24 謁見
SIDE:グレン
姫様が目を覚まされたとの報告を受けた。
非常に喜ばしいことだ。
俺は逸る気持ちを抑えきれずに足早に陛下の執務室へと向かった。
「失礼します」
「グレンか。どうだ、娘は目を覚ましたか?」
俺が陛下の執務室に入ると、早速それを聞いてこられる。
当然のことだが、やはりその報告を心待ちにされてたのだろう。
「はっ!姫様は目を覚まされました。解呪も順調とのことです。メリア殿によれば、もう大丈夫だろうとの事です」
「おぉ……そうか!では、さっさと仕事を終わらせて見舞いにいかねば……」
「はい。……ですが、姫様はまだ本調子ではなく……今はまだ安静にする必要があるとのことで、再びお休みになられてます」
「む……そうか。では、折を見て様子を見に行くか……」
少し残念そうだが、一先ずは安心されたご様子。
こころなしか表情も穏やかになられた。
「さて、そうすると……メリア殿に直接会って礼を言わねばならぬな」
「では、これから謁見の準備を進めるよう手配いたしましょうか?」
「王としてよりも父親として礼を言いたいところだが…………いや、やはり謁見の手配を進めてくれ。もう少しでこいつも片付くから……半刻後に」
「はっ、そのようにいたします。では、失礼します」
そうして陛下の執務室を辞した俺は、関係各所に急ぎ通達をするべく奔走するのであった。
SIDE:メリア
姫様の解呪も上手くいき、ほっと一安心した。
彼女はまだ目覚めたばかりで体力もかなり消耗しているので、診察を行ったあとは再び安静にしてもらうようお願いしてから客室へと戻ってきた。
完全に回復するまでは二〜三日といったところか。
それまではここに滞在するつもりだ。
その間に犯人が見つかれば良いのだけど……
まぁでも、私に出来ることはここまでかな。
あとはグレンたちに任せよう。
「メリア、お疲れ様。そして、姫様を救ってくれてありがとう」
「取り敢えず力になれて良かったわ。でも、まだこれからが大変でしょう?」
「まぁ……ね。でも、必ず犯人は見つけてみせるわ」
「ん……お願いね。あんな小さな子供を殺そうとする外道には報いを受けさせないと」
「もちろんよ!」
「失礼します。メリア様、陛下がこの度の件についてお礼をしたいとの事です。恐れ入りますが、謁見の間までお越しいただけますでしょうか」
部屋で寛いでいると、そんな連絡が来た。
事前にその話は聞いていたので特に慌てることもなく、了承して直ぐに部屋を出て謁見の間に向うことに。
謁見……か。
さて、この国の国王は『森の魔女の後継者』の事をどれだけ理解しているのか。
事によれば、もう一波乱あるかも知れないわね……
そして使用人に案内されて向かった先は、大きな扉の前。
この先が謁見の間なのだろう。
謁見の作法については簡単にレクチャーされた。
それ程うるさく言われる事は無いだろうから、あまり心配しなくても良い……とも言われた。
……どうだろうかしらね?
「『森の魔女』の後継者、メリア殿!」
呼び出しの声がかかり、大扉が開く。
その先には赤い絨毯が敷かれ、その両側には立派な身形をした人々が並び立つ。
そこに、グレンや彼のお父さんの姿もあった。
そして、部屋の最奥には玉座。
そこに座すのは威風堂々たる姿の男性。
あの人がデルフィア王か……
私は扉を潜って絨毯の上を歩いて、玉座よりかなり手前のところで立ち止まった。
作法としては、ここで跪いて頭を垂れる……との事だけど。
だけど、私は立ったまま真っ直ぐに王を見つめる。
王も私の視線を真っ直ぐに受け止める。
周囲がざわつき始めた。
「跪いて頭を垂れよ!!」
「陛下の御前で無礼だぞ!!」
ついに、私の態度を見るに見かねて何人かが怒鳴り声を上げる。
それでもなお、私は平然と立ったままでいる。
……いや、平然を装ってるけど心臓バクバクです。
私も何も喧嘩を売るためにこうしているわけではない。
跪いては
ふと横目で見ると、グレンが慌てている様子が目に入った。
……ごめんなさいね。
もしかしたら、あなたとはここでお別れになるかもしれないわ。
さぁ、王様?
あなたは、どう出るのかしら?
出来ることなら、私の思惑通りになってくれると有り難いのだけど。
SIDE:グレン
メリア……どう言うつもりなんだ?
謁見の場で…まさか彼女が陛下の前であのような態度を取るとは……
如何に姫様を治療した功績があろうと、俺では不敬の咎は庇いきれない。
一体どうすれば……?
「グレン……どう言う事だ?」
「分かりません……作法の説明はされてると思うのですが……」
「周りに促されても態度を変えぬのだから、あれは敢えてやってるのだろう。なぜ、あんな真似を……」
それは俺が聞きたいですよ……
メリア……本当にどうするつもりなんだ!?
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