第17話  お姉ちゃんだってご褒美は欲しいのです!

 唯との勉強会がひと段落着いたところで、時刻は午後一時を過ぎていた。


 二人共、お腹が空いているころだった。


「唯姉、そろそろ、お昼にしない?」


 敦也が提案する。


「そうですね。私もお腹が空きましたので、お昼にしましょう」


 唯は、問題集を閉じながら言った。


「ですが、その前に……」


 唯は立ち上がって、テーブルを移動させると、胡坐で座っている敦也の上に座る。


「ゆ、唯姉?」


 困惑する敦也。


「お昼ご飯を食べる前に、ご褒美が必要だと思うのです!」


 と、言い出すのだ。


「ご褒美? 俺が唯姉に?」


「そうです。勉強を見てあげたのですから、せめて、少しくらいはご褒美が欲しいです。男の子なら、今の状況で、次にすることくらい、分かりますよね?」


 唯は、楽しそうに敦也をからかうのだ。


「今の状況って……」


 自分の前に座っている唯。それをどうすればいいのか。ちょっと、戸惑う。


(さて、どうしますか? あっちゃん)


 唯はドキドキしながら、敦也が何をしてくれるのか、待つ。


「まぁ、この状況ならこれが正解なのか?」


 と、敦也は後ろから優しく唯を抱きしめる。


「————‼」


 唯は、興奮するほど嬉しかった。


 今、自分の体は敦也に後ろから抱きしめられていると思うと、幸せにしか感じない。


 抱きしめたまま、敦也が話しかける。


「唯姉。こ、これでいいのか? 正解が分からないんだが……」


 敦也は、唯の顔を覗き込む。


「ん、ふふふ……」


 唯は、敦也の声など聞こえておらず、自分の世界に入っている。


(これが正解だったわけね……)


 敦也は唯の幸せそうな顔を見て、納得した。


 それから、敦也は唯が満足するまでの間、ずっと抱きしめる羽目になった。

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