第69話 SERAPHIMラジオ①
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黒惟まお@liVeKROne/今夜ラジオゲスト出演!詳細は固定さんがリツイート
天使沙夜アルバム発売記念キャンペーン第四弾!
①@amatsuka_officialと@Kuroi_maoをフォロー
②ラジオ放送中に#SERAPHIMラジオ をつけて感想を投稿
抽選で四名様に天使沙夜と
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ランチ雑談配信を終え、SNSをチェックしていけば配信の感想や#SERAPHIMラジオがつけられた期待の投稿が多く見られる。そして、明らかにフォロワーの数が増え始めているなとその理由を探ってみればすぐに出てくるキャンペーンの投稿。
今回の記念ラジオに合わせて行われているキャンペーンはそれぞれのアカウントをフォローし、ラジオ中に#SERAPHIMをつけて感想を投稿するだけ。
そんな気軽さもあってかフォロワーはどんどん増え、まだラジオは開始していないのにも関わらず日本のトレンドをどんどん上昇していっているようだ。この分なら本当に世界トレンドも狙えるかもしれない。
ラジオの時間まではまだ時間があるがSNSをチェックしているだけですぐにその時間を迎えるだろう。幸いな事に今日は配信以外特に用事も入れてないし急ぎの作業も残っていない。このままのんびりとSNSを眺めながら過ごすというのもたまにはいいだろう。
……
「天使沙夜のSERAPHIMラジオ、このラジオはあたし天使沙夜の新アルバムSERAPHIMの発売を記念した四週連続のラジオ番組です。このラジオの感想は#SERAPHIMラジオで是非どんどん投稿してください。いやー、もう四回目ともなると流石にこの口上にも慣れてきたんだけどこれで最終回かぁ。もうすっかりラジオパーソナリティですね。って?いやいや、たしかに最初よりかは緊張もしなくなったけどゲストがいてなんとかって感じかな。そういう意味だと今日のゲストはそれこそ話のプロみたいなものだから、今日はあたしがゲスト気分で行かせてもらおうかなって。……なんだか無言の抗議を感じるけどとりあえず番組開始と共にアルバムSERAPHIMから一曲聞いてもらって番組スタート」
軽快なフリートークから始まりBGMとして流れていたインストのアルバム表題曲であるSERAPHIMがタイミングよくボーカル入りへと切り替わる。
まっさきにアルバムタイトルとして発表され、ラジオ初回放送の際にオープニングとしてお披露目されたその曲は熾天使の名に相応しく、純粋で力強いメロディーに透明感のある歌声がマッチしている。
「というわけでSERAPHIM聞いてもらいました。じゃあさっそくゲストを呼ぼうかな、ヴァーチャル魔王様の黒惟まお様です」
「
「いえーい、まお様こんまおー」
「……こんまお。いつもは様なんてつけてないくせに」
「まぁ一応?こうやって二人で人前で話すのは初めてな訳じゃん?だから最初くらいはまお様って呼んだほうがいいかなと思って」
「お気遣いありがとう、まぁ好きに呼んでくれて構わないが」
『まお様キター!』
『天使ちゃんがこんまお言うとるw』
『沙夜様なんか楽しそうー』
『魔王様の声好きかも』
#SERAPHIMラジオで検索しているSNS上では私の登場に流れが加速する。更新するたびにどんどん新しいメッセージが表示されていくのですべてを追いきることはできないが、概ね好意的に迎えられているようで一安心。
「じゃあ、いつも通りまおで。まおの事を紹介すると、もともとは個人としてヴァーチャル魔王様、Vtuberとして活動を開始し今年の九月に二周年を迎えて事務所liVeKROneに所属を発表。普段は雑談や歌、ゲーム配信などを行う他、動画作成者としても活躍中。個人、企業を問わない幅広い交友関係から同じVtuberからの信頼も厚く、企業所属となってますます勢いを増しているVtuberのひとり。ちなみにVtuberについて知らないってリスナーもいるとは思うんだけど、これは本人に説明してもらったほうがいいか」
「簡単に言ってしまえばヴァーチャルの姿を持った配信者のことだな。今回はラジオなのでリスナーに伝えられるのはこの声だけだが、普段はヴァーチャルの世界から姿を映して色々な配信をしている。我に限らずVtuberと呼ばれる者の配信を見てもらえればどのようなものかわかるとは思うが、姿が少し違うだけで他の配信者と同じようなものだな」
『こんなに増えるとは思わなかったよなぁ』
『へぇここ最近よく聞くようになったよね』
『結構有名な人なんだ?』
『幅広い交友関係(意味深)』
「あたしもそんなに詳しくはないけど、まおの配信はよく見てるからそこから色々な人の配信を見るようになったなー。んで、どうしてそんなヴァーチャル魔王様をゲストに招いてるかというと。実は付き合いが結構長くて、それこそあたしがアーティストとしてデビューするってきっかけをくれたのがこの魔王様ってわけで」
「いままでこの手の話はあまりしてこなかったし、一種の公然の秘密みたいなところはあったからな」
『そこ触れるんだ』
『まぁ昔からのファンなら知ってるよな』
『天使ちゃんにSILENT、魔王といえばネットで有名だったからなぁ』
「まぁお互い変な遠慮しあっていたっていうか……別に隠してるつもりもなかったし、結果的にこうやって記念のラジオで共演できてあたしは嬉しいかな」
そう、リスナーたちの反応を見ればわかるが私もつかさも互いの活動の邪魔になってはいけないという思いもあって大々的に明かしていなかっただけ。そんな空気感は互いのファンにも伝わっていたようで全員が全員空気読み状態だったのである。
今回このラジオ出演にあたってそのあたりの話はしっかりと事務所同士で話し合いが行われ、どこまで明かすかは私達二人に任されている。
「我も嬉しいよ、付き合いが長いといえどこのように活動していなければ共演できなかったかもしれない。だからこれまで見守ってくれてきた者たちには感謝している」
『てぇてぇ』
『二人とも良かったなぁ』
『結構似た者同士だったり?』
「それじゃ、そろそろメールを紹介していこうかな。ラジオネーム、翼の生えた猫さん。沙夜様、ゲストの黒惟まおさんこんばんわ。最終回のゲストはVtuberさんということで今まで見たことはなかったのですが気になってまおさんの配信を見てみたらすっかりハマってしまいました。まおさんの二周年記念では沙夜様からのメッセージサプライズもありとても感動したのですが、お二人が仲良くなったきっかけやお互いのエピソードなど聞いてみたいです。ってことだけど、まずはメールありがとう」
「配信を見てくれたのは嬉しいな、翼の生えた猫さんありがとう。二周年記念のメッセージは
「仲良くなったきっかけかぁ……なんかあったっけかなぁ。気づいたら自然と仲良くなってたっていうか」
「たしかにきっかけと言われると難しいな、でもやはり今のこの関係を考えればアレじゃないか?」
「それまでなんとなく仲良かったところから一歩進んだのは確かに歌の投稿はじめてからだな」
『そんなに前から仲良かったんだ』
『あれは感動したなぁ』
『あとで見に行かなきゃ』
『そのあとのサプライズもすごかったよね』
幼馴染とはいえ、相手はつねに周りの人気者。そのことから一歩引いていた時期もあったのだが、動画投稿に歌で参加してもらったことによって遠慮がなくなったというか……。動画や歌に対する気持ちのすれ違いも経て幼馴染の友人という認識から共に作り上げる仲間、そして親友と心から思えるようになった気がする。
「それまで喧嘩らしい喧嘩もしたこともなかったからな」
「あれはあたしも悪かったけど、まおの言い方がなー」
「それについてはちゃんと謝っただろう?お詫びにケーキまで焼かせられて……」
「いやーあのケーキ美味しかったからなぁ、アルバム記念に今度作ってもらおうかな」
『青春してるなぁ』
『いいなぁ』
『まおちゃんってケーキ作れるんだ』
謝った上に慰謝料という名目で手作りのケーキを要求されたことはよく覚えているし、なんなら喧嘩した内容よりもそっちのほうが記憶に残っている。今思えば、お互い若かったというか……。
「え?あぁそうだ、すっかり忘れてた。今回のラジオのキャンペーンで#SERAPHIMラジオをつけて感想を投稿してくれた四人に色紙プレゼントするだろ?」
「あぁ、その話は聞いているが……」
「スタッフからその色紙を紹介してほしいって、今?脇に置いてある封筒?あっこれか、ってこれマジで?」
「ん?どうかしたか?」
「ほらコレ」
「これは……」
『なんだろう』
『色紙ほしいなぁ』
『あたれー!!』
「なんと今回、サインする色紙はお二人からすれば馴染みのある先生の描き下ろしイラストの複製色紙です!お二人にはこちらの原本をお渡しいたします!スタッフSより。ってほんといつの間に用意してたんだよ」
「我々でお馴染みといえば……、たしかに動画投稿の話をしたのでちょうどいいという訳か。我の姿を描いてくれているSILENT先生の描き下ろし色紙とは」
「色紙のデザインは放送終了後に公式アカウントから発表されますって、これあたしたちがもらっていいのか」
『すっご!?』
『SILENT先生!?』
『サプライズじゃん』
『貴重すぎる』
このサプライズは収録のこの瞬間までずっと隠されていたので本当に驚いた。私達にはただリスナープレゼントのため色紙にサインをあとでしてもらうとしか言われていなかったのだ。そして新たに書き下ろされた色紙のうち一枚は額に入れて大事に飾ってある。私に送られたそれはどこか見た記憶がある構図で、天使沙夜と黒惟まおが肩を寄せ合い自撮りをしているように見える。そこに控えめに入るSILENTというサインを見ればしてやったりといった不敵な笑みが思い浮かぶのだ。
ちなみに後から聞いた話だが、もしよかったら何かメッセージを……とダメもとで依頼したらしいが。それは叶わず色紙のみの提供となったようである。
「とんだサプライズをされてしまったな。二人に驚かされるのは二周年記念配信以来か」
「今回のはマジであたしも何も聞いてないからな?
「サプライズを用意してくれたスタッフと受けてくれたSILENT先生には感謝せねばな」
「いや、めっちゃ嬉しいし。本当にいい絵だから色紙の公開を楽しみにして欲しいな。それじゃ、次のメールは……」
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