第4話 俺の魔王がチート過ぎる件について



 なにはともあれ早速プレイしてみよう。


 先程から空中に浮かぶ映像を見てみると、魔王ダイが周囲を探索しているようだ。どうやら食糧を探しているらしく木の実を手に取り齧っている。


 ダイはほっといて別の生命を生み出してみよう。



 何が良いか……。うんうん唸って考え込む。




 あ、閃いた。




 閃いてしまった。




 存在強度2,406,000もあるのなら、こいつだけで対戦しても勝てるのではなかろうか……と。正直イケる気がする。今までのユーザーは初期ならせいぜい強くても存在強度30,000程度だという話だし、うちの魔王は実にその80倍である。


 負けるわけがない。


 とは言え、一応念の為に先ずは同格と対戦して様子を見てみるか。



「対戦モード。ランク指定は1で。」




【ランク1の相手と対戦モードに移行しました。

 接続中…………。

 対戦が受理されました。侵略ゲートの場所を指定して下さい。】



「侵略ゲートって?」



【侵略ゲートとは、相手の世界へ移動する為のゲートです。移動先は相手の生命体が住む所から数キロ程離れた場所がランダムで選ばれます。侵略ゲートを通ると、居場所が相手に知られますので注意して下さい。】



「成程ね。じゃあ、侵略ゲートの場所は魔王ダイの目の前で。」




【侵略ゲートを設定しました。】




 アナウンスの後、ダイの目の前に20メートルを超える巨大な門が出現し扉が開かれる。突如出現した門に彼は驚いたようだが、警戒しながらも門の中に入っていく。


 門の先は森と草原の丁度境目だったようで、草原の方に目を向けると数キロ先には集落が見える。あの集落が対戦相手の生命体の住処である事は明白だ。彼も気づいたようで集落の方へ向かって歩き出す。


 しばらく歩いていると、全身緑色の子供位の身長のブサイクな生き物が三体、ダイに近づいてきている。



 ゴブリンっぽい。めっちゃブサイクだし。実に臭そうだ。



 そいつらは木のこん棒を所持してゲヒゲヒと下品な笑い声をあげながらダイの前に立つ。そのブサイクな生物の頭上にはゴブリンと表示されており、相手の世界の生き物は種族が自動で表示されるようだ。これは分かりやすくて良いな。


 などと便利機能に感心していると、ゴブリン達はこん棒を振り上げ奇声を発しながらそれぞれダイへと襲いかかった。


 ダイは面倒くさそうな顔をすると、一瞬で一匹のゴブリンの正面に移動し顔を殴る。






 パン!




 と破裂したような音を立てると、ゴブリンの首から上は無くなっていた。頭部を失ったゴブリンがその場にドサリと倒れる。


 残り二匹のゴブリンは何が起こったのか分からないようで数秒立ち止まっていたが、自分達がとんでもない化け物を相手にしてしまった事をようやく理解したようで、弾かれたように逃げ出しギャーギャー騒いでいる。


 ダイは逃がす気はないらしく、一瞬でゴブリン達に近づきそれぞれに蹴りを見舞う。先程同様ゴブリン達は頭部を失い、その場に倒れた。



 グロい……。



 ゴブリン達の死体を見ると存在強度8と表示されている。倒した相手は存在強度がわかるようだ。マジ便利。


 先程見つけた集落から人間が20人程出てくる。原始人の様な恰好でボロ布を纏い、こん棒や杖、弓を装備している。相手もランク1なわけで、それ程文明は進んでいないのだろう。皆警戒しているようで鋭い目つきでダイを見ている。


 彼はそれを何でもないといった具合で平然と歩いており、そんな様子に痺れを切らした人間が矢を放つ。



 はっはっはっ。うちの魔王様にそんなの効かんわ。



 ダイは放たれた矢を素手で掴み取り人間に投げ返すと、パン!と音がしたかと思えば矢を放った人間の腹には穴が開いてしまっていた。その場に倒れる所まで一部始終を見ていた他の人間達が一斉に彼に襲い掛かる。


 その後はお察しの通り、ただの魔王無双だ。襲い掛かる相手に蹴りや突きを放つだけで、破裂音を響かせ次々と倒れていく。戦闘が終わるまでに恐らく一分もかかっていない。




 うん。戦闘ってか虐殺だなこれは。




 倒れている人間達を見ると存在強度が平均で20近い。原始人レベルの生活だと鍛えられるのだろうか。中には25の奴も混じっている。


 相手の存在強度を確認し終えた直後、集落の近くに巨大な門が出現した。鈍い音を立てながら扉が開いていき、中からは大きな……。




 これってドラゴンじゃん。




 ドラゴンとか作れるんだなぁ……。しかも五匹もいる。


 五匹も来ちゃったのかぁ……。




 その生物の頭上にはドラゴンと表示されている。


 え?ドラゴンとか勝てるの? いくらうちの魔王が強すぎとは言え、流石に心配になってきたんですけど。


 しかしその心配は杞憂であった。


 ダイは面白そうなものを見つけたという様に笑い、ドラゴンに飛び蹴りを食らわせる。


 またも破裂音がするとドラゴンの首から上が吹き飛んでしまった。



 あぁ……。余裕なわけね。



 大きな音を立て一体のドラゴンが倒れ伏す。


 ドラゴンの死体には存在強度7,000と表示されている。


 やっぱドラゴンって強いんだな。と他人事のように考えていると、ドラゴン達は大きく咆哮し、口から光線の様なものを広範囲にわたって吐き出す。ブレスって奴か。


 轟音を上げ集落のあった場所が爆発する。地面がめくれ上がり家は吹き飛んで、周囲には土煙が舞う。


 流石のダイもこれはヤバイか……? と思ったが、全くそんなことは無かった。もうもうと立ち込める土煙が晴れると、そこには無傷のダイが立っていた。



 うん。余裕だなこれは。



 自分だけ他の仮想世界ユーザーとは別ジャンルの、魔王無双という名前のゲームをプレイしている気分だ。完全に別ゲーだろこれ……。



 そんな事を考えていると、いつの間にかドラゴン達を倒してしまったようだ。存在強度は大体7,000位だが、一匹だけ15,000の奴がいた。竜王とかだろうか?


 しかし、こうまで一方的だと相手がドラゴンとは言え動物虐待しているみたいな気にさせられるな。


 そして何度か聞いたアナウンスが聞こえてくる。




【相手が降参しました。勝利報酬として5,000WPが与えられます。

 あなたは創造神ランクが2になりました。おめでとうございます。】




 終わってみれば楽勝だったな。呆気なかった。


 対戦を終えるとダイの体が輝き、一瞬で元の世界へ戻される。


 ステータスを開いてみるか。




<仮想世界システム>

 創造神:ランク2

 WP:95,600P


 購入

 売却

 環境設定

 生命の存在強度

 世界へ介入

 履歴

 対戦モード


 生命体の数:1


 強者リスト 一位 魔王種始祖吸血鬼ダイ:存在強度2,406,539






 ダイは少し強くなったようだ。生き物を倒すと上がっていく仕様らしい。





 この調子で次もいってみるか。

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