第11話  寝不足の高校生活二日目

 ピピピピピピピピピピピピッ!


 目覚ましの音が、部屋中に響き渡った。


「ん、ん……」


 その目覚ましの音によって、少しずつ覚醒する敦也。


 早く起きないといけないのは分かってはいるのだが、どうしても起きられない。


 理由は二つある。


 昨日は、三人の姉と深夜まで起きていた事。


 もう一つは、未だ慣れない午前五時半起きの日課である。


 この時間帯に起きなければ、電車を一本逃すことになり、次の電車に乗ろうとすると、十分後の特急、もしくは、約一時間後の普通電車になる。


(眠い……。後、一時間は寝ていたいのに……)


 敦也は、目覚まし時計を止めようと、右腕を伸ばそうとするが、金縛りにでも遭っているのか、右腕が動かない。


(おかしい。それに重い……)


 鳴り響く目覚ましの音が、敦也の思考回路を邪魔して、頭に響く。


(後、うるさい……)


 敦也は首だけを動かして、どうして右腕が動かないのか下の方を見る。


 毛布の右側の部分が、もぞもぞと動いている。


「すー、すー、すー」


 と、寝息が微かに聞こえる。


「………」


 敦也は、誰か、自分の布団に潜り込んでいると、確信した。


 まだ、拘束されていない左腕を使って、一気に毛布をはがした。


 すると、小柄な体が姿を現す。


 敦也にしがみついて、気持ちよさそうにスヤスヤと眠っていた。


「咲弥…姉……」


 と、言葉を漏らす。


 鳴り止まない目覚ましの音で、その声はかき消される。


 敦也は、目覚まし時計を止めて、怒りを爆発させる。


「咲弥姉っ! 何、人の部屋で寝ているんだぁあああああ‼」


 敦也の叫び声が、部屋中に響き渡った。


 バンッ!


 そして、ドアを開ける音がした。


「あっちゃん、どうしたの⁉ すごい声がしたけど‼」


 と、最初に入ってきたのは唯だった。


「ふわぁ……、もう、朝から何叫んでいるのよ、敦也……」


 その後ろから里菜が顔を出す。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人は、時が止まったかのように動きが固まる。


 すると、一人だけ、ゆっくりと目を覚まして、体を起こしながら目を擦る咲弥。


「んん……。ん? どうした?」


 寝ぼけているのか、咲弥は、敦也と二人の方を交互に見ながら、首を傾げる。


「それはこっちのセリフだぁああ! なんで、咲弥姉が、ここで寝ているんだ⁉」


 敦也は、怒りながら咲弥を見る。


「ん? ……充電?」


 咲弥は、敦也に抱きつく。


 すると、唯が「ふふふ……」と、笑いながら近づいてくる。


「さーやー?」


「何?」


 咲弥は怖気ることなく、唯を見る。


「何じゃないわよ! あなた、朝から何をしているんですか⁉」


 朝から弟の愛が絶えない三女の咲弥であった。

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