森ではなく林です~種族ドリアードで異世界再生~

るいす

第1話 異世界転生

僕こと若倉 悠真は死んだ。死因は不明だ。事故なんかで急死したため不明なのではなく、原因不明の病気にかかり病院で寝たきりになってしまい死んだ。


僕はなんて事のない人生を歩んだが1つだけ好きだったことがある。僕が生まれた頃に家の庭に植えたどんぐりの木が成長していくのを観察することだ。植えたどんぐりの木は僕が10歳の頃には3m程まで成長しており、それを眺めながら僕は家の個室で息を引き取った。


次に目が覚めた時、目の前には人の行列ができていた。なぜかその列に並ばなければならないと感じたため列に参加するが少しずつ前に進むばかりで他には何も起こらない。時間の感覚もわからなくなった頃に、目の前に神判の間という文字とカウンターらしきものが見えだした。自分の番になりカウンターを通り抜けるとそこは和風の部屋になっており、お爺さんがどけ座をして待機していた。


僕が困惑しているとお爺さんは姿勢を正し、僕に話をかけ始めた。


「初めまして悠真君。儂は地球の神の1神じゃ。名前を知られることは許され取らんから聞かないでくれると助かる。そうだな。お爺さんとでも呼んでくれ。それで、先程どけ座しておったわけじゃが、悠真君は他の世界からこの世界に転生してきたのだが、その時に魂に刻まれた魔力の残滓を取り除くことを忘れておった。地球には魔力というものが存在しないためこれが発散することができずに悠真君の身体を内側から傷つけていったのじゃ。

ここまでは良いかの?」


ここまでの話を悠真は何一つ理解できていなかったが見栄っ張りの悠真はとりあえず頷いておいた。


「そうか。理解が早くて助かるわい。それで悠真君には、今後二つの選択肢がある。一つ目はその魂に刻まれた魔力を完全に取り除きこの地球で輪廻転生の輪に加わること。二つ目は魔力のある異世界に行き、そこで生活をする事じゃ。一つ目じゃと今世の記憶は完全に抹消さることとなる。また、今回は儂らのミスで死なせてしまったため人間として転生できるが今後はどうなるかはわからん。もしかすると虫や草に生まれ変わってしまうかもしれんの。二つ目じゃと今打診の来ておる異世界じゃと地球以上に文明が進んだが一度滅びてしまった異世界がある。悠真君の魔力は植物の成長を早めることができる力があるためその力を世界の再生のために使って欲しいとのことじゃ。今すぐとは言わんがどちらかに決めてもらえんかの?」


悠真は話を聞いて、両親の記憶を失うことが嫌だということと、虫や草に生まれ変わりたくないという気持ちが大きかった。二つ目の案が今流行りの異世界転生だということに気が付いた悠真は二つ目の案を受け入れることにした。


「僕は二つ目の案を受け入れて、異世界に行こうと思います」


そう告げるとお爺さんはにっこりと笑った。


「それでは先程話した異世界の神のところに送り届ける。何か転生するための条件などがある場合にはそちらの神に相談してするといい。悠真君。短く苦しい人生を歩ませてしまって申訳なかった。」


そういってお爺さんはもう一度どけ座をした。そこに悠真は声をかけようとしたが転移が始まってしまい何も告げることはできなかった。


悠真が転移し目を開けるとそこにはきれいな女性がどけ座をしていた。悠真はとりあえずどけ座を止めるようにお願いした。


「大変失礼しました。私の神名はアラマミァハ。この地で自然の神の役割を与えられています。こちらに来ていただけたということは私のお願いを聞いてもらえるということでよろしいでしょうか?」


悠真はまだお願いについて理解していないためその説明と手段、そして、報酬について話してくれるようにお願いした。


「そうでした。それでは説明させていただきます。まずこの世界では人類の著しい発展により森林が精霊樹、世界樹と呼ばれる一本の樹以外なくなってしまいました。人間や動物たちはシェルターに避難することで生活ができていますが、それも時間の問題となります。植物なくしては酸素を補給することは困難ですから。それで悠真様にお願いしたいことは、その世界にドリアードとして転生し、世界樹と悠真様の魔力を用いて林を作成していって欲しいのです。こちらから提供できる報酬としましては一定の年齢に達してからの不老ということでどうでしょうか?」


「この話、お受けしようと思います。」


それを聞いてアラマミァハは嬉しそうな笑顔を浮かべ、

「では、早速転生させますね」

といい、転生の儀式を始めた。


悠真は転移先や魔力の使い方なんかを教わっていないことに気が付いたが、自分でも気になることを神が見落とすことはずがないと思い、そのまま転生された。


次に目を開けた時、悠真は赤ちゃんの姿で巨大な樹のつるで作られたゆりかごの中にいた。

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