1日1時間の魔法使い!~同級生が魔法少女というどうでもいい事実~
橘田 露草
第1話
「空を飛ぼうよ、あおちゃん!」
夜8時の我が部屋。
寝っ転がってライトノベルの読んでいた僕こと
————うん、幻聴だな。
無視をして本に視線を戻すと、その本は空高くへと舞い上がっていた。
そう、物理的に舞い上がっていたのだ。
そんな超現象を僕は完全スルーし、彼女の方へジト目を向ける。
「……なにすんのさ、木下さん」
「何すんのはこっちのセリフなんだけど」
ジト目にジト目を返されるというこれはこれで不思議現象が起こっていた。
ちなみに目線は綺麗に一緒。
身長は平均以下の140センチちょっとというロリロリしい彼女だが、空を飛んだら男子平均(ここ重要!)身長の僕と同じぐらいになるらしい。
是非とも身体測定の前に教わりたいものである。
彼女の名前は、
合法ロリ、説明以上。
高校2年生にもなるというのに全く、残念な体である。
「で?人が夜を謳歌しまくってる時に邪魔しに来たのはよっぽどの理由があってだよね?」
「暇だったからっ!」
「110っと。あ、もしもし不法侵入の現行犯です」
「わぁぁぁぁぁ!?」
国家権力に電話すると、慌ててスマホを奪いに飛び掛かってくる木下さんを華麗に避ける。
この程度、昔空手教室の体験レッスンを10分で飽きた僕にかかれば造作もない。
華麗に避けたことでぶつけた足の小指が鈍い痛みとエマージェーシーを与えてくるが涙目でスルー。
対峙する彼女に向き直る。
「い、いきなり警察って何考えてるのかな、あおちゃんは!?」
「不法侵入犯に何考えてるって言われる日が来るとは思ってなかったなぁ」
ちなみにリアルでポリスメンに連絡してはない。
スマホの向こうからは夜のバイトを頑張る友人が、無言の空間(というか僕)に注文を聞こうとしているの声が聞こえた。
夕飯後にピザをデリバリーする趣味はないのでそのまま切る。
不法侵入自体はもう慣れたものだった。
彼女と知り合って約3年、その中でコイツが窓から侵入してきたのは100回を余裕で超える。
ただの同級生である自分の部屋に、だ。
「‥って、おい。暇だからって人の家具をぷかぷかさせないでよ」
「うわぁ、あおちゃんってばベッドの下にこんなの隠してるー。すけべー」
「返せっ」
彼女の手元には胸の大きなお姉さんがあはーんうふーんする本が。
今度は僕が彼女に飛び掛かる。
が、さらに空中に浮かび僕では届かないところまで逃げる。
「へーんっ!こっこまでおいでーっ!」
「‥なぁ、木下さん。そんな上に上がるとなぁ‥」
「ふぇ?」
「まあ、うん。ごちそうさまです」
「ごち?‥はっ!?」
慌てて床に降りてくるがもう遅い。
おしゃれに気を使う年頃らしい可愛い水色の布はバッチリ脳内フォルダに収めたのだった。
「忘れろーっ!忘れてーっ!」
「それを忘れるなんてとんでもない」
どっかの龍討伐ゲームみたいなことをいいつつ彼女のパンチから逃げる。
実際見た目は学校でも、いや多分町内県内と広げても随一の美少女だろう。
なんでも中学では毎日告白され過ぎて逆にしてくる男子が減ったとか何とか。
「忘れっなっさーい!!」
「おまっ、タンスなんか投げたら死ぬから!?」
恐らく当たったら某赤い帽子にヒゲの配管工並みにペラペラになるだろうタンスをぶん投げてくる彼女。
それは僕に向かって飛んできて激突————する前に床に落ちた。
ドスンと音を立てて倒れるタンス。
これを元に戻して下の階に謝りに行く僕の身にもなって欲しい、既に半泣きだ。
「あっちゃあ、魔法切れちゃった」
「‥もう1時間経ったのか」
漫才している間にいつの間にか時間が経っていたらしい。
「ほら、送って行くからその前にこれ運ぶの手伝えよ」
「乙女のか細い腕にそんなこと頼むー?」
「乙女は窓から侵入したりダンスぶん投げたりしないからな」
そんなこんなで片付けを終え、彼女を家まで送り届ける。
その最中もふざけてくる彼女をテキトーにいなしたりとまあ色々あったのだが。
さて、彼女のプロフィールを訂正しよう。
名前は、木下舞。
合法ロリ、勉強は下の中、運動は上の上、あと友達多し。
そして————1日1時間限定の魔法使いである。
ちなみに、僕にとってはどうでもいい。
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