第7話,スキルの事はどーなってるのさ
「むむむ…」
僕は今とても集中していた。
外で拾ったトカゲが収まった虫かごを前に、じっと視線を向けピッと立てた人差し指を向ける。
「
寒い日に鳥肌が立つように、ゾワゾワとした冷たいものが体内を移動して指先から薄ピンクの半透明の糸が真っ直ぐに伸びる。
糸状に伸びた魔力はカゴを無視してトカゲの額に当たってポワンと弾けた。
見ようによってはハートマークにも見える
すると先程までそっぽを見ていたトカゲは何か大事なことを思い出したようにびくりと体を震わせると、すぐに僕の方に体を向き直した。
「シュルル」
こちらに寄ってきたトカゲを籠から取り出して手に乗っけるが、トカゲは逃げ出すでもなくおとなしく掌に乗っかってこちらからの指示を待っている。
魅了されたものは自我を見失い、術者の言い成りとなってしまう恐ろしいスキルだ。
悲しいことに
「よしよし、ちゃんと上手く行ってますね。それじゃあこの子を…」
右手にトカゲを乗せたまま僕はもう一つの虫かごの蓋を開けた。
そこにトカゲを降ろすと、かごの中で何かが激しく動いた。
その正体はトカゲと同じく僕が外で見つけてきた小さな蜘蛛であった。
突然自分のかごに入ってきたトカゲを警戒して、隅の方に身を寄せて前足を振り上げて威嚇している姿がいじらしい。
「お食べ」
トカゲにそう指示すると即座に動き必死に体を大きく見せて抵抗していた蜘蛛はあっけなく食べられてしまった。
指示をやり遂げたトカゲはどことなく満足そうだ。
…いや、単純に空腹が満たされたからかもしれない。
「うん、よくやってくれたね。お礼に君に名前をあげようね~。ん~、美味しそうなのがいいね!よし、君は『クロヤキ』だ!!」
無感情にこちらを見ていた目がギョッと見開いたような気がする。
気に入ってくれたみたいですね!
さて、結果はどうかな?
クロヤキが何処となくしょんぼりとしたその時だ。
衝撃が脳天を突き抜けた。
まるで頭の隅に引っ掛かって思い出せなかったことを、全く関係ないタイミングで唐突に思い出した様な感覚。
霧が晴れた様な爽快感に身を包まれて非常に気持ちが良い!!
これがゲーム時代NPC達が言っていた『スキルツリーを獲得する感覚』かぁ!
ゲームでは味気ないシステムメッセージに過ぎなかったそれを実感として得られる喜びに今!僕は震えています!!
そして急いで自分のステータスを確認する。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【グリム・シュガーボックス】
Lv.1(3/10)
種族/
勢力/
能力値
HP=5/5
MP=5/5
STR(筋力)=1
CON(持久力)=1
POW(精神力)=2
DEX(器用)=1
INT(知能)=1
AGI(俊敏性)=1
CHA(カリスマ)=10
【スキルツリー】
・『ハーフリング』★
・『
≫
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「おおー。やった!やっぱりこの世界でも僕の知識が通用することが分かりましたね!」
これで僕は『
『
これらのツリーはカンストするまでは『卵』や『半人前の』などの接頭辞や接尾辞が付いた状態で獲得し、【称号】を得た時点でそれらの装飾語取れる。
この『
この状態になって初めて「自分は『
まだ『卵』なんかのからが取れていない者は「
さぁ、僕が一体何をしていたかは分かっていただけたでしょう。
一昨日初めてお外に出た僕は、早速この小さな足で家の周囲を歩き回ってそこかしこで働いている(もしくはさぼってお菓子を貪っている)住民にこの世界でのスキルについて聞いて回った。
その結果、少なくともこの村に住んでいる
勿論、剣を熱心に振り続けたものが『剣術』のスキルツリーを得ることや、魔力の操作を学んだものが『魔法』系統のスキルツリーを得られることがある事を知ってはいた。
けど必要とされる能力値や詳しい獲得条件なんかについては知ろうともしていない。
というか、諦めているんだと思うんだよねぇ。
スキルツリーは「才能ある限られた者や選ばれた高貴な血筋の者が得られる特権」なんだと誰かが言っていた。
事実この世界ではその言は正しいみたい。
有力な一族や権力者には必ず特定のスキルツリーを獲得する者達がいるらしい。
つまるところ有力者たちは彼らの祖先が発見したスキルツリーの情報を秘匿しているのだろう。
例えば、今回僕があっさり手に入れた『
これを僕は、
こんな事は
他の
無知ゆえの誤解だ。
確かに
でも上手く使えばこうやってより強い、またはより便利なスキルを手に入れる道具に出来るのに!
まぁ、ありうる話というか。
当然の事ともいえるよね。
ここは
「でもそれじゃあ面白くないんですよね!この僕が」
そう、面白くない。
全く持って遺憾です。
スキルっていうのは、もっと身近で、当たり前で、分け隔てなく、平等であるべきなんだ。
知ろうとするかどうかは個々人の自由かもしれないけど、知ることが出来ないのはフェアじゃない。
そんなの全然つまんないって話ですよ。
僕はもっとこの世界の人たちとスキルについて話がしたい!
あれをやったらこんなスキルが手に入ったとか、このスキルを使ってこんなことまでできたとか!
そういった話をしたいんだ。
誰もが当たり前にそんなことが出来る社会。
それを目指すことがこの世界に生を受けた僕の夢の一つだ!
「よーし!そうと決まったらガンガン行くぞー!!」
グリム・シュガーボックス、1歳。
大志を抱いております!
「グリムちゃーん、行商隊が来たわよー」
「え、本当ですか!すぐに行きます!!」
でもそれは置いといてまずはお買い物ですね!
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あとがき失礼します。
スキルツリーの事を考えるにあたって『師』と『士』について軽く調べてみました。
今回の『調教士』のスキルを書くにあたってどっちの漢字の方がいいのだろうと疑問に思いまして。
それによると、
・師=『なにかの集団に属する人間を教え、望ましい方向に導く者』
・士=『他者より秀でた能力でなんらかの業務を遂行しうる者』
という違いがあるようでした。
確かに『師』という漢字を用いる職業の方は大体「先生」と呼ばれる立場の人ですよね!
実は『ちょうきょうし』をパソコンで変換すると、まず『調教師』と変換されてしまい『士』を用いた調教士は候補に挙がりませんでした。
しかし本作に登場する調教士の事を考えると『師』という漢字を用いるには違和感を感じてしまったため、本作においては『士』を採用させていただきました!
漢字の用法に詳しい方などいましたら違和感を覚えられたかもしれませんがご容赦ください。
では最後に、ここまで私の作品を読んでいただきありがとうございます!
ここまでのお話を見て僅かでも興味を抱いて下さり、今後も少しくらい見てやるかと云う方がいらっしゃってくださるならば、フォローの程どうかお願いします。
また寛大にもフォローしてくださった方もフォローまでは、、、という方も、★の数で評価等いただけると本当に励みになります!
感想など頂けた日には飛び上がって喜びます。
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