第232話 ボス戦前編
「離れた位置で倒せれば!」
サーシャはロッドに魔力を集める。
近づかれると気持ち悪いので、遠距離で倒すつもりのようだ。
「クラス3・
魔法を解き放つと、三十を越える氷の矢が巨大トカゲを襲う。
「あの巨体ではかわすことは出来ないはずです」
サーシャの言葉通り、巨大トカゲの動きは遅く、氷の矢が直撃する。
「やりまし⋯⋯えっ?」
しかし残念ながら巨大トカゲに傷跡がついているように見えない。
「ど、どういうことでしょうか。クラス3・
サーシャは再び巨大トカゲに向かって氷の矢を放つ。
巨大トカゲは避けることを諦めているのか、氷の矢など初めからなかったかのように無視してサーシャに向かって突撃している。
そして再び氷の矢が巨大トカゲに直撃した。
しかし当たる瞬間に、まるで氷の矢が自ら避けたかのように方向を変えているように見えた。
どうやら巨大トカゲは、何らかの方法を使って氷の矢を防いでいるようだ。
巨大トカゲがサーシャに接近する。
「くっ! クラス4・
サーシャは掌サイズの氷の球を造りだし、
氷系の魔法でダメージを与えることが出来なかったのに、何故また氷系の魔法を。
やはり苦手な爬虫類が相手ということで、平常心を保てていないのだろうか。
俺は風の盾を展開するため、左手に魔力を集めるが⋯⋯やめた。
サーシャは巨大トカゲと戦う前に、信じてほしいと言っていた。
その瞳には覚悟が宿っていたし、今のサーシャに必要なのは過去のトラウマを乗り越える強い心と、どんな時でも揺れることのない自信だと思う。
それなら仲間として俺はサーシャの行動を信じて見守るだけだ。
サーシャが放った氷の球が巨大トカゲへと⋯⋯いや、これはトカゲには届いていない。
氷の球は巨大トカゲの手前に落ちてしまう。
「ギャワアッ!」
巨大トカゲが、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「フフ」
しかし攻撃を外したはずのサーシャも笑みを見せていた。
地面に落ちた氷の球は、巨大トカゲの周囲を凍らせたのだ。
すると巨大トカゲは真っ直ぐに走ることができず、氷に足をとられる。
そしてその勢いは止まらず、巨大トカゲは明後日の方へと滑っていく。
サーシャは初めから巨大トカゲを倒すのではなく、突進を止めるために魔法を放ったのだ。
苦手な相手だろうが、サーシャは冷静に相手を追い詰めた。
「お姉ちゃんすごいすご~い」
後はとどめを刺すだけだが、どうやって氷の矢を防いだかわかっていない。
しかしだからといってこのチャンスを逃す手はないだろう。
「クラス6・
サーシャが魔法を発動させると上空から突如稲妻が現れ、巨大トカゲに向かって落ちていく。
「これは皇帝陛下の⋯⋯」
俺が痛い目を見た魔法だ。
あの時は危うく死ぬ所だったので、じゃっかんトラウマがある。
だがこの魔法なら、食らえば一撃で巨大トカゲを倒すことが出来るはずだ。
そして稲妻は体勢を崩した巨大トカゲに直撃した。
「さっすがサーシャお姉ちゃん!」
ノノちゃんの喜びの声が洞窟内に木霊するが⋯⋯
「いや、まだだ」
「えっ?」
稲妻は直撃する前、巨大トカゲの真上に作られた水のような物に防がれていた。
もしかしたらこれが氷の矢を防いだ正体なのかもしれない。
「私の魔法が効かないなんて⋯⋯」
そして魔法を防いだ巨大トカゲは体勢を立て直す。
どうやらチャンスタイムは終了してしまったようだ。
「ですが完全無欠の魔物などいません」
サーシャは再びロッドに魔力を集める。
巨大トカゲの接近を許してしまうため、サーシャとしては攻撃し続けるしかない。
「|クラス3・
サーシャが魔法の言葉を発すると、十数本の雷の矢が巨大トカゲへと向かう。
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