第10話 コンビニへ行くような気楽さで決めた覚悟
そう言えば……。
「ランクの上限ってあるんですか?」
話題の転換を図る。サリリのせいで寒々しくなってきてしまったので気分を変えたい。
「上限は設けていないので、ランクはどこまでも上がります。」
「最高ランクはどのくらいですか?」
「現在トップのユーザーさんは1180の方です。戦力等は個人情報の為、教える事が出来ません。」
1180だと!?
初期勢と後発組ってくらいに俺とのランクさが酷い。
どのくらいの戦力があるのか想像がつかないが、今の俺では勝てない事だけは間違いないだろう。
「ランク差50以上の格上に勝利した8人目のユーザーである大五郎さんには期待しています。絶対トップを獲って下さいね! もう、ホントに職員一同応援してますから!」
急にジョーダンさんが前のめりになり、熱の入った応援をしてくる。
何か事情でもあるのだろうか?
「俺がトップになると、何かあるんですか?」
彼は、良くぞ聞いてくれましたと勢いのままに詰め寄り、事情を説明しだす。
顔! 顔が近いって!
「現トップのユーザーさんは、システム内の存在が創造神を害する事が出来ないのを盾に色んな女の子を周囲に侍らせ、システムを管理する職員に見せつけて自慢してくるんです。」
こんなシステムのゲームだ。そういう事をする奴は一定数いそうではあるな。
「更にはその子たちの扱いが、それはもう本当に酷くて言葉の暴力は当たり前、手を上げるのは日常茶飯事です! いつでも彼女たちは泣いていて、笑顔なんて一度もみた事が無いですよ……。
運良く存在強度20,000,000の戦力がいるからって、一位獲って調子乗ってるモラハラが服着て歩いているような嫌な奴なんです!」
と悔しそうな表情で一気に語り、拳を震えさせるジョーダンさん。
なんて奴だ。確かにそれは酷い。目の前の人物が如何にふざけた名前であろうと怒り出すのも納得だ。
しかし個人情報とやらは良いのだろうか? 戦力をバラシてしまっているが……。
突っ込まないでおこう。言った本人は気付いていないようだし。
「すみません。取り乱してしまいました。」
「いえ、大丈夫です。そんな奴は懲らしめてしまいましょう!」
俺のあるかないかも分からないような、なけなしの正義の心が首をもたげて起きだした。
いや、待てよ……?
「でも、そいつを倒したからと言ってその子たちが酷い扱いを受けなくなる理由にはならないですよね? 何か対策はあるんですか?」
「勿論です! トップ成績のユーザーは、ランク差著しい、えー具体的には100以上ですね、格下相手の挑戦を拒否できないようにし、格下に3度負けるとユーザー資格を喪失するというルールを期間限定で適用します。
ですので、大五郎さんがそいつと対戦する前には必ず教えてください。そして三回連続でそいつに対戦を申し込んで勝利して下さい。これが私達に出来るギリギリ限界の対策です。」
成程。現状そいつには勝てないが、ランク差100、200、300、と差のある格上相手に勝利を積み重ね、10万上げる君を大量入手すれば勝ち目はある。
つい先程生み出したばかりである外道使いサリリの試運転を兼ね、ランク差50の相手と何度か対戦して戦闘による戦力アップを図りたい。なるべくなら経験値的なものを分散させたくないので、現状の人数だけで行ってみるか? しかし負けた時の事を考えるとな……。
そうだ、大事な事を聞いていなかった。
「巻き戻し機能はWP消費ですか?」
「はい。巻き戻しをする際は、どの程度戻すかに関わらず500,000WPを消費します。」
500,000か……。結構キツイが取返しが効く程度のものではある。これからは最低でもそれ位のWPを残した状態にしておかないとダメだな。
まぁ、やる事は決まった。上手く行けば最短でトップの奴に手が届くだろう。
「覚悟が決まったような良い顔をしていますね。私が手助けできる事はそう多くはありませんが、応援していますのでどうか……どうかあいつを倒して下さい!」
「はい。任せて下さい。そいつから女の子たちを開放し、必ずや俺の物にしてみせます!」
「エ?」
「え?」
あれ……?
なんか違ってたか?
「あの……。」
あぁ、そうか! 女の子たちが心配なんだな?
「大丈夫です! 俺は決して女の子たちに酷い扱いをしませんので、安心して見守っていて下さいよ。」
「……。一気に不安になったのですが……。」
ジョーダンさんが何を勘違いしているのか知らんが大丈夫だ。焦るな俺。
「だ、大丈夫です!」
「まぁ、ユーザー資格を剥奪後はそういう事も出来なくはありませんので……。くれぐれも酷い扱いはしないで下さいね。」
訝しそうな顔で言うジョーダンさん。
全く! 失礼な。俺がそんな事する奴に見えるのかよ。全く!
落ち着け。相手は俺にとっての神のような相手だ。怒っちゃいけない。
冷静に冷静に……。
「任せて下さい!」
「……。とりあえず、準備が出来たら呼んでください。呼べばすぐに分かりますので。ではまた。」
と言って彼は去っていく。そして最後まで彼の瞳には俺への疑念が宿っていた。
ふん! 失礼な奴め!
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