クールな義姉さんに(家族として)好きですって言ったらすごいくっついてくるようになった。
じゅうぜん
第1話 (家族として)好きです
それはある日の夜のこと。
俺は、ある言葉を伝えるために
「どうぞ」
冷たい声で返事がある。
部屋に入ると、椅子に座った義姉さんと目が合った。
とても綺麗な人だ。顔立ちはまるで女優のように整っているし、身体つきはモデルのようにすらりとしている。
俺の義理の姉。
秋里
「陸、どうしたの?」
夕莉義姉さんが首を傾げる。黒くて長い髪が肩口でたわむ。
「……その、お義母さんがコーヒー渡してきなって」
「そう。ありがと。机に置いといて」
「うん」
俺はお盆に乗せたコーヒーを机に置く。
でも、これは話のきっかけのために持ってきただけだ。
本題は別にある。
「陸?」
コーヒーを置いたが、帰らない俺に向けて不思議そうな声をかけてくる。
「実は、言いたいことがあるんです」
「言いたいこと?」
「お
「……え」
義姉さんがびっくりしているが、初めて聞いた時は俺もびっくりした。
「お義母さんが言ってたんです。義姉さんが『陸に距離を取られて辛い。嫌われてるかも』って言ってたって」
「い……言ったけど」
俺には青天の霹靂だった。むしろ逆だと思ってた。
義姉さんからしたら、俺のことなんて邪魔かと。
「義姉さん。俺は義姉さんを嫌ってません」
「へ?」
「むしろ、もっと仲良くできればと思ってました」
本心を伝える。
言わないとわからないのだなという事をこの時にちゃんと理解した。
この半年、なあなあでずっと過ごしてきた。
新しくできた家族。母と姉。
父さんとお義母さんは傍目にもはっきりわかるくらいラブラブで過ごしている。
俺とお義母さんや、義姉さんと父さんの相性も悪くない。
でも俺と義姉さんはそうじゃなかった。
年齢もそんなに変わらないし、しかも学校の先輩だった。
いきなり家族が増えると言われて、それが顔の知っている人だとあっては、すんなり対応できるわけがない。
「だって、義姉さんはすごい人じゃないですか。勉強もできるし。運動もできるし。生徒会もやってるし。みんなから尊敬されてて……」
「…………」
「むしろ俺が嫌われる方だと思ってました」
「そ、そんなことないわ!」
珍しく大きい声を出し、顔を赤くして俯く。
「す、す、すきよ。私は」
恥ずかしそうに言う。
そう言ってもらえると俺も安心する。今までは少し不安に思っていた。実際は嫌われてるんじゃないかと。
だから、俺もちゃんと言うことにした。
「よかった。義姉さん、俺も……俺も義姉さんのことが好きです。だからさっきも言ったけど、嫌ってなんかないですよ」
義姉さんが嫌われてるかもと勘違いなんかしていたから。
――嫌だなんて思ってないです。
――むしろ家族としてちゃんと義姉さんが好きです。
と伝えたつもりだった。
「……って義姉さん?」
のだが。
義姉さんが、すごく、それはすごく目を丸くしながら、頬を真っ赤に染めていた。
「えっ? あっ、えっ」
「義姉さん?」
「す、すすす、すき? す?」
なんだかめちゃくちゃ慌てていた。
「義姉さん? 意味伝わってます?」
「つっ、伝わってる。うん。それはもう。ど真ん中で。わ、私たち、家族だけど」
「家族だから俺も好きだって」
「あれ、あ、でも、義理だったら平気って聞くような……」
何を言ってるんだ。
呆気にとられる俺を置き去りに、義姉さんがゆっくりと鷹揚に頷く。
「あの、義姉さん?」
「……気持ちはわかったわ」
「たぶんわかってないと思いますけど」
「じゃあ、陸。今日は一緒に寝ましょう」
「はい…………ん?」
今、なんて?
「コーヒー、ありがとね」
「え? あ、はい」
「陸も勉強するでしょ。またあとでね。部屋に行くわ」
「あ……うん」
そのまま会話は終了みたいな空気に流され、俺は義姉さんの部屋を後にした。
ぱたん、とドアが閉まる。
俺はなぜか変な汗をかいていた。
(一緒に寝るって……なんだ?)
何もない天井を眺め、思う。
(なんか俺、やっちゃったかな)
――この日から、義姉さんとの関係が変わっていくのだった。
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