第138話 サラの正体
俺はいつになく真剣なサラにごくりと唾を飲む。
そんな俺にサラは話し始める。
あまりにも普段とはかけ離れたまるで機械の様な口調で。
「———始めに結論として言うと、私もあの魔族が言っていたサラも、サラという神の分体の1人でしかない。そして
……
…………
……………………
………………………………
「…………………………………………は?」
……えっ……一体どう言う事だ?
——サラが分体?
——神の一部?
——封印されている?
俺はてっきり双子が何かだと思っていたのに全く違う——あまりにも規模の大きな話に放心してしまう。
いやでも何で神ならこんな学園に……?
それにゲームではそんな設定なかったぞ?
まぁサラの設定集自体存在していなかったけど。
「それは元々貴方がプレイしていた【ダンジョン☆スクール・ファンタジー】に私は存在しないから」
「え、い、いやどう言う……存在しない……? で、でも確かにゲームに……」
「あれは
サラはそう言うと俺に『私はどんなルートでも死んだでしょ? それもすぐに』と言ってくる。
それと何が関係があるんだ……?
俺が疑問に思っていると、サラは答えを教えてくれた。
「私は本来ゲームにいない者。謂わば異物。だからコンピュータは私と言う
俺はそれを聞いた瞬間に膝から崩れ落ちてしまった。
それと同時に色々と納得してしまっている俺もいる。
……そうかぁ……やっぱりどう頑張ってもゲームの中じゃあサラは救えなかったのかぁ……。
俺もずっと疑問に思っていたのだ。
幾ら主人公を強くしようが、物語を半ば無視して駆け付けても必ず間に合わなかったし、気付いたら既に死んでしまっていたと言うケースもあった。
それで俺は死ぬ前日に思ってしまったのだ。
そんなの俺がどれだけ頑張ろうと絶対に俺じゃ防ぎようがないじゃないか——と。
だが俺はその可能性を考えない様にしてまたゲームをプレイした。
しかし何かこう……本人に絶対に不可能と言われるとショックだなぁ……。
……俺はサラを救うためにゲームをしていたような物だったから……。
———でも、それでも、サラを助けたかったなぁ……。
俺は自分の情けなさに涙が出てきた。
しかしそんな落ち込んでいる俺をサラが自身の胸に優しく抱きしめてくれ、先程の機械のような口調とは変わって包容力のある声色で慰めてくれる。
「そんなに落ち込まなくていい。ゲームの私は所詮私を模倣して作られただけ。本当の私は救われている」
「でも……ゲームのサラを救えなかった」
「あれは誰がどうやろうと——それこそ神がプレイしないと絶対に救えなかった。でもそうだと薄々気付いていたのに貴方は必死に救おうとしてくれた」
サラは『だから——ね?』と言うと、俺の顔を自身の顔が見える位置まで上げる。
その瞬間に俺は目を見開いてしまった。
今まで1度も感情を顕著に表に出すことのなかったサラが、その美しい瞳から涙を溢しながら悲しそうにしていたのだ。
俺は言葉が出なかった。
サラは涙を溢れさせながら、それでも俺を安心させようと不格好に笑う。
「———私は貴方のお陰で救われたんだよ
———だから元気出してよ
———そしてまた私を抱きしめてよ、いつも通りに
私はそれだけで幸せなの
だから———ね?
そんな悲しい顔をしないでよ
私のために笑って?
私の大好きなあの優しい笑顔を———」
そう言うサラは、世界で最も美しかった。
そしてその時の俺は、きっと笑っていたと思う。
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