第3話
翌日。
俺は長閑な平原を背景に、馬車に乗っていた。街道に沿って進んでいるが、整備が甘く、馬車の乗り心地は悪い。
この馬車に居るのは、冒険者たちとその二人を護衛として雇った商人と俺、の四人だ。
オルトフルは王国西部地帯の中でも西側にあったのだが、俺は今、王国南西の侯爵領の領都ラキートへ向かって南下している。
この世界には、魔物が森や山岳地帯などにいる。魔物は、大気に漂う汚染された魔力から生まれると言われていて、主に人間に強い敵意を抱く。それを討伐する依頼をこなすのが、冒険者の主なお金の稼ぎ方だ。
♢
しばらく歩き、太陽が沈む頃、家が15棟くらいの一般的な村が見えてきた。
周りは木の柵で囲まれているようだ。
「すみません、一泊したいのですが」
「4人ですか。この村の護衛をしてくれるなら代わりに何泊していってもいいですぞ」
「分かりました」
村の入り口に立っていたお爺さんと商人がそんなやり取りをした後、俺たちは村の中へと入る。
あ、俺はお金を払って同行させてもらっているので、護衛をする必要はないし、そもそも俺は若すぎて戦力外だと思われている。
農業に励む村人が時折見える。
俺たちのような旅人はそんなに珍しくはないのだろう。そのまま、空き家へと案内されて一晩を過ごす。
一人部屋で過ごしたため、十分に初めての旅の疲れを癒せたのだった。
♢
野営と道中の村で一夜を明かすのを何度か繰り返して南へ向かっていると、やがてラキートが見えてきた。
ラキートは高ランクの魔物が跋扈する魔の森と呼ばれる場所が視認できる距離にあるため、有事に備えて、周りを立派な城壁に囲まれた城塞都市となっている。
俺がわざわざラキートに移動して冒険者となりに来たのは、この魔の森の存在が大きい。……あんな事を言ったのに、家族が居る街で冒険者をするのは何か気まずい、と思ったのも理由としてある。
ここで、俺は商人と冒険者二人組と別れ、俺は街へと入る城門付近での検問の一般列へと並ぶ。貴族専用の検問もあるんだが、父本人ならともかく、俺は一代貴族の次男坊に過ぎないからな。
一般列には、冒険者や商人が多いように見える。
冒険者は魔の森で稼ぎにくる者が多い。それに伴い、怪我を負う確率も上がるため、準備が重要となってくる。回復ポーションや携帯食などの需要が高いため、商人も必然的に多いのだろう。
「次の人、身分証の提示を」
門の衛兵に身分証を渡す。
「問題なし、行っていいぞ」
愛想がない門番だが、気にせず入場料を支払い、門をくぐる。
すると、石畳を敷き詰めて整備された大通りと、その道の両側には石造りの家々の前にちょっとした屋台が並んでいる光景が目に入る。
ここで、何より目を惹くのは、亜人の存在だろう。
道行く人の2割は猫耳や狼の尻尾など、動物の特徴を持っていたりする。
このシュッペルゼ王国の西側には王が亜人である国、レライト王国がある。そこに近く、法で人種差別を禁じているこの国の西にある、ここラキートに亜人が多いのは、まぁそういうことだ。
それでも、亜人は奴隷にされる可能性は高いらしいけどね。
「すみません、焼き鳥を2本下さい」
「毎度、鉄銭8枚だよ」
人の流れに沿って露店を見て回っていると、焼き鳥を売っているおっちゃんがいたので、購入する。
この世界の共通通貨の価値は、
鉄銭×5=大鉄銭×1
大鉄銭×2=銅貨×1
銅貨×5=大銅貨×1
大銅貨×2=銀貨×1
銀貨×5=大銀貨×1
大銀貨×2=金貨×1
金貨×10=大金貨×1
大金貨×10=白金貨×1
ってとこだ。俺は大金貨すら目にしたことないけど。それに、物価に関しては全く分からない……
因みに、俺は家から出る時に両親からまとまった路銀を渡されているので、しばらくは何もしないでも暮らせないこともない。
食べ歩きしながら、冒険者っぽい荒事に慣れていそうな人の流れについていくと、目的の冒険者ギルドが見えてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます