第132話 死神と対決

 その甲高い音はエレノアの短剣と何者かの何かがぶつかった音だった。


 エレノアの短剣とぶつかったのは、それは死神と言われれば1番に想像しそうな禍々しい大鎌だ。


 ダンスクの中でも上位に入る強武器で、効果が強い。


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死神の鎌

等級:S+

《効果》

攻撃力+100

【吸収】

攻撃時に毎回相手の体力と魔力を1~10%吸収する。効果は相手のlevelに依存する。

【魂葬】

魂のある存在に防御力無視の固定ダメージを与える。効果は相手と自身のlevel差に依存する。

《装備条件》

死神系統で死神以上の種族

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 正直自身のステータス上昇はそこらのA級武器にも劣るし、専用スキルなんかもないが、そのかわり【吸収】と【魂葬】は化け物並みに強い。

 

 吸収は相手の体力最大値固定だから、10%となれば物凄いダメージを食らわせることができる。


 そして魂葬はステータスガン無視だからどれだけlevelが高くても意味がない。


 要は全武器唯一の下剋上武器だ。


 エレノアは自身の体力が減っているのに気付いたのだろう。


 少し乱暴にもう片方の手に持っていた短剣を振るって追い払う。


「大丈夫かエレノア! 言った通りだっただろ!?」


「そのようです! 急に体に倦怠感が現れました! これからヒットアンドアウェイを繰り返し対処します!」


 エレノアはそう言うと一旦サーベルを蹴り飛ばして距離を取る。


 するとサーベルが初めて口を開いた。


「どうしてこの武器の能力を知っているのですかねぇ……? 私のこの武器は門外不出の武器のはずなんですがねぇ? 気になりますねぇ……捕縛して持ち帰りましょうか。丁度実験台も探していたことですし」


 そう言って不気味に笑うサーベル。


 だがサーベルよ、お前はもう少し周りを見た方が良いぞ。


 女性陣のあの引いた顔をさ。


 それに女性陣だけじゃなくて動物たちもドン引きした顔になってるじゃないか。


「んーー? どうやらあまりウケが良くないようですねぇ……。まぁ捕縛される側ならしょうがないとも言えますがねぇ。どうしますか? 手加減して差し上げましょうかぁ?」


「いやその必要はないぞ。と言うかお前は今日で消滅するからな。覚悟しとけよ死神」


 俺がそう言うと奴の不気味な笑みを浮かべた顔の眉がピクッと動いた。


 よしよし、激昂はしないが少しは怒っているな。


 今回俺はあまり戦えないのでこうしたアシストしか出来ない。


 俺はサラの近くを離れるわけにはいかないからな。


 まぁ後はエレノアがこいつ程度に負けるわけがないと言うのと、相性がいいと言うのもあるが。


「———余所見はいけませんよ。……貴方の相手は私ですからね?」


「———ッッ!?」


 突然攻撃されたと思ったらすぐ後ろにエレノアがいたため驚いて顔の笑みが消えた。


 どうやらエレノアを今更脅威だと感じたようだ。


 まぁこいつは狡賢いが、エレノアの世界同化の敵ではないからな。


 俺では罠に嵌るかも知れないがエレノアは世界の異物を全て感知できるので何もかも分かってしまう。


「まぁエレノア相手に何処まで持つか見ものだなぁ……まぁエレノアも勝てるわけではないんだが」


「ん、エレノアなら余裕」


 サラもエレノアとサーベルの戦いとも言えない一方的な戦闘を見ながらそう言う。


 サーベルは様々な罠や攻撃で何とかエレノアを捉えようとするが、世界と同化したエレノアにとって全てが無に等しい。


 エレノアは一撃も当てられることなく宣言通りヒットアンドアウェイの戦法でしっかりとダメージを食らわせていた。


 さて、そろそろ俺も準備しないとなぁ……。


 俺は懐に入れてある《錆びついた時》を触りながらタイミングを見極めていた。

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