ネトゲのセカイにミセラレタ少女のお話

春音 夢案

黒澤綾乃 篇

「朝よ!起きなさい!綾乃!」

「ん…?」


「朝じゃん…てか今日土曜日だしさ…zzz」

「今日菜採ちゃんと約束あるでしょっ!!!」

「んっ…」

綾乃はスマホをいじる…


「あああああああああああああ!!!」


ドン!ドタン!ゴンッッッ!

「お着替え朝飯洗顔歯みがき!」

「髪の毛も!」

ドタドタドタ…

「行ってきまぁぁぁぁぁす!!!」

「…朝から騒がしいわね…あはは」

黒澤綾乃はとにかく急いで集合場所に走った。


「はあはあはあ…」

「遅いぞ」

「ごめんなはいっ!菜採ちゃん!」

綾乃はしっかりと噛み、そこそこ痛がる。

「はぁ、全く…新作ゲームが出るから急げっつってんのに…」

「ううぅ…す''ひ''ま''し''ぇ''ん''…」

「ほれ、行くぞ」

「はひぃ!!!」

今ずっと綾乃を見下してる女は葉月菜採(はづきなつみ)という。綾乃が一人でいるのを見つけ、仲良くしている唯一の友達である。


二人はゲームショップの前に並ぶ。

「いい?ここからは他の人と勝負なのよ。」

そして彼女は小さく呟く。

「絶対、買うんだからね___」

「___Eternal・Cristalisaion・Online___」


数分後…

「買えたね…菜採ちゃん…」

「そうだね…」

そして、二人は別れて、各々家に帰ったのである。


「さあさあ、ゲームゲーム…」

ゲーム機にカセットを挿し、立ち上げる。

しかし、綾乃の前には白い靄が立ち竦む。

「えっ…?」

「ええっ…?誰っ…」


やがて白い靄は消え、見えたのは、紫色の髪をした少女と、大木だ。

「…あなた、誰?」

「私…黒澤綾乃って…うん…えぇ…」

「私、イルミル。イルミル・ネミラ。」

綾乃はイルミルと名乗る少女に近づく。すると。

「あわわっ、私のこと、忘れないでくださいよぉぉぉぉ…」

「えっ…ええっ…エルリィちゃん…うへへ…」

「えっエルリィ!?いやっちがっ私エリィ!」

「エリィ…この世界ではECO(エコ)と呼ばれる存在。」

綾乃には、そのECOという言葉に聞き覚えがあったのだ。


何故なら。


Eternal・Cristalisaion・Onlineに付属していた紙の説明書にその文字が書いてあったのだ。その辺はしっかりとしているのだ(まあ最近紙の説明書見なくなったけどね)。


「いきなりだけど、あなたと一緒にここの混沌をぶったぎりにしに行きましょう。」

「へ?????」

「いや、あの、だからそういうストーリーなんですって、はよ「はい」言え、ほれ」

綾乃はぽかーんとしたまんま

「えっーあーはーぁい」

「そっれではけーやくせーりつだねっ♪」

「エリィーーーーー!私はそんなことした覚えござぁせんぞぉぉぉ!!!」



高原という高原の中、1つの町が現れた。イルミル曰く、そこでクエストをクリアすればいいみたいな感じらしい。


「そこのお嬢ちゃん…ちょっといいかいな…。」

「えっ、私でしょうか?」

「そうじゃそうじゃ。お嬢ちゃんなら、きっと魔女で人殺しのチルティアを倒せるだろうと思ってなぁ。」

綾乃はまたまた口をあけ、ぽかーんとしている。

「はい!私におまかせあれ!」

イルミルは笑顔で答えた。

「おおーい!イルミルー!私ははいもいいえも言ってないぞぉ!!!」


「イルミル、エリィ…、ストーリーの進展おかしくないっすか…?」

「ん…?ああ、ショートカットはした」

「だ ろ う な ぁ」

仲良く(?)話をしていると、なんか強そうな魔物が現れた。

イルミルは問答無用でぶったぎりにかかった。しかし、

「チェーンソー女ゲットじゃー!!!」

とのように一発で捕まった。綾乃には彼らを追うしか選択肢は無かった。

「なんで戦える人がさらわれるのですかぁー!?!?」


すたこら走る魔物を追い、とにかく塔にたどり着いたがそこで魔物を見失った。

「とにかく、ここに入ればいいのかな?」

「私なら入りますわ!」

「なら私も入る!武器なんにもないけど!」


塔の中の警備はもぬけの殻だった。だから頂上までスッと行けた。

あとで知った話だが、エリィが後ろから攻撃してたんだとか。

頂上の間の扉は重く、ぎぃとも音がならなかった。


「あらあら、のこのことおいでなすって、黒澤綾乃さん。」

座には、金髪だが、フードを被っている女がいた。

「あなたがチルティアでしょっ!なんで私の名前知ってるかも疑問だけど!」

「あぁ、そうだよ。私がチルティア。またの名を、葉月菜採だ。」

チルティアは、足を組んで見下しながら答えた。

「なんでそんな事してるの!?」

「ふん。そんなもんお前に言う必要はないな。」

「と言うかさ敵キャラできるシステムありましたっけぇ!?」

「これは我が会社が仕組んだ「バグ」だ。」

綾乃はショックを受けた。続けて、

「次に、イルミルをさらった理由を教えて!」

「こちらには無能しかいなかったからな。有能なプログラムを連れてきただけだ。」

もう一度、ショックを受けた。だって、学校で唯一の友達。その彼女がなんで?


ショックを受けていた綾乃をも無視し、「行け」と一言、イルミルが動いたのだ。

イルミルは綾乃めがけチェーンソーを振り走った。

「──危ないっ!」


ふわり、純白の羽がひらり、少女は剣を一振り、イルミルを気絶させた。

「誰なの?あなたは…」

「私は…」


「───シュワース家の一人娘、エルリィですわ。」


綾乃は目をキラキラと輝せつつ、イルミルを抱いた。


エルリィは、チルティアの座へと走り、「これで、おしまい」と言い、剣を振る。

チルティアが散るとともに塔も自然と崩れ、もとの高原へと姿を変えた。



「えっ…なんで…?」

綾乃は疑問に思い、エルリィへと聞いた。

「あなた、少し前に私のお人形作ったじゃない。」


彼女は、とある小説のキャラクターのエルリィのぬいぐるみを作っていたのだ。

その話の中ではエルリィは最後【音楽の女神】となるのだ。そのシーンのエルリィを可愛いくデフォルト化し、作ったのだ。

「ねぇ、菜採──、可愛いでしょ、エルリィちゃん!」

「あぁ、そうだな───。」


綾乃は、信じるのだ。菜採のあの返事に嘘などないことを。


「じゃあね、イルミル、エリィ。」

と綾乃は言うと、イルミルは黙って泣いていた。

「…。イルミルはきっと複雑な思いを抱えてる。だから───」

言いきる前には綾乃はイルミルを抱いていた。

「きっと、また、会えるよ。永遠の別れじゃないの。」

イルミルはそれでも黙って泣いていた。

「気にしないで、大丈夫。」

エリィは薄々気づいていた。たった1つの大丈夫に、たくさんの意味を含んでることを。

「それじゃ、「またね!」」

エリィは、

「本当にありがとうね~~~!」

イルミルは泣いて、手を振っていた。



───数年の月日が流れた頃。


「いやー、あのゲームはもう二度とやんねぇわ。ほんとトラウマもんよ。」

「えっ、でも私、少し面白そうって思った!ね!宏幸くん!」

「えっ!?咲々さん、さっきの話聞いて怖いと思わなかったのです?僕が菜採さんの立場なるかもしれないんですよ!?」

「…んあー。」

カランコロン。

「いらっしゃいませ~」

そう、咲々が言うと。

現れたのは、おさげの髪型をしており、紫色の髪色で、綾乃を少し大人っぽくした少女がいた。

「えっ、あっ、あなたさっきの───」

「なんで、綾乃がそこにいるの───」


「「また」会えた!本当に…!」

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