われるのも分かるし最近は唾液腺がゆるんでいるのも感じる。天気雨やゲリラ豪雨の原因はこれだ。
そんな猫たちも昔から一年のうちに約一ヶ月ほど毎日のように日本という国に構う季節がある。猫はぬれるのを嫌いというのは通説だが今回それは置いておく。その時期は毎日集団で出向いてはべろんべろんになめつくしている。最初はやめてやれと思っていたが今現代の夏の各地の猫集団のはしゃぎっぷりよりかははるかにマシだと思うようにしている。そして面白いことに日本人はそれほど奴らを嫌がっていないのだ。紫陽花に唾液がのることを喜ぶ人、新しい雨合羽と雨靴を身につけ水たまりではしゃぐ子供。傘を盗まれた、頭痛がひどくなると嘆く者もいることは最近知ったがやはり人それぞれ。人間はやはり興味深い。異常気象だなんだと騒いで対策をしたと思い込み、抵抗も何もしないから年々奴らが調子にのっていることに気がつかないのだ。
今もねこたちは各地に出向いて気に入った地を攻める機会をうかがっている。我としては人間たちが毎年湿気と戦ったり、もこもこねこを警戒しているのを観察するのが最近の楽しみであるので、毛頭止めるつもりもない。なので人々には折りたたみ傘を持ち歩くことを推奨しつつこの手記を締め括ろうと思う。
雲猫記 あんとん @chewy-book
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます