そこには僕の心臓がある

そこには僕の心臓がある



     大路に打ち捨てられた露台の上には

     巨大な意思

     それは僕の心臓だ

     幾層もの迷路と通路と

     待ち伏せする

     腰を降ろして 苦い光に見えなくなった

     眼をみひらいてうずくもる 時の老人達


          夜ともなれば

          夜ともなれば繰り返しの

          砲撃の最初の音

          最初のあるいは最後の

          夜が始まれば

          終了の合図に

          僕は耳を傾け

          とどろきを聞く

          僕の耳は聞く


     夜ともなれば

     肩をしびれさす冷えこみ

     僕の心臓はよく知っている

     愛の側に運んで行くのが誰かを

     誰の意思が運んで行くのかを


     どよもす  夜

     それが踏みつぶすもの

     顫える指がつまみあげる

     あなたの痛みの切れっ端

     それが僕の心臓の一部になる

     そのなかで風が指し示すもの

     夏の盛りに

     木の葉の裏に巣食っているのは

     まるめられ

     人々の手からもぎ取られた

     皺くちゃの冬の旗だ

     そこにも 僕の心臓がある


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