第21話⁂出世街道⁂
元々出世欲の人一倍強い洋介は、手柄を立てて出世コ-スに乗ろうと必死だ。
同期より抜きん出る為には、どんな卑怯な事をしても構わない。
また普通にしていては、到底同期を追い落とす事は出来ない。
そこで陸軍士官学校、陸軍大学校と先輩達から絶大な信頼と人気を勝ち得る技を習得した洋介は、この口八丁手八丁で出世を勝ち取ろうと目論んでいる。
要は同性に好まれる願ってもない武器である、容姿と肉体が有るという事を知った洋介は、自分の持っている武器を遺憾なく発揮して出世街道まっしぐら。
そこには当然、性愛で出世を勝ち取る事も含まれている。
男好きのする容姿と、その外見には到底ふさわしくないマッチョな肉体も相まって上司受けは絶大。
戦闘モード一色の時代、戦場に女性などいない。
楽しみといえば自分の好みの男との蜜月である。
元々成績優秀だった事と駆け引き上手、そして…幹部のどんな嫌な要求にも答えて受け入れ愛される事で、出世街道まっしぐらの洋介。
だが、洋介の本当の夢は、建設会社の建築技師になる事だった。
その為、父建造に不満タラタラ。
折しも時代は大正ロマンの、何ともモダンな洋風建築の技術を取り入れた、公共施設が建設され始めた時代。
洋介はそんな時代建築家になる夢を抱いていた。
大正ロマン建築物。
旧岩崎邸(明治後期竣工)ニコライ堂(東京復活大聖堂)鳩山会館(大正13年竣工)等
建築・インテリア分野では、明治大正期にかけて、政府が洋風建築の技術を取り入れるための施策として、海外の有名建築家ジョサイア・コンドルなどを招き、アール・デコと呼ばれる直線や幾何学模様をモチーフとした装飾様式がヨーロッパやアメリカでは流行していたため、当時日本で建てられた官庁や学校などの建築は、洋風建築やそのインテリアには、アール・デコらしい装飾が多く見られる。
一般的に、大正ロマンインテリアと呼ばれるのは、この明治大正時代にかけて作られた、いわゆる洋館のようなレトロモダンな建築や、一見は和風でも建具や内装などに洋風のデザインを取り入れたハイカラな建築の内装や家具のことを指す。
自分が仮にも親子である義母千代に対してあのような醜態、有ってはならない事をしたせいで、父建造の逆鱗に触れた事を棚に上げて逆恨みも甚だしい。
確かにそうなのだが、義母千代も余りにも警戒心の無い一番性に対して敏感な時期に、一緒にお風呂に入るなど、襲ってくれと言っている様なものだ。
それも「お風呂に入って来るな!」と言ったにも拘らず勝手に入って来て、(美味しそうな女体)餌をこれ見よがしに目の前にぶら下げられて、頭が可笑しくならない中学生などいない。
それも丁度、性に目覚め出した中学生にそれは酷と言うもの。
父建造も妻千代からその話を聞いて、妻千代の余りの警戒心の無さに只々呆れ返ってはいるが、その半面今までは若く輝いている雪乃に目を奪われて、目にも入らなかった千代だったが、千代もまだ他人から見れば、女としての魅力があるのかも知れない。
放っておいたら誰かに取られてしまうかもしれない。
(まぁ~?いくら何でも洋介とは1回こっきりだとは思うが?それでも…千代も魅力的な肉体をしているから……)
息子洋介から見れば、どう見てもおばさんにしか見えないと思っていたのに、女として千代を見れた。
ましてや、あんな若い男の子が、40歳も年の離れた千代の裸を見て興奮して襲った。
あれだけ千代を拒んでいたのに、男とは勝手なもので雪乃に気持ちが有りながらも、千代が洋介と交わった事で何とも言えない、あんな若い男の子からも相手にされた危機感、それもあんなに美しい息子が千代を抱いたなんて、激しい嫉妬心に苛まれて、改めて千代の魅力を再認識して千代を離したくないと強く思う建造。
そして…急に千代が欲しくなった。
我慢が出来ずに興奮して思い切り千代を抱き寄せた。
いつもだったら喜んで身をゆだねる千代が、今日はどうした事だろう拒絶反応を示した。
(一体どういう事ヨ?)
今の千代の心の中は、全く違う気持ちが支配している
(あんな若いそれも美しい少年に強引とはいえ抱かれて、あの時はショックで涙が止まらなかったが、今でも思い出すと洋介の魅力的な眼差しに身体が震える)
洋介のあの時の、性に目覚めた少年の危険な蒼い眼差しに、もう一度逢いたい。
年甲斐もなく若い少年に首ったけになってしまった。
そして…あれだけ待ち望んでいた夫の要求を前に、あの美しい少年とのギャップに、思わず手を跳ね除けてしまった。
それは比べたら一目瞭然、洋介と比較されたら。こんな60歳目前のおじさんなんか敵う訳が無い。
それから、急に千代に接近したのには訳がある。
当然我が息子洋介に、妻千代を奪われそうになったのもあるが、実は…最近雪乃がよそよそしく、部屋に上げてくれないのもあるのだ。
二頭を追う者は一頭も追えずのことわざがあるが、こんな訳で雪乃にも相手にされず、最後の砦千代にまで捨てられそうなので危機感を感じて、又それ以上に大事な息子が、義母である40歳も年上のおばさんにハマって、人生を踏み外しては危険。
そう思い早速、陸軍士官学校に入隊させたのだ。
一方の洋介は、悪いと思いながらも夢を踏み付けにされて、陸軍士官学校に無理矢理放り込まれた父建造を、少しだけ恨んでいる。
更には入隊したからには、父建造の力で出世したなど絶対に思われたくない。
そんな声を跳ね返す為にも、どんな事をしても出世したかった。
そして同じ陸軍の大先輩でも有る、出世コ-スまっしぐらの父建造を追い抜きたい。
そう思い人には言えない、目を覆いたくなる様なえげつない行為もへっちゃらで、やりこなして来た。
◆▽◆
軍人と聞くと、真っ先に目に浮かぶのが、あの凛々しい軍服姿で、敬礼する姿を思い浮かべる人も多いが、確かにあの軍服姿は誰が見ても惚れ惚れする。
エリ-ト軍人は別だが、実際は平均的には安月給でいつ死に直面するか分からない、あの当時は人気のない職業だった。
そんな自分の夢を踏み付けにされて、何としても父建造を追い越して大将に出世したいと目論んでいる。
【戦前の日本陸軍では陸軍大将は、内閣総理大臣や枢密院議長と同じ格付けであった。
大日本帝国陸軍では、陸軍中将への進級者が1200名超、これに対し陸軍大将の任官者は僅か134名】
だが、野心満々の洋介では有ったが、戦況が悪化する中、運悪く敵国の流れ弾で敢え無く戦死。
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