第169話 意外とチョロい?
「遅かったわね。いつまで私を待たせるつもりなの」
背後から声をかけてきたのは、なんとエミリアだった。
さっきの男達を探しに行ったと思っていたが、まさかこんな所にいるなんて。
「エミリア、どこに行ってたんだ?」
「旅の準備をするために先に帰ったのよ。外なら邪魔なサーシャはいないし⋯⋯って! 何でこの子がいるのよ!」
エミリアは俺の横にいるノノちゃんに気がつくと、何故か驚いた声を上げていた。
「エミリアお姉ちゃんこんにちは~。もしかしてエミリアお姉ちゃんも一緒にお外に行くの?」
「そうよ。私とリックでエメラルドユニコーンの角は取ってくるから、子供は街で待ってなさい」
「そんなあ⋯⋯ノノ、エミリアお姉ちゃんみたいな綺麗な人を初めて見たから、一緒にお話したかったのに」
ノノちゃんは俯き、明らかにガッカリした様子を見せる。
「そ、そうなの? 仕方ないわね。特別に同行することを許可してあげるわ」
エミリアさん⋯⋯チョロ過ぎやしませんか? 初めはノノちゃんがいることに怪訝な顔をしていたが、少し褒められただけでその態度は一変した。
う~ん⋯⋯でもエミリアが来るのかあ。
戦力的には問題ないけど
だがノノちゃんの嬉しそうな顔を見て、今さらエミリアは来たらダメだなんて言えない。
「リック。早くこっちに来なさい。後荷物はお願いね」
エミリアはノノちゃんと手を繋ぎながら、荷物を持てと急かしてくる。
えっ? もう仲良くなっているの!?
あの気まぐれ猫のエミリアとこんなに早く仲良くなれるなんて、ノノちゃんのコミュ力は凄いな。
仕方ない。これは一緒に行くしかないな。
俺はエミリアがついてくることに不安を覚えつつ、南門から街の外へ向かうのであった。
そして俺達はクラス2
だがエメラルドユニコーンは感知能力が高いらしいから、ここからは歩いて行くことにする。
「それにしても⋯⋯ノノの武器ってイケてるわね」
「お兄ちゃんに作ってもらったの。ノノの宝物だよ」
どうやらエミリアも銃のフォルムを気に入ってくれたようだ。一般的な芸術センスがあれば、ノノちゃんの銃をカッコ悪いなんて言う奴はいないと俺は自負している。
「エミリアお姉ちゃんもすごくカッコよかったよ! 風のように素早く魔物を倒す姿はとっても素敵だった!」
「当然ね。私を誰だと思っているの」
確かにエミリアの剣技はいつ見ても惚れ惚れする。本人の容姿がそうさせているのか、ただ強いだけじゃなくて、美しさも兼ね備えているんだよな。
「どうしたのリック? 私の華麗な戦いを見て見惚れたの?」
「ああ⋯⋯エミリアの剣技は凄いな。いつまでも見ていたくなるよ」
「そ、そう⋯⋯わ、わかってるじゃない」
ん? 素直に感想を述べただけだが、何故かエミリアはそっぽを向いてしまう。まさか褒められて照れているのか? いや、それはないな。エミリアはいつも天才と持て囃されているから、褒められ慣れているだろう。
「あれ? エミリアお姉ちゃん顔が赤いね」
「そ、そんなことないわ! これは夕日が当たってそう見えるだけよ!」
エミリアは俺達から離れて、益々明後日の方を向いてしまう。
夕日って今はまだ昼過ぎだぞ。何とも苦しい言い訳だな。
「エミリアお姉ちゃんは強くてかっこよくて⋯⋯可愛いね」
「そうだな」
「う、うるさいわね! リック後で覚えてなさい!」
「何で俺だけ!」
むしろ褒めていたのはノノちゃんなのに。俺だけ怒られるのは理不尽だ。
こうしてエミリアの可愛いらしい所が見られて、場の雰囲気が和むのであった。
だがその時間はすぐに崩されることになる。
何故なら突然森の陰から、巨大な生物が現れたからだ。
「お、お兄ちゃん⋯⋯何あれ? すごく大きいよ」
ノノちゃんが少し怖気づいた様子で問いかけてくる。
無理もない。目の前に現れた魔物は、俺の身長の三倍はある大きさだったからだ。
「ふん⋯⋯こんなの見た目だけよ。ただのスライムじゃない」
エミリアの言うとおり、この青く透明な色を持つジェル状の魔物はスライムだ。軽い酸による攻撃をしてくるが、見習い冒険者でも倒せる雑魚だ。
しかし俺の知っているスライムより、数十倍もの体躯を持っていた。
「私がやるわ!」
エミリアは左手に持った剣を引き、突進した勢いも乗せて前方に突きを放つ。
あれはエミリアの必殺スキルだ。目の前のスライムを早々に始末する気だな。
「ノノを怖がらせた罪は重いわ。くらいなさい! ミーティアスラスト」
エミリアがスキルを口にしながら放った突きは、剣が無数に分かれて巨大スライムに襲いかかる。
するとエミリアの剣は、見事巨大スライムを斬り裂くのであった。
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