18 暗殺者


SIDE:イェニー



 メリアが狙われた!

 さっきのメイド……彼女が犯人なのかどうかは分からないけど、取り敢えず捕まえなければ!


 だけど、一体どこに行ったのか……?

 客室の外に飛び出したのは良いものの、闇雲に探し回るのは……そう思っていると、ちょうど何人かのメイドが通りがかった。


「すまない!つい先程、客室にお茶を運んだメイドを知らないか!?」


「え!?……い、いえ。私達は別の仕事をしていたので……」


「どういう娘でしたか?」


 そう聞かれた私は、先程のメイドの特徴を伝えるが……



「黒髪に黒目の……?生憎と、心当たりがありませんね……」


「そんな娘、王城のメイドにいたかしら……?」


 黒髪黒目はこの国ではかなり珍しい。

 私も黒髪だが、騎士団の中では私以外には数人しか見たことがない。

 全くいない訳ではないが、そのような娘が同僚に居ればかなり目立つはず。

 だけど、彼女たちは心当たりがないと言う。

 ……となれば、やはりあいつが暗殺者か!




 …はっ!?


 慌てて飛び出してしまったが、今客室にはメリア一人だけ……


 ちっ!!

 何をやってるんだ私は!!

 今の私の最優先任務はメリアの護衛でしょう!?


 護衛のいない状況で別の暗殺者に狙われたら……


 私は焦って客室に引き返す。










「メリアっ!!」


 扉をノックするのももどかしく、私は蹴破るような勢いで扉を開けた!



「うきゃあっ!?……イェニー?もう、ビックリするじゃない!!」


 部屋の中にいたメリアが、そう非難の声を上げるが……私は部屋の中の状況に絶句する。



「こ、れは……一体何があったの?」


「あぁ、コレ?あなたが部屋を出ていってすぐにお客さんが来たので……」



 なるほど、『お客さん』か。

 招かざる……だと思うけど。

 私の懸念は当たっていたようだけど、メリアの方が一枚上手だったみたい。



 部屋の中にはメリアの他にもう一人……黒覆面に黒装束と言う如何にも暗殺者という風体の人物。

 彼?は四肢を木の枝で雁字搦めに拘束されていた。


「これは……メリアがやったの?」


「ええ。ちょうどこの部屋に観葉植物があって助かったわ」


 何らかの魔法、あるいはスキルと言う事か。

 生憎わたしは魔法には詳しく無いのだけど……少なくとも植物を操る力というのは聞いたことがない。


 暗殺者は何とか脱出しようと藻掻いているが、拘束から逃れることは出来ない。



「ごめんなさい、一人にしてしまって……護衛失格だわ」


「気にしないで。私だってそこそこ腕に覚えはあるし……すぐに戻ってきてくれたじゃない」


「うん……。それにしても、よく捕まえられたわね?」


 この手の暗殺者は気配を消すのに長けてるし、不意打ちを防ぐのは難しいと思うのだけど。


「私が名うての薬師と思われてるなら、毒は対処するかも?って思うでしょ。そうすると、本命があるかな……って。警戒さえしてれば、あとは……ね」


 そうは言っても実力が無ければ対処できるものではないだろう。

 やはりメリアは相当な実力者という事だ。











SIDE:メリア



 イェニーには何でも無い風に言ったけど。

 実際狙われてみれば心臓バクバクである。


 相手がそれ程の手練では無かったのが幸いだったと言える。

 敵も相当に焦ってるという事だろう。



「さぁ〜て、色々と喋ってもらいましょうか」


「どうするの?簡単に口を割るとも思えないけど……私、拷問はあんまり……」


「いやいや、そんな事しなくても。私は薬師なのよ?イケナイお薬とかもお手の物よ……うふふふふふふ」


 私のセリフと嗤いにイェニーがドン引きする。


 まぁ、それは冗談……というわけでもないけど。

 後遺症の残らない割とクリーンなものしか使わないから安心なさいな。



 そして、私は暗殺者に近付いて……



「……!!ゴフッ!!」



 突然、暗殺者が咳き込んでから、ガクリ…と項垂れた!


「なっ!?」


 私は慌てて覆面を引き剥がす。

 現れたのは、まだ少年と言っていい程に若い男性。


 口の端から血を流し、その瞳には既に光は見られなかった。



「しまった……口の中に毒を仕込んでたのね……。流石に即効性の毒を呷られたんじゃ処置できないわ。はぁ……拘束したらすぐにでも意識も奪っておくべきだったわね」


 自分を殺そうとした相手とは言え、みすみす目の前で死なせてしまった事に後悔の念が沸き起こる。


 だが、その事に涙するほど、私はお人好しでもない。

 嘆いても仕方がないし、さっさと切り替えないと。



「とにかく、誰かを呼んで……」


 そう、イェニーが言いかけたところで、客室の扉がノックされた。



「メリアさん、お待たせを………!?これは……!」



 入ってきたグレンが、部屋の状況を見て驚愕する。



 ちょうど良かった。

 こっちの厄介事は騎士の皆さんにお任せして、私は患者の診察に注力する事にしましょう。


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