俺の先生は、今日も

朽木桜斎

1日目(表)

「家庭教師の甲良公晴こうら きみはるです。よろしくお願いします」


「お、順聖じゅんせいの先生ですか? 姉のゆいです。弟はバカなんで、がっつり教育してやってください」


「はは、そうですか……」


 髪の毛、ほんのりと茶色っぽいな。


 落としてはいない、たぶんヘアカラーだ。


 で、つるんとしたサイドテールってか。


 半袖から見える腕はひきしまっている。


 スポーツをやっているのか?


 いや、ハーフパンツごしのふとももの感じからして、おそらくは何かの格闘技だと思う。


 耳はつぶれていないから柔道じゃない。


 拳もいたんでいる様子はないから、空手でもないだろう。


 待てよ、非接触の伝統派って線もある。


「姉ちゃん、先生、来たの?」


「ああ、順聖。早く顔を出しなさい、失礼でしょ?」


「わかってるよ~」


 出た、小生意気系ショタっ子。


 この子もいじりがいがありそうだな。


 いかにもマイルドやんちゃって感じだ。


「ほら、ちゃんとあいさつしなさい」


浮矢順聖うきや じゅんせいです。よろしくお願いします……」


「甲良公晴です。順聖くん、よろしくね?」


 ふん、ガキが。


 すぐにでも俺のいいなりにしてやる。


「じゃあ、わたしはクラブがあるので。両親は旅行中ですから、順聖の指導、ゆっくりとできますよ?」


「そうなんですね。クラブって、なにかスポーツとかですか?」


「小学生からジークンドーを習ってるんです。今度試合があるんですよ~」


「ほうほう、ジークンドーと言えば、あのブルース・リーが開いたという?」


「お、先生、くわしいですね! いまの若いものは、ブルースなんてしらないですからね~」


「いやいや、自分も趣味で格闘技の試合を見たりするもんですから」


「おお! 機会があったらぜひお話したいですね! あ、ヤバ、もうこんな時間! とにかく先生、順聖の偏差値を爆上げ、お願いしますよ?」


「ははは、これでも一応、フリーランスとしてはそれなりに名の知れてる腕なので。順聖くん、がんばって志望校、目指そうね?」


「ん、はい……」


 ふっ、ちょろ。


 それにしてもこの姉ちゃん、でかいな……


 食べごろピッチピチのピーチだ。


「しゃきっとせんか、しゃきっと! じゃあ先生、あとはお願いしますね!」


「はは、任せてください。じゃあ順聖くん、さっそく部屋へ案内してくれるかな?」


「は、はい……」


 さてさて、まずはと。


 いつもの「仕込み」と行きますか……

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