第108話 #黒夜のASMR①
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リリス先生のASMR講座~
今日の生徒はliVeKROneの魔王様!
黒様こと黒惟まお様だよ~♪
#黒夜のASMR《/color》 お楽しみに~
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【#黒夜のASMR】オフコラボ!魔王様にASMRを伝授しちゃうぞ♥【夜闇リリス・黒惟まお】
:待機
:お邪魔しまーす
:リリス大先生には感謝しかない
:よろしくお願いします!
:ASMRって初めて
「はーい、みんなー聞こえてるー?リリス先生のASMR講座はっじまっるよー」
:きちゃ!
:聞こえてるよー
:こんばんやーん
「おっけー、ちゃんと聞こえてるみたいだねぇ。それじゃあ、改めてこんばんやーん♥サキュバスVtuberの夜闇リリスでーす。やーんエッチなリリスちゃんって覚えてね♪今日は色々マイク切り替えたりするから何か変だったら報告よろー。あっ、いまは普段使ってる配信用のマイクだよー」
:ばんやーん
:了解
:わかった
:いい感じー
「はい、じゃあ黒様~」
「今宵も我らに付き合ってもらおう、liVeKROneの魔王、黒惟まおだ。こんまお」
:黒様こんまおー
:きゃー黒様ー!!
:ようこそいらっしゃいました
:まお様のASMR楽しみすぎる
「というわけでリリス先生のASMR講座、本日の生徒は黒様でーす、いえーい」
:やったー!
:いえーい!!
:リリス先生本当にありがとう
パチパチと拍手をしながら私を紹介してくれるリリス。結局、練習という名のリアルASMR体験はしっかりと両耳分行われたのだが、魔力を通した思いの吐露はあれ一度切りであり、だんだんといつもの調子に戻っていったので彼女から何か言ってくるまで私からは触れないことにした。そして、配信が始まってしまえばいつもの配信モードの夜闇リリスでありその光景は見慣れたものだ。
リリスの配信部屋はもともとは普通の部屋ではあるのだが立派な防音室が備え付けられている。しかも、配信用のパソコンなんかはファンの音やノイズを拾わないように防音室の外に設置してあるという徹底ぶり。配信ではなく本気でASMRの収録を行う時はスマートフォンはおろか無線のキーボードやマウスなんかも持ち込まないというのだからそのこだわりは相当なのだろう。
ただ、今回は配信ということもあり二人の姿は卓上にセッティングされたスマートフォンによって配信画面に映し出されているし、コメントなんかはタブレットで見やすく表示してくれているのでありがたい。
そんな防音室の中で私とリリスはカーペットの上に敷かれたクッションに隣り合って座っていた。
「リリスも忙しいだろうに請け負ってくれてありがとう、よろしくたのむよ」
「最近バズり散らかしてる黒様ほどじゃないってー、今週末三周年の記念3Dライブを二十時からやるけど少ししか忙しくないよー。今週末の二十時に~」
:宣伝していくぅ
:宣伝は基本
:宣伝できて偉い
:ライブ楽しみにしてるからな
「ふふっ、我も楽しみにしているよ」
「それで、今までASMRしてこなかった黒様がどういう心境の変化があったのかなー?」
にやにやとからかうような笑みを向けてくるリリス。彼女からはこれまで何回もASMRコラボに誘われていたしその魅了を語られ続けてきたのだが、配信と同じくなんだかんだと理由をつけて断ってきた。その理由はすでに伝えてはいるのだが私の口から言わせたいのであろう。
「liVeKROneに入ったということもあって色々余裕が出てきたのと、まぁアレだ。クリスマスくらいはリスナーたちの希望を叶えてやるのも悪くなかろう……」
「へぇー、黒様のリスナーは幸せ者だねぇ。黒様リスナーやファンの事だーいすきだもんねぇ。クリスマスにASMR配信をしたいからって相談してきた黒様可愛かったなぁ」
:さすまお
:黒様あったけぇ……
:なにそれ詳しく
:これが噂に聞くまおデレか
実際問題、ASMR配信をやるにしても機材の準備だったり配信環境を整えたりと時間もお金もかかる。兼業であった頃は仕事に配信、更には動画作成等の依頼を受けていたこともあってリクエストが多くても中々応えることができなかった。そんな状況がliVeKROneという企業に所属したことによって多少の余裕が出来たのだ、クリスマスという時節柄丁度いいだろうと思いリリスに相談したのが事の始まり。
「何しれっと最後適当な事を言ってるんだ」
「もー照れないの♪さてさて、時間ももったいないし早速やってみよーか。今日は我がリリスちゃんスタジオにある選りすぐりのマイクと道具をかき集めてきたよー。どれからやる?」
別にいつも通り相談しただけなのではあるのだが……、ここで否定を重ねたところで更にからかわれるだけだ。少しだけ不満げな視線をリリスに送るが、そんな私に構わずぐるっと二人を囲うように用意されているマイクと先程までは私に使われていたASMR用の道具たちを腕を広げて誇らしげに紹介される。
「といってもな……、ASMRに関しては軽く調べた程度でほとんど初心者だからリリスに任せるよ」
「あいあーい。じゃあ、まぁ最初は定番の白耳くんからいってみよーか、マイク切り替えるから無音になるよー」
:安定の白耳くん
:白耳くんすこ
:まぁ最初はだいたいみんなコレだよな
「……はい、みんなー聞こえてるかなー?こっちが右でーこっちが左ー」
:聞こえてるー
:おーすごい
:白耳くん久しぶりじゃない?
リリスが慣れた手付きでセッティングを終えると白い人の耳を模した、所謂ダミーヘッドマイクと呼ばれるものを手にして左右へと声を吹きかける。すると、あらかじめ耳につけていたイヤホンからもリリスの声が間近から聞こえてなんだか不思議な感じだ。
《xsmall》「もう、喋っていいんだな……?」《/xsmall》
「そんなに小声じゃなくても大丈夫だよー、叫んだりしない限り結構大丈夫」
「そうか……これが白耳……」
:おおお
:まお様の初ASMR……
:黒様の初体験……
:小声でかわいい
自身の声がどの程度マイクに拾われるのかわからないので自然と小声で問いかけてみるが、そんな私の様子を見てリリスはマイクから少しだけ距離を離していつもの調子で受け応える。たしかに、そんなに近づかなければ問題はなさそうだ。
「これがまぁダミーヘッドマイク入門編、ダミヘといいつつ耳だけなんだけど。3Bioの白いやつだから白Bioくん、白耳とか言われてるやつ。といっても白耳にもグレードがあって……まぁ中のマイクだったり接続が違ったりするんだけど上のグレードのやつだよー」
「これは調べてるときに沢山出てきたな……たしかこっちだとXLRで接続できるけど下のやつはステレオミニ接続と書いてあったな」
「そうそう、釈迦に説法かもしれないけどアンバランス接続だとノイズがねぇ、あとインターフェイスかますならやっぱりXLRのが便利だし」
:二人共機材の話になると早口になるよね
:ASMRで機材談義しないでもろて
:なんか二人の間に挟まって機材談義されてるぅ
:これはこれで……
ついついリリスの機材談義に乗っかりながら事前に調べていた情報と照らし合わせて、まじまじと白耳くんを観察してしまう。
「あー、ごめんごめん。黒様ほどじゃないけどASMRの機材については色々話したくなっちゃって。この話はあとでゆっくり二人きりですることにして……。じゃあまずは黒様好きにこの白耳くん弄ってみて?」
「好きにと言われてもな……」
「こうやってーお耳マッサージしてみたりぃ、そこにある耳かきとか綿棒つかってもいいよ?」
:お耳気持ちいい……
:マッサージの音~
:やっぱ先生なんだよなぁ
リリスが白耳に触れるとその音がイヤホン越しにこちらにも伝わってくる。直接触れられた時の音とも少し違う気もするが、それでも感覚的には触られているように感じてしまう。
「それじゃあ……こう、か?」
:うーん小さい?
:もっと強くていいかも
:もっと激しく!
:もっと荒々しく!
場所を譲られそっと白耳に触れてみるがそれだけでは大した音は聞こえてこない。見よう見まねで耳の縁や耳たぶなんかをつまんだり指で押し込んだりしてみるのだが……、リリスがやっていた時のような感覚にはならず。なんだか物足りないというか……。
「うまく音が出せないな……」
「こればっかりはねぇ、コツがあるというか。自分でいい音鳴るところを地道に探してくしかないんだよねぇ、ほらこんな感じで」
:おお
:さすリリ
:プロの技
:いい
私が悪戦苦闘していると見かねたリリスが手を重ねて指先を誘導してくれる。すると今までが嘘だったかのようにグイグイっと出したかった音が耳に届くのだから不思議なものだ。
「こんな……感じ?」
「おー、結構いい感じ。黒様センスあるんじゃない?」
:おー
:ちゃんと聞こえる
:これがまお様の指……
:気持ちいい
リリスの手が離れてからも教えられたとおりに指を動かし若干力を込める。すると完璧とまではいかないがそれなりに良い音が出ているような気がしてきた、素直に褒められるのもコメントから良い反応が返ってくるのも嬉しい。
「じゃあ次は道具使ってみよっか、この奥のマイクに当たらなければ平気だから怖がらずにやってみてー」
「じゃあ、この耳かきで……」
:黒様……結構大胆
:うまい
:気持ちいい……
:そんな奥だめぇ
ゾリゾリ、ゴリゴリっと耳の縁から徐々に耳の中へと耳かきを進めていく。こっちは指と違ってなんとなくだが直感的にそのまま音が出る感じがしてやりやすい。
「おっ、上手上手。結構みんな怖がってなかなかうまくいかないんだけど、これなら大丈夫かなぁ」
「マイクに当てなければ大丈夫だと聞いたからな、それならまぁわかりやすい」
「それじゃあ、次は囁いたりお耳ふーってしてみて?」
私の様子を見たリリスは満足気に頷き、白耳に口を寄せてお手本を見せるように囁き声で次の指示を出し吐息を吹きかける。その刺激にピクリと反応してしまうが、配信前にやられた数々の刺激に比べればイヤホン越しということもあって耐えることが出来た。あの練習にも意味はあったようだ。
「ええと……煩かったら言ってくれ……カリカリ……その、気持ちいいだろうか……?ふぅー」
:あ~^
:黒様の低音ボイスで囁きはやばい
:もっと!!もっと!!
:これはハマる
:ふぅーはもっと強くていいかも
「あー、リリスナー。あたしの時より反応いいんですけどー浮気だー」
:あっ
:ごめんて……
:いやこれは……
:リリスガ一番ダヨ
リリスとそのリスナーたちのやりとりがなんとも微笑ましくて、少しだけ悪戯心が芽生えてくる。たしかに声質的にリリスとは違うので新鮮なのかもしれない、それにASMRについて調べた時も見た限りでは大勢を占めているのは所謂かわいらしい声の持ち主たちで私のように低めの声というのは中々見かけなかった。そう思って、意識していつもよりも若干低く魔王成分を強めて再度囁く。
「ふふっ……リリスがヤキモチを焼いているぞ、もっと強くがいいのか?仕方ない奴らめ……」
:キャー黒様ー!!
:メスになるぅ
:これはアカンて
:性癖が歪むぅ
「もー、リリスナーたちをメス堕ちさせないでよー。……ね?リリスナー?リリスナーたちはリリスちゃんのものなんだからね?黒様にメス堕ちさせられたってリリスちゃんは愛してあげるよ?」
リスナーたちの反応に満足していると今度はリリスが反対側の耳に口を寄せ、とろけるようなとびきり可愛らしい声で囁き始める。それは普段の配信で見せるようなおふざけが入ったようなものではなく、お手本として見たASMR配信で度々見せている本気の誘惑ボイス、練習でも散々囁かれたものだ。
「リリスナーはともかく、我のリスナーたちはリリスに誘惑されていないだろうな……?お前は我のモノなのだから……な?」
「リリスちゃんは黒様に誘惑されちゃうダメダメリリスナーだって、ちゃあんと許してあげるよ?だって……リリスナーは身も心もあたしに捧げてるもんね?……愛してるもんね?だから……君の事、愛してるんだよ?」
「我はリリスほど優しくはないぞ?……だが、そうだな。我に愛を誓うのであれば……その愛に応え、我も愛している……。と誓おうじゃないか」
:ああああああああ
:両耳が幸せすぎる
:なんだこの天国みたいな地獄は
:どっちかなんて選べるわけないやろ……
:もうゴールしていいかな……
囁きあっているうちになんだか楽しくなってきてすらすらとセリフが出てくる。ちらりと白耳越しにリリスと目が合うが向こうも同じようで、ニヤリと笑みを返してくる。
リリスと一緒ということもあるのだろうが、案外ASMR配信というのも悪くない……どころかこれは少しハマってしまいそうだ。
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