第129話 魔王軍幹部を倒すのに必要な物

 あれからずっと俺たちは森の奥へと進んでいた。


 道は間違っていないはずなのだが、なぜか知らないけれどめちゃくちゃモンスターに遭遇する。


 まぁみんなすぐに消滅するんだけどね。


「……モンスター、多い」


「そうですね……何分かに一度は出会いますね……。流石におかしいと思います」


「だよなぁ……多分敵に居場所がバレているんだろう。何処かで監視している何かがあると思うんだが……」


 俺は辺りを見回しながらそう言う。


 ゲームでは確か、空中や森にあると見せかけて地下にあるって仕組みだったんだが、今の俺じゃ見つけられない。


 これを見つけるには特別なスキルが必要なのだ。


「では私が探してみますね! ———【世界同化】」


「———っ!?」


 その瞬間にエレノアの全てが消えた。


 どうやら世界と同化して異物を見つけようとしているんだろう。


 正規の見つけ方はそうではないんだがな……。


 俺はエレノアのことは大丈夫だと割り切り、突然跡形もなく消えたエレノアに驚くサラに説明することにした。



「…………なるほど、理解した」


「まぁ誰だって初めはそんな感じになるんだよ。俺も初めてみた時は驚いたしね」


 マジであの時はびっくりした。


 だっていきなりこの世から消えるんだぜ?

 

 ゲームではそんなこと不可能だったのに。


 強いと言えば、転移で誰も感知できないほど遠くに行くと言うのもあるが、それには膨大な魔力が必要だから、逃げる前に何かしらには見つかる。


 しかしエレノアは種族スキルのため、他のスキルとは発動方法が違う。


 まず普通のスキルは、大なり小なり魔力を使う。


 ゲームではMPと表記されていたが。


 しかし種族スキルは、ゲームでの条件は1度の戦闘に2回までなどの回数制限だったり、体力が何%以下だと使えないとか言う様々な制約があった。


 しかしどうやらこの世界では、場所の条件以外は全てないものとされているようなのである。


 なので回数制限もないし、何%以下とか言うのもない。


 言うなら、この世界は種族スキル最強界と言うわけだ。


 どれも種族スキルは大抵強いからな。


 俺がそんなことを考えていると、エレノアが突然俺たちから100mほど離れた所からいきなり現れ、手に何かを持ったまま手を振ってきた。


「ソラ様、サラさん、見つけましたよ!!」


 俺はそれを注視すると、喜びのあまり叫んだ。


「ナイスだエレノア! 最高だ!」


 俺がそう言うと、エレノアはパァァと笑顔を浮かべながら近づいてきた。


「これがソラ様が言っていた監視していた物ですか? 見た感じ錆び付いていてよく分からないのですが……」


 エレノアが見せたのは、錆び付いて動かなそうな年季を感じる機械のような物だった。


 俺はエレノアに笑顔で告げる。


「全然違うぞ」


「えええええ!?」


「……えっ?」


 エレノアが叫びながら驚き、サラは『ではなんなのか』と言う顔をして小さく声を漏らしていた。


 俺は誰にも聞かれないように防音結界を発動させてから2人に興奮しながら説明する。


「これは《錆びついた時》と言う魔道具でな、これから戦う魔王軍幹部を倒すのに必要なんだよ」


 俺がそう説明すると2人はキョトンとして首を傾げた。


「えっと……あまり話が掴めないのですが……普通に倒せば良いのではないでしょうか?」


 そう言うエレノアの言葉に頭を横に振って宣言する。




「この際だからはっきり言おう。俺達では奴を倒すことは———不可能だ」



「「———ッ……」」


 その言葉に2人が絶句していた。


 俺は話の続きを話し始めた。

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