第6話⁂悪魔と化した義兄!⁂
紆余曲折が有りながらも腐れ縁なのだろうか、趣味嗜好、偏差値、等々が一致するので余り嬉しい話ではないが、巡り巡って大学も同じ大学になった小百合と江梨子。
一時は長い間、口も聞かない日々が続いたほどの大喧嘩もした。
例えば財布の中のお金が………?いつの間にか無くなる事件。
実は…江梨子ちゃんの家には諸々の事情があり、13歳のあの夏の日に空恐ろしい、義兄幸助から強姦されるという類い稀な事件が起こっていた。
それでは幸助は何故その様な暴挙に出たのか?
義兄幸助の母は不慮の事故で亡くなったと言われているが、何とも残念な事に自殺を図っていた。
その理由は、父富造が母を捨てて愛人の元に走ったからなのだ
それも父の富造にすがり付き泣き叫ぶ母を振り捨てて、あの憎き女多恵の元に走った富造の行動にショックを受けての自殺なのだ。
実は…父は本当は愛人多恵と所帯を持ちたいと頓に願っていたが、祖父母の強い説得で仕方なく別宅との二重生活を余儀なくされていた。
富造は、二重生活を隠し通そうと努力はして見たが、とうとう妻に隠し子の存在を 知られてしまい、一か八かの選択を迫られ、これ幸いに愛人多恵の元に走った。
また多恵の方もできた女で、こんな若い美空でありながら、せかすでもなく今の愛人生活を甘んじて受け入れてくれているのだ。
「私は今の生活で十分よ」
こんな健気な事をいうので余計に愛おしく思う父富造なのだ。
一方の妻は年かさも多恵より増していると言うのに、ギャ——!ギャ———!蜂が刺さったかのように泣きわめく。
こうして二進も三進もいかなくなった父の富造は、愛人多恵の元に転がり込んだ。
何度も連れ戻しに行くも受け入れてもらえず、ショックを受けた本妻が、思い余って豪邸で首つり自殺をしてしまった。
大学4年生の幸助は帰宅して、母の余りにも残酷な最期の姿に身体中の血が逆流して、何処をどう歩いたか分からない程ショックを通り越して、只々夢遊病者のように母の実家である名古屋を目指した。
一人っ子の幸助は、小学の高学年になっても母と一緒に寝るほどのマザコンだった。
そんな大切な母が、何の予告も無しに、突如としてこの世から消えた悲しみは、想像を絶するものが有る。
片方の翼を失っただけでは済まない、それこそ身体半分そぎ落とされたと言っても過言ではない。
そんなもうこの世に未練も無い、只息をしているだけの存在となった幸助の考える事。
それはズバリ復習の2文字。
もう妹が可愛いそんな次元の問題ではない。
いかに母を死に追いやった多恵を苦しめるかなのだ。
そこで多恵の命より大切な、父を殺すか?妹を殺すか?
ここで究極の結果は出た。
自分にとってどっちを残しておきたいか?
妹を最も非道な形で苦しめてやる事。
幾ら多恵が憎いと言ってもあんまりだ。
仮にも血の繋がった義兄に強姦された江梨子の心の傷は、想像に難くない。
これでも小さい頃は、余りにも兄弟が欲しいと言う幸助の為に、チョットした家族の行事には本妻の目を盗んで江梨子と何度も会っていた。
あれだけ欲しがっていた妹だけあって、まるで腫れ物に触る様に大切に大切にしていた妹を、最も残酷で非道な形で粉々に、心を壊してしまった幸助。
優しさの塊で有ったあの優しいお兄ちゃんの変貌ぶりに、ショックを通り越して、只々悪夢の中の出来事と思おうと思えば思う程朝が来るのが怖い。
朝が来るとまた同じ悪夢がフラッシュバックしてくる。
あの優しかった兄の、今までに一度も見た事の無い異常性と狂気と本能剥き出しの欲望が、フラッシュバックして来て気が狂ったように奇声を発してしまう。
自分の中の何かがバシンと弾けて、全てをぶち壊して、全くの別人に生まれ変わりたい、そんな願望に囚われる江梨子なのだ。
こんな精神状態が続き、摂食障害を起こしてしまった江梨子は、食べては吐き食べては吐きの繰り返し、お腹が空くので小百合のお金を拝借して買い食いをしていたのだ。
これはクレプトマニアと言って(盗症、盗癖)窃盗や万引きを辞められずに繰り返してしまう精神疾患。
◆▽◆
大学キャンパスを何とも得意げに意気揚々と闊歩する小百合と江梨子。
都心の大学も射程圏内だった2人だが、両親が快く首を縦に振らなかった事も有り、2人は共に隣県の北陸の雄、金沢大学に入学した。
初枝事件は人々の心に消えがたい教訓として残り、どんな危険が潜んでいるか分からない大都会には離したくない両親の思いが強く金沢での大学生活がスタ-トした。
入学早々、早速あちこちでサークル勧誘に遭い悪戦苦闘の日々。
色んなサークルがある中、そんな時にテニスサークルの部長から声を掛けられた小百合。
一方の江梨子は料理研究会の部長からしつこく勧誘されてサークルに入部した。
だが、思いも寄らない恋愛模様が展開される事になる。
そこには過去の負の遺産が重く伸し掛かってくる⁈
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