Farmer Wars-ファーマー・ウォーズ-

東山 竹

第1話 未来の告白-1

 目が覚めると見覚えのない場所にいた。ここはどこだろう?しかも屋外だ。

 視界がぼやけていて、意識も朦朧としている。倦怠感もひどい。

 暑い、冬にしては暑すぎる。


 保料 農ほしな みのるは冷静に状況分析をしているが、ここはもっと動揺してもよいのでは?と自分に突っ込んでいた。

 状況分析の結果、これは『目が覚めると別の場所にいた』という夢だ。というのが一番納得のいく仮説だろう。


 昨日はいつものように仕事を終えて帰宅し、いつものようにふかふかのベッドの上で寝ていたはずだ。いや、気持ちよく快眠していた。間違いない。


 現状は堅い物に座っているようだ。これは夢なのだから、そのままふかふかのベッドの上で目が覚めるのを待つことにした。が、なかなか夢から覚めない。

もしかして『目が覚めたら異世界ファンタジー生活が始まりました』という展開なのだろうか。


 魔法使いやエルフに会えたりするのだろうか。自分にも魔法が使えるのだろうか。などと期待が膨らんできた。ただし、自分に戦闘はできるとは思えないし、ドラゴンに遭遇でもしたら怖くて動けなくなる自信がある。


 そうだ、強い戦士のいるパーティーに入れてもらおう。ならば回復魔法や攻撃補助系魔法などを習得する必要がありそうだ。


 勝手なイメージではあるが、異世界ファンタジーの冒険にはドラゴンとの遭遇は必須イベントだろう。想定通りドラゴンは他のパーティーメンバーに倒してもらうとして、ドラゴンはどのように調理すれば良いのだろうか。鱗が堅すぎて刃物が身まで届かないのではないだろうか。


 ドラゴンの肉はどのような味がするのだろうか。

 ドラゴンの肉は臭みが強いのだろうか。

 ドラゴンの卵はどのような色なのだろうか。

 ドラゴンの卵は何人分のオムライスが出来るだろうか。


 数分間で様々な妄想を楽しんでいると視界と意識もはっきりとしてきた。農は噴水の縁に座っていることをようやく理解できた。人通りも少なく穏やかな街並みという印象だ。ここが冒険の始まりの街として刻まれることだろう。


 状況と願望の整理が整ってきたと思っていた。そんな時「ブーン」、とても聞き覚えてのある音がした。車の走行音により楽しい妄想タイムの終了が告げられた。


『これは夢である』という可能性はかなり低くなってきた。というかこれは現実だ。    

 勝手なイメージだが異世界ファンタジーに車は存在しないだろう。

 ということは、夢でなければいつの間にか寝ぼけてこんなところまで来たのだろうか。


 もしくは、寝ている間に誰かに連れて来られ置き去りにされた?季節感も異なっているから、かなり遠いところにいる?あり得ない憶測ばかりが頭をよぎる。ここはもっと動揺してもよいのでは?と改めて自分に突っ込んでみた。もちろん答えは返ってこない。

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