第6章

6-1

 3年生の新学期が始まって、3者面談があった。新しい担任の先生は、ずーと数Ⅰ数Ⅱを担当していて、私も授業中は話だけは聞いていたので、よく知っている先生だった。掛川大志先生。


「瀬戸内さんは去年あたりから急に頑張りだしたなー お母さんも 進学ということでいいんですね」


「はい 急に 大学に行きたいって言い出したもんですから」


「それで 瀬戸内さんは どこか 希望のとこ決めているんですか?」と、私に向かって聞いてきた。


「・・・キヨーダイ 京都大学の農学部です 資源生物学科です」


「えー サダちゃん! 先生 この子 ちょっと成績伸びたもんだから、舞い上がってるんです 気になさらないでくださいね」


「いえ お母さん そんな無茶なことないですよ 紗奈さんはね 去年の2学期から、数学の点数が82 100 3学期も100点なんです 2学期末の100点は紗奈さんひとりだけです。1学期は56 42点だったんですけど。英語だって2学期になると86 92、3学期は96点です。国語だって伸びている。英数国の3教科は3学期だけで言うと学年トップです。この調子で行くと充分 京都大学だって突破できると思いますよ」


「そうなんですかー 私 京大目指しているなんて この子から、今 初めて聞いたもんですからー」


「紗奈さんなら、きっと頑張れると思います。瀬戸内さん 僕は、不思議に思っていることがあるんだ 1年の時から君を見ているけど、授業中にノート取らないよね? 授業は真直ぐに聞いてくれているみたいだけどー どうして? 良かったら、訳を聞かせてくれないか?」


「先生 ウチは不器用なので ノート取ってたら、先生の話 聞き逃しちゃうんです だから、家に帰ってからまとめてるんです 1学期はいい加減だったけど」


「そうかー そういう理由なんだね 嫌 僕は君に謝らなきゃなんないんだ すまなかった 謝るよ 2学期の中間テスト 疑っていた カンニングじゃぁなかったのかと 本当にすまない 実は、君達のことも変な眼で見ていた 悪く言えば、不良ぽいっていうかー でも、藤代十和子さんも真面目に勉強して教育大受かったし、君も・・ それに、よく聞いてみると、君達のグループは皆からいじめられたり、除け者にされた者の集まりなんだってな 別に、他人に迷惑を掛けているんじゃあないって 見た目は悪いけどな 僕も、前までは悪く思ってた」


「せんせい そんなー ウチ等 そんな立派なもんじゃぁないですよ ただ仲間なだけ」


「そうかー 瀬戸内さんはリーダーなんだってな」


「そーなんですよー この子たら よしなさいって言うのにー あのー 内申書なんかに響くんでしょうか?」


「いや べつに 悪いことはしてないですし 影響ないです あのー お子様を応援してあげてください 家族の協力がないと 受験生は辛いんです 僕も、出来る限りのことは協力します 他の先生方の間でも、評判になっていてな 君のこと すごい変身したみたいだって だけど、本物なんだなーって 2学期以降 なんかのスイッチが入ったみたいだな」


 学校を出たらお母さんが


「サダちゃん 充君なの?」


「ウン 一緒に受かって勉強したいんだー」


「そう 好きなんだね」


「ウン ・・・好き」 だって 私の人生を変えてくれたんだものー 私のことをちやんと見ていてくれたんだものー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る