第191話 スキルに頼りすぎると痛い目をみる

 こ、これはどうすればいいんだ。


 とにかく美少女三人にすり寄られている状態だから、良からぬことをことを妄想してしまいそうだ。

 だがここで手を出したら、三人の信頼を失ってしまう。

 俺はすぐ様冷静沈着のスキルを使い、賢者タイムに入ろうとするが⋯⋯


 あれ? スキルを使っても邪な感情が収まらない⋯⋯だと⋯⋯

 まさかとは思うが三人の魅力が強すぎて、冷静沈着のスキル能力を上回っているのか!


 どどど、どうしよう!

 まさかスキルが効かないなんて考えもしなかったぞ!

 スキルがあるから大丈夫と高を括っていたから、今の俺はものすごく動揺してしまっている。

 まず気になるのが俺の両腕だ。

 エミリアとサーシャが俺の両腕に抱きついているため、どうしても胸の感触に集中してしまう。

 だが俺はこの時悲しい事実に気づいてしまった。

 左腕は、大きく柔らかいマシュマロに包まれているが、右腕は柔らかいものに包まれていないことを。


 あれ? おかしいな。何だか涙が出てきたぞ。


 だが例え大きさはなくとも、エミリアという美少女に抱きしめられているだけで、俺の脳は正常な判断が出来なくなっている。


 それにノノちゃん⋯⋯君は何故そんな場所にいるんだ。

 頼むから動いて刺激しないでくれよ。


 とにかくスキルも無効化されるし、ここから脱出することが先決だな。

 もし三人が目を覚ましてしまったら【夜這い】とか【性欲の塊】とか【エロ子爵】など不名誉な称号が増えてしまいそうだ。


 俺は名残惜しいが、まずはサーシャに抱きしめられている左腕から抜く。

 そして今度は右腕の脱出を試みるが、強い力で抱きしめられており、抜くことが出来ない。


 おいおい、何て力だ。

 押しても引いても動かすことが出来ないぞ。

 これはエミリアが抱き枕に飽きるのを待つしかないのか。

 いや、その前に起きる可能性もあるため、ここは多少強引でも腕を引き抜いた方がいいな。


 でもどうする?

 かなり強く引っ張っても抜け出すことが出来なかったんだぞ。


 そうだ! 確かエミリアはくすぐられることに弱かったはず。

 ここは横腹をくすぐって、力が緩んだ時に腕を引き抜こう。

 しかし女性経験が少ない俺に取っては、寝てるエミリアの横腹に触るのはハードルが高い。だけどやるしかない。

 俺は空いた左手を使って、エミリアの細くて折れてしまいそうなウエストに手を伸ばす。


 細! なにこれ? 人間?

 俺はエミリアの細すぎるウエストに驚愕する。

 だが今は驚いている場合じゃない。俺は意を決してエミリアの横腹をくすぐる。


「ふふ⋯⋯ふふふ⋯⋯」


 するとエミリアは笑みを浮かべ、俺を抱きしめていた腕が緩まる。


 今だ!


 そして俺はその隙をつき腕を引き抜くと、見事にエミリアの手から脱出することに成功した。


 ふう⋯⋯とりあえず何とかなった。

 エミリアは起きていないよな?

 笑い声は聞こえたが瞳は閉じたままだ。

 後はノノちゃんにどいてもらうだけだが⋯⋯


「ふふ⋯⋯リックたらまたそんな所を触って⋯⋯エッチなんだから」


 突如エミリアが声を出したので、俺は思わず視線を向ける。

 だがエミリアの目は変わらず閉じられたままだ。


 突然話し始めたからびっくりしたぞ。

 夢でも見ていたのか?

 それにしてもエッチって⋯⋯夢の中の俺はエミリアのどこを触ってしまったんだ!

 しかもまたってなんだ! またって!


 とても気になる内容ではあったが、今はここから脱出することを優先する。

 後はノノちゃんを股からずらして、エミリアとサーシャの間から抜け出すだけだ。


 ノノちゃんは俺が触れてないと悪夢を見てしまうから、俺と一緒にベッドの端へと移動しよう。

 そして俺はノノちゃんをお姫様抱っこで持ち上げる。

 するとベッドの上で動きがあった。

 なんと俺という抱き枕がなくなったことで、エミリアとサーシャが抱き合う形になってしまったのだ。


 仲の悪い二人がこのような体勢を取るなんて。

 ここは引き剥がした方がいいか?

 だけどそれで目を覚ましたら嫌だなあ。

 とりあえずこのままでいいか。

 せめて夢の中でくらい、二人には仲良くしてもらおう。

 俺は二人をこのまま放置することにした。


 そして朝方、俺とノノちゃんは甲高い声で目を覚ますことになる。

 何故ならエミリアとサーシャは同時に目を覚ますと、嫌いな相手の顔が至近距離にあったからだ。



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