付録(設定書)なぜステータスがシンプルなのか?

 *****



 これはおまけの情報だ。


 魔法戦の数値計算をより深く知りたいと思ったら、読んでみて欲しい。


 そうでなければ、全然読まなくても問題ない。


 数字のことを考えるのは頭が痛いからね。



 *****




◆1


 まずはステータス表示魔法の解説をしよう。


 私はいつも、ステータスの表示がシンプルなんだ。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:500』


 だいたいこんな感じだ。


 世間的には、「ステータスってもっと細かいんじゃないのか?」と思われているようだが、実はそれが正解だ。真のステータスはもっと細かい。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:500

 生命力:80

 攻撃力:5

 速度:2

 耐久(革の胸当て):5

 知能:3

 幸運:2』


 本当はこんな感じだ。ステータス表示魔法の解像度を高めれば、これよりさらに細かなパラメーターに分解も出来る。


 でも、こんなのをいちいち表示させていたら、戦闘の時に見にくくて仕方がない。


 なので我々は、普段は最重要項目の「魔力」だけを表示しているんだ。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:500』


 耐久付与魔法ディフェンス・エンチャントでバフをかけたときには、バフぶんだけを表示する。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:300

 耐久:200』←バフぶん


 戦闘の時の視認性が第一ってわけだ。




◆2


 耐久の考え方についてもお話ししよう。


 私が普段表示させている「耐久」はこんな感じだが――。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:300

 耐久:200』←魔法のバフぶん


 耐久関連の非表示ぶんステータスも加えると、このようになる。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:300

 耐久:200←魔法のバフぶん

 生命力:80

 耐久(革の胸当て):5』


 つまり、私の真の耐久は285あるということ。

 耐久付与魔法ディフェンス・エンチャントによる耐久200を削られても即死はしないが、さらに85削られると死んでしまうというわけだ。


 我々は生死ギリギリの戦いを避けたいので、非表示ぶんはバッファとして考えている。


 ステータスの耐久が0になっても、非表示ぶんの85が残っているので、なんとか生きていられる。そう思えば、戦いも余裕が持てるというものだ。


 というか、魔道士は生命力も貧弱だしね。


 そんなのを当てにしていたら、あっという間に死んでしまうんだ。




◆3


 次は攻撃力の計算だ。


 魔力、攻撃力、耐久、これらの数値は全て等価だ。


 攻撃力100の魔法を使うには、魔力100が必要だ。


 耐久100を付与する魔法には、魔力100が必要だ。


 そして攻撃力100は、耐久100を削ることが出来る。


 これにより、


「魔力=攻撃力=耐久」


 という公式が成り立つ。




 以上を踏まえて次を見てみよう。


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:500』

『騎士ゴーレム

 耐久:600』


 この2者が戦ったらどちらが勝つだろうか?


 そう、魔力500では耐久600を削ることが出来ない。


 普通に戦ったら私の負けだ。 


 ではこれは?


『チエリー・ヴァニライズ

 魔力:500』

『騎士ゴーレム

 戦力:1000』


 今度は耐久ではなく戦力だ。戦力というのは物理職にとっての魔力みたいなパラメーターだ。


 戦力1000は攻撃力1000の攻撃を一回できるし、攻撃力100の攻撃を10回できるし、あるいは攻撃力20を50回繰り出せる、と考える。


 この場合、正面から戦えば私の負けだ。魔力500では戦力1000を防ぐ耐久が付与出来ない。


(もっとも、敵の攻撃は避けるという手がある。うまくしのげばどうにかなる可能性もあるが、ややこしい駆け引きになるのでここでは置いておこう)


 


 以上。このようにステータスの数値を比べることで、ぱっと見で勝敗予測が出来る。


 魔道士には算術の知識が必要――。


 脳筋の予備校生たちに言った理由は、こういうところなんだ。


 国立魔法学園の入学試験は、魔道士同士のになるという噂なので、ステータスの把握も重要になってくるだろう。



 *****



 ステータスのお勉強はここまでだ。


 次回は王国の地理や歴史のお話でもしようかな? 


 私の身の回りのことを、より深く知ってもらえると私も嬉しい――。



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