第33話 こじ開けた扉の先

 



 どれだけ倒しても倒しても、化物たちは次から次へと現れる。


 ここが一直線の廊下でなければ、とっくに私たちは囲まれて死んでたはずだ。


 前衛は私、真恋、日屋見さんの三人。


 日屋見さんのスキルはクールタイムが長いため、私と真恋で時間を稼いで、冷却が終わると同時にスキルで敵を一網打尽にする――その繰り返し。


 しかし、それでは徐々に後ろに押し返されるだけだ。


 私と真恋もスキルは連発できないのだから。


 その間をスキルを使わない攻撃や魔法で埋めようにも限界がある。


 だが令愛が戦列に加わったことで、その後退速度を“軽減”させることができるようになった。


 まずは敵の攻撃を反射させるリフレクションシールド。


 これはクールタイムが長く、かつ持続時間は数秒しか無いが、化物どもの攻撃を反射できる強力なスキルだ。


 そしてもう一つ、令愛が習得しているスキル系統の“軸”となるのが――




「サンクチュアリウォールッ!」




 この光の壁である。


 ここでも狭い廊下という地形が有効に働く。


 おそらく広い場所で使えば、前方を守るだけの壁にしかならない。


 だがここなら通路を完全に塞ぐことで、相手の攻撃を完璧にシャットアウトできるのだ。


 さらに光の壁は一方通行であるため、私たちは一方的に化物を攻撃できる。




「確かに安全ではあるが、ずるいことをしている気分になるな」


「真恋はこういうときもかっこつけるんだね」


「言われずともわかっているさ。染み付いているだけだ」


「私の卑屈さと一緒だね」


「一括りにするな」




 この状態のときは、減らず口をたたく余裕すらある。


 とはいえ、実際に壁を展開している令愛には喋る余裕も無いわけで。


 決して私たちも手を抜いたり、休んだりしているわけではない。


 それに、壁は永遠に続くわけじゃない。


 レベルが低いうちは耐久度も低いのか、スケルトンジェネラルなどの強烈な一撃を貰うと、あっさりと粉々に砕けてしまう。




「あ、また――」


「令愛は十分やってる。回復するまで下がってて!」


「うんっ!」




 後退する令愛に代わり、私がスケルトンジェネラルと対峙する。


 その体には、一部だが焼け焦げたような痕があった。


 サンクチュアリウォールをLv.3まで上げることで習得できるスキル、シャインスパイク――これにより、光の壁に攻撃した相手は、光の針による自動反撃を受けるのだ。


 大した威力は無いけれど、確実に相手の耐久力は削れている。




「切り刻め、フルムーンッ!」




 現状で私が使える最高火力の十六連撃で、スケルトンジェネラルをズタズタに引き裂く。


 しかし相手を倒すには、この攻撃が二回分は必要だ。


 だがシャインスパイクによりHPが削られていれば、




「これでトドメぇッ!」




 追加でパワースタブを打ち込むだけで、化物を殺すことができる。


 鋭い刺突がスケルトンの背骨をえぐりへし折ると、その体は魂が抜けたようにガラガラと崩れ落ちた。


 隣では真恋が別の獲物を仕留めている。


 私たちは次に押し寄せる、白い犬型の化物を迎え撃つべく前進する。




「今、何か踏んで――」




 そのとき、背後から戸惑う令愛の声が聞こえた。


 嫌な予感がして振り向くと、彼女の足元に赤、紫、緑が混ざりあった腐肉の花弁が落ちていた。


 踏まれるまで姿を消していたらしく、やがて六枚の肉厚の花びらと、中央で餌に手を伸ばす雄しべのようなゾンビの上半身が現れた。


 当然、すぐに助けに行こうとするのだが、反応した時点ですでに島川くんが動いていた。




「レイドスティングッ! うおぉぉおおおおッ!」




 高速移動を伴う刺突で中央本体を刺し貫く。




「はよ逃げや、仰木先輩!」




 令愛は「う、うんっ!」と頷きながら花弁の上から飛び退く。


 出番を取られて胸がじくりと痛む。


 いや、別に嫉妬とかじゃないけど。


 けど、島川くんの一撃じゃ敵はまだ倒せてない。


 むしろターゲットを移したことで、至近距離にいる彼が一番危なくなった。




「クイックスティング! これでどうやッ!」




 穂先を敵から引き抜き、今度は顔面に向かって素早い刺突。


 だが頭部を貫通してもなお、相手は倒れる様子がない。


 もはやただのゾンビとは命の仕組みすら違うのか。


 そして中心から雌しべらしき触手が伸び、彼に襲いかかる。




「ほんならこっちも持ってけ、ミラージュスティングやッ!」




 さらにさらに、雨のような連撃を島川くんは繰り出した。


 雄しべは血を撒き散らしながら、無数の穴を空けられる。


 相手の動きが鈍った。


 明らかに弱ってはいるけれど――




「まだ死なへんのか!?」




 あと一歩、わずかに倒せておらず、触手が島川くんに絡みつき、その尖った先端を体に突き刺す。


 彼の顔が痛みに歪む。


 そこに私はイリュージョンダガーを投げつけると、化物は完全に動きを止めた。


 すぐさま彼にヒーリングもかけておく。




「倉金先輩、おおきに」


「まだレベルが上がりきったわけじゃないんだから、無理はしないように」


「仰木先輩が活躍しとるのを見てつい、張り切ってしもうてな」


「たぶん一発の攻撃が軽いタイプみたいだから、私たちの討ち漏らしを仕留めて」


「おう、しんがりは俺に任せえ!」




 拳を握って闘志をみなぎらせる島川くん。


 まあ、落ち込んで動きが鈍るよりはいいと思う。




「依里花先輩、そっち来てるよ!」




 日屋見さんの声がする。


 私が彼にかまっている間に、後ろにさっきの白い犬が迫っていた。


 体は腐っているのか、純白には程遠い色をしているけれど、それでもどこか高貴さを感じさせる顔つき――グロテスクさは無いものの、別種のプレッシャーを感じさせる。




「私みたいな痩せっぽち食べてもまずいよ?」




 まずはソードダンスで相手の牙を回避。


 斬りつけながら後ろに回る。


 よし、完全に背後を取れた。


 相手が振り向くまでは攻撃し放題――そう思っていたら、急激に化物の周囲の温度が下がる。




「魔法!?」




 この犬の見た目で魔法まで使ってくるなんて聞いてない。


 バックステップで距離を取る。


 直後、凍った床から先端の通った大きな氷がせり出し、私の鼻先をかすめた。


 体勢的に右腕はその氷から逃げ切れず、カチカチに凍ってしまう。


 その間に犬っころは振り向き、私に噛みついてきた。


 私は凍った右腕を差し出し、かみ砕かせる。




「依里花っ、すぐに助けにいくから!」


「平気! 令愛は自分の身を守ってて!」




 腕はヒーリングですぐに回復。


 そして至近距離から相手の眉間にスプレッドダガーを投擲。


 突き刺さり、さらに脳内で分裂して炸裂する。




「キャウゥゥンッ!」




 まるで犬みたいな叫び声が響いた。


 こいつ、あのケルベロスが進化した姿なのかな。


 だとしたら今の見た目の方がかっこいいね、あの悪趣味な首がいっぱいあるやつよりは。


 もっとも、脳を破壊しても死なないから、厄介さはこっちのが上みたいだけど。


 でも思考が鈍って動きも遅い。




「これぐらいなら、スキルを使わずに倒しきれるッ!」




 突き刺し、引き裂き、切り刻み、穿つ。


 両手のドリーマーで相手を滅多刺しにして、無事撃破。




『モンスター『フェンリル』を殺害しました。おめでとうございます、レベルが44に上がりました!』




 ちょうどレベルも上がる。


 パチパチ、と令愛が拍手してくれる音が聞こえた。


 ちょっと照れくさくて顔が熱くなる。


 そろそろステータスとかスキルとか振っちゃいたいところだけど、敵はまだまだ迫ってくる。


 今度の相手は何?


 あの天井を貼ってる女郎蜘蛛みたいなやつ?


 いや、顔以外がドロドロに溶けた、ギィを1億倍ぐらい汚くしたゾンビスライムの方が先か。


 何となく物理攻撃が効かなそうな見た目をしているので、私は手のひらをかざして火球を連発する。


 すると、私の真横の“壁の中”を影のようなものが通り過ぎていくのが見えた。




「島川くん、ギィ、壁の中から来るよ!」




 私は目の前のスライムの相手をしているので、二人を助けにはいけない。




「今度こそ仕留めたる、俺が相手や!」




 やる気に満ちた島川くんが前に出た。


 フライングヘッドが壁の中から姿を現す――見えてないけど、たぶんそう。




「クイックスティングッ!」




 繰り出される素早い刺突――




「うおっとぉ!? なんや、これだけじゃ怯みもせえへんのか!」




 しかし威力不足だ。


 おそらくクールタイムも短い代わりに、威力が低めというスキルなのだろう。


 そして切り札であるミラージュスティングはまだ使えない。


 ガチンッ! と歯の音が聞こえた。


 島川くんは噛みつきから逃れ、横に転がり距離を取る。




「ギシシシ、ギィに任せる」




 そこでついにギィが動き出す。


 彼女がどういったスキルを取ったのかは非常に気になる。


 ちらりと後ろを見ると、その手には鞭が握られており、パチンッと鋭く地面を叩いた。


 音に引き寄せられるように、フライングヘッドはギィにターゲットを変える。


 そして彼女も鞭を振り、地面ではなく敵を叩いた。




召雷鞭ショウライベン




 フライングヘッドを鞭で殴打すると、バチィッ! と雷光が弾ける。


 それは一発だけでは収まらず、連続して繰り出された鞭による攻撃全てで発生した。


 武器捌きは見事なものであったが、よく見ると鞭と手が一体化している。


 それは武器なのか、はたまたスライム化した体の一部なのかよくわからない。


 だが何にせよ、巨大な顔面は少女の鞭打ちに翻弄され、目を剥きながらガチガチと歯を鳴らした。


 確かにダメージは入っている。


 しかし一発一発の威力は弱いのか、まだ敵を殺すには至っていない。


 ギィは鞭を振るう手を一旦止める。


 その隙にフライングヘッドは大きく口を開き――




蚯蚓鞭キュウインベン




 その側頭部に、ギィの臀部から伸びる“鞭”が“突き刺さった。


 もはやそれは完全に鞭ではない。


 場所から言うと尻尾だ。


 しかしスキルが使えているということは、この力を与えた“システム”的には武器という扱いになっているのだろう。


 しかも鞭なのに叩くんじゃなくて突き刺してるし。


 そして突き刺した状態で何をするのかと思えば、




「ギシシシ、さよなら。シャイニング!」




 その先端――つまり敵の内部に入り込んだ場所から光の魔法を放った。




「ぐ、グゲッ、グオォォオオオッ!」




 空飛ぶ生首の野太い断末魔が響き渡った。


 フライングヘッドの体全体がぶくっと膨れ、ついには耐えきれずに裂けて、内部から光を放ちながら爆発する。


 シャイニング――ってことは、ギィは光属性の魔法を選択したんだ。


 その前に回復魔法を覚えさせてたから、それが効率良かったんだろうね。


 しかもあの威力、ステータスも魔力多めに割り振ったんじゃないかな。


 後方支援をお願いしてたし。


 しっかし、いくら敵の硬さが違うとはいえ、ギィの方が先に倒しちゃったな。




「こいついくら燃やしても全然死なないんだけどっ!」




 目の前にいるゾンビスライムは、おそらくグールが進化した姿だと思われる。


 別の進化系であるグールマザーとは違い、ゾンビを生み出したりしない上に、動きも緩慢でいいサンドバッグなんだけど、とにかく硬い。


 しかもナイフによる攻撃がまったく効いてる感じがしなかった。


 だからさっきから、ひたすらファイアを叩き込んでるんだけど――




「エリカ、アタシも手伝う!」


「ありがと。とにかく魔法をぶちこんでやって!」


「リョーカイ! シャイニングッ!」




 ギィが放つ光の爆発は、瞬く間に敵の体を蒸発させていく。


 次からは素直に魔法が得意な彼女に任せるべきだね、こいつは。




「死んだ! アタシ倒した! エリカの役に立った!」


「めちゃくちゃ助かったよ」


「ギシシシッ」




 ねだられているように見えたので頭を撫でると、ギィはかなり上機嫌に笑った。


 と、そのとき令愛の声が響く。




「こっちのクールタイム終わったよ!」




 何でだろ……ちょっと不機嫌そうに見えるのは気のせい?




「じゃあお願い、令愛っ」




 それを合図に、真恋や日屋見さんも一旦後退する。




「サンクチュアリウォール!」




 そして展開される光の壁。


 だが先ほどまでと違い、その壁はバチバチと電撃を纏っていた。




「近づくと怖いぞぉー、エレクトリカルフィールドの電気で死んじゃうんだからね!」




 まったく通じてないと思うけど、化物を脅しながらじりじり前に進んでいく令愛は、こんなときでもかわいい。


 けど実際、そこに発生した電撃はなかなかの強さのようで、ゾンビ程度なら触れただけで焦げて死んでしまっている。


 また、先ほどは一発で破壊したスケルトンジェネラルの攻撃を受けても、壁にはヒビが入っただけでまだ健在だ。


 その間に、再び私たちは安全地帯から敵を叩く。




「内弁慶みたいで情けない話やけど、こっからなら俺も強気で攻撃できるで!」


「一方的な暴力は楽しい。ギィギィ!」


「話で聞いただけでは理解しきれていなかったが……大丈夫なのか、あのギィという生き物は」


「見ての通り私たちの味方だから」




 当然、真恋には明治先生のことや、龍岡先輩や犬塚さんの話もしている。


 さすがにギィと融合させたと話したら頬を引きつらせていたが、犬塚さんの悪行を聞いて私を責めることもできなかった。


 しかも今はこうして、ギィは立派に戦力になっているのだ。


 半分人間じゃなかろうと、味方と認めるしか無いだろう。




「っていうか令愛が頑張ってるんだから、口より手を動かしたら?」


「ふん、言われずともやっている」




 相変わらず空気の凍った私たちの横で、日屋見さんは優しく微笑む。




「最近私は気づいたんだけどね、真恋の姉妹喧嘩からしか取れない栄養素があるみたいなんだ」


「黙ってくれないか麗花」


「はははっ、結界が消えたら今度は私が仕掛ける。場所は空けておいてくれよ?」




 令愛の壁が強固になったことで稼げる時間も増え、クールタイムにも余裕が出てきた。


 相変わらず敵の終わりは見えないが、こちらの戦力が整い、相手の群れを押し返せるようになった以上、ここから私たちが劣勢に陥ることはない。


 こんな地形なのに、数の暴力で押しつぶそうとするのは失敗だったね、島川優也。


 校舎をガラガラにしてまで集めたこの大量の化物たちも、こうなってしまえば私たちにとってはいい“餌”だ。




 ◇◇◇




 それから、一体何時間戦い続けただろうか。


 倒しても倒しても減らない化物の群れ。


 どれだけ押し込んでも見えてこない廊下の果て。


 永遠に続くのではないかと思われたその戦いは――




「ブラッドォ、ピルエットッ!」




 私が放ったスキルが骨の化物を切り刻み、ついに終わりを迎えた。




『モンスター『リッチ』を殺害しました。おめでとうございます、レベルが50に上がりました!』




 脳に響くアナウンスを聞くのも久しぶりな気がする。


 最後の方はどんどんレベルが上がらなくなっていったから……そもそも、ステータス振ってる暇もなかったんだけど。




「はぁ……はぁ……これで終わりみたいだね」


「う、うん……疲れたあぁ……」




 こてん、と私の肩に額を当てる令愛。


 その心地よい重みに気持ちが安らごうとするけれど――これはまだ、終わりなんかじゃない。


 真っ赤な廊下は、振り返れば死体の山。


 前を見ても延々と向こうまで続いてて、終わりは見えない。




「かなり体力を消耗しているな」


「私は真恋の顔を見ているだけで癒やされているよ」


「……」




 もはや真恋は、突っ込む余裕すら無いらしい。


 しかも日屋見さんも、ああ言いながらも顔には疲労がにじみ出ている。




「兄貴に俺の声が届いて、戦わずに済めばええんやけど」


「グゥ……そう都合よく行くとは思えない」


「話が通じる相手なら、あんなことにはなってないからね」




 化物を倒したら島川優也がその中から出てくるとか、そういう展開なら想像できなくもないけど、しょせんは妄想に過ぎない。




「ねえ依里花、もう化物いないんだし、ここで休憩していくってのはどうかな?」


「いいと思う。呼吸ぐらいは整えて――」




 次の瞬間、私たちは突如として暗闇の中に放り出された。




「させてくれない、か」




 だが光が無いわけではない。


 真っ暗な空間で、なぜか私たちはお互いの姿をはっきりと視認できた。


 そして床には足場もある。


 じゃああの廊下が暗くなっただけなのか――と思いきや、手で探ってみると壁は喪失していた。


 つまりここは、広い空間なのだ。


 私たちが困惑して周囲を見回していると、再び違う景色に飛ばされる。


 そこは、異様に広い――普通の4、5倍はありそうな教室めいた空間だった。


 数百個の机と椅子が並び、前には巨大な黒板がある。


 しかしそこに座る生徒は、ただ一人。




「兄貴っ!」




 島川くんが声をあげた。


 私たちは教室の後ろ側にいるので、島川優也の後ろ姿しかみえない。


 距離からしても島川くんの声は届いているのに、彼は微動だにしなかった。




「生きてたんやな……そうなんやろ、兄貴!」




 島川くんは彼に駆け寄る。


 すると、通常の教室よりも高い天井から、にゅるりとピンクの肉塊が生えてきた。




「レプリカ!? 島川くん、危ないっ!」




 私は声をあげると同時に、イリュージョンダガーを肉塊に投げつける。


 しかし憎たらしいことに、そいつは体の形を変えて攻撃を避けた。




「うおぉっ!? 何やっ、どうなってるんや!」




 そして島川くんの体はふわりと浮かび上がり、急加速してその肉塊に引き寄せられた。




「ぬおぉぉおおおっ! がっ、ご、ぉ……!」


「シマカワ……!」


「いやぁぁあああっ!」




 衝突直前、肉塊は鋭い刃に形を変えた。


 島川くんの体はそれに貫かれ、腹に突き刺さった刃が背中から飛び出している。




「ぐ、おぉ……あに、き……」




 即死したわけじゃなさそうだけど、あれじゃ長持ちはしない。


 私は天井のそいつに向かって飛び上がる。


 そのとき、教室のどこからか“ぐちゅっ”という音が聞こえた。


 それも、複数回。


 要するに人数分・・・である。


 途端にふわりと体が浮き上がり、猛スピードで移動をはじめる。




「くっ、抵抗しても――引き寄せられるのかッ!」




 真恋は床に刀を突き刺し踏ん張ったが、速度は無抵抗の人間と変わらない。




「ぐぅぅぅっ! どうにかしてっ、防ぐしかない!」




 禍々しい色をした肉の刃が、私の目の前にまで迫っていた。



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