第18話 事後処理 

 スキルを発動するときに、スキル名の前後に《》が付くようにしました。

――――――――――

 僕が目を開けると白い壁、自分が寝ているベットが目に入ってくる。


「ここは…病院かな?」


 一通り部屋を見渡すと確かにここが病院の一室であるということが分かる。


「怪我はしてないかな?《診察コンソルテイション》」


 結構前に手に入れていたこのスキルの効果は自分や他人、さらには物ことができ生き物に使えば状態、怪我、病気が分かり、物に使えば人体への影響が分かるというもので、戦闘に関わるものではないもののダンジョン探索においては自分の怪我を把握したりと役に立ってくれるんじゃないかなぁと思っている。まぁ、ダンジョン探索したの今回が初めてだしまだ分かんないんだけどね…。


「…特に怪我は無いっと」


 怪我が無く動き回っても問題ないことを確認した僕は起き上がってベットの端に移動し、腰を掛ける。長いこと眠っていたようで体中の骨が軋み「バギッ、ゴギィッ」と音が鳴る。あんまりな音に若干スキルを疑ってしまうのだが、取り合えず備え付けてあるナースコールで病院の職員さんを呼ぶ。

 コンコンコンとノックの音がし、看護師さんが入ってきて色々と質問をしてから体に重大な問題はないけどしっかりと寝ておきなさいと言われる。

 素直に寝ようとするが如何せんずっと寝ていたためか(看護師から3日寝ていたと言われた)寝付けず、心を虚無にして何も起こらない空虚で地獄な時間を過ごしていると扉が大きな音を立て開かれる。


「起きたのかっ!!!」


 扉の先には父さんが立っていた。僕が起きているのを確認するとベットまで駆け寄ってくる。


「お前が無事で良かった」


 その後、どれだけ心配をしていたかを延々と聞かせられる。けれど、時の進み方は一人の時よりずっと早く流れていく。話題が途切れず、ずっと話しているといつの間にかいた(最初からいた)黒部さんに此方も用事があって来ているからここまでにしてくれないかと制止される。

 そこから父さんは変える用意をし、部屋から出ていく。そこで振り返って僕を見て一つ聞いていいかなと尋ねてくる。


「明、これでもハンターになろうと思っているのか?」


 僕は一瞬惚けてしまった。というのも、僕の選択肢にハンターを諦めるという選択肢がなく、聞かれてからそれに気づいたからだ。だから僕は父さんに笑顔で


「うん」


と答える。

 父さんはそうか応援すると言って、帰っていった。

 僕が父さんを見送ると、今度は黒部さんが話しかけてくる。


「俺からはダンジョンで何があったかを質問させてもらう。それと、この問答は録音してこいと上から言われているんだ録音しても大丈夫かい?」


 特に隠したいこともないので録音に同意して僕は黒部さんに何があったかを話す。ゴブリンが急に復活して閉じ込められて、ボス部屋に落とされて、ボス倒したはずなのにもう一体黒い騎士がボスとして出てきたことを話す。


「…とりあえずこんな感じですかね」


 僕は話し終え、ずっと聞き手に回っていた黒部さんに視線を向ける。


「はっきり言って、今回起きた事は異常なことだ。復活するモンスターも階層を跨ぐようなトラップも発見されたことがない。いや、発見者が死んでしまった可能性もあるかもしれないがその可能性は低いだろう」


 黒部さんは眉間を揉みながら困ったように話す。


「しかも、初めて発見されたダンジョンが今はもう機能が停止しているとは…」

 

 黒騎士が現れる前に割れてしまった赤い結晶はやはりダンジョンコアだったようで僕が黒騎士を倒した後に蛇穴ダンジョンは機能を停止したようだった。《氾濫》は黒部さんとその場にいた人達で対処できたそうだ。けれど、なぜこんな事が起こったのか分からずじまいで、いつ今回のようなことが分からないとハンター協会では騒ぎになっているようだ。


「す、すみません。なぜこんなことが起こったかはさっぱりで…」


「大丈夫さ。君が気にするような事ではない。それよりも…」


 黒部さんはそう言ってずっと片手に持っていた布に包まれたものを僕の前に出してくる。黒部さんは包んでいる布を取り払って、中身を見せてくる。


「君が黒騎士を倒したときこれだけ残っていたんだ」


 布の中身は、黒くなんの飾り気もない片手剣だった。


「これは、黒騎士の!」


 驚く僕に黒部さんは話を続ける。


「モンスターが装備をしていたものはその所有者が消えると一緒に消えていくはずなんだ。けれど、これは君の手に握られたまま残っていたんだ」


 そう言って、僕に剣を渡してくる。


「黒騎士を倒したのは君だからね。この剣は君のだ。僕の目から見てもこれは良いものだよ。良かったじゃないか、こんないい武器を手に入れられて」


 渡された剣を受け取る。


「良くありませんよ。あんな危険な目に合ったんですから」


「ハハッそりゃ確かにそうだ。ああそれと剣は君の家に届けておくよ。病室に剣を置いておくわけにはいかないからね」


 僕は剣を黒部さんに返し、ふと思った疑問を口にする。


「そういえば。黒部さん、僕が黒騎士と戦っている時、助太刀に来てくれましたけど何でこれたんですか?」


 これを聞いた黒部さんは大笑いし始めた。


「?????????」


 取り残され、頭にはてなマークが浮かんでいる僕を見て黒部さんは笑いを堪え、僕に説明してくれる。


「ダンジョン探索初心者、ましてや初めての子にひとりで行かせると思うかい?緊張感を持たせるためにひとりで行ってこいとは言うけど、後ろから俺のような指導してるのがこっそり付いていくんだよ」


 僕は茫然としてから、納得する。


(そりゃそうだ………………………)

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