第10話  姉弟会議をしよう

 入学式を無事に終えた夜——


 何もかも全て終えて、姉弟四人揃って、敦也の部屋に集合していた。


 ベットの上に堂々と座っている敦也は、床で正座をして、寝間着を着た三人を見下ろしていた。


「唯姉、何か弁解ある?」


 と、声色を変えた敦也が、口を開いた。


 敦也から見て、一番右で正座させられている唯に訊く。


「ありません……」


「で、どういう事? 俺、進路希望校、教えたつもりはないんだけど、なんで、姉ちゃん達が、三人揃って、同じ高校にいるわけ? それもわざわざ、二つ隣町の高校に入学したのに……」


「それは……企業秘密と言いますか、何と言えばいいでしょうか……」


 三人とも、敦也の威圧感を浴びて、怯えている。


「言い訳はいいから、ちゃんと説明してくれる? 里菜姉」


「え? 私?」


 真ん中で正座をしている里菜が、自分を指す。


「里菜という名前、ここにいる人で、他に誰がいるの?」


「だ、だよねぇ~」


 愛想笑いをする里菜。


「いや~、学校の先生を脅したりとか、お父さんを脅したりとか、全然してないよ。ねぇ、唯、咲弥!」


 里菜は両サイドを見る。


「なるほど……。中学の頃の先生を捕まえて、拷問と……。咲弥姉、もっと具体的に教えてくれる?」


「ふぇ?」


 一番左で正座している咲弥に話しかける。


「里菜姉の話だけど……。それ、本当なのかなぁ?」


「………」


 罰が悪そうに、黙ったまま、何も話そうとしない咲弥。


 パンッ!


 敦也は両手を合わせ、ニコニコと三人を見る。


「マジで、詳しく教えてくんない? 俺、わざわざ地元の学校を通わずに受験したのにさぁ……。ハッキリと説明してくれなければ、分からないんだよね?」


「さ……」


 唯が、口を開く。


「三人で、念入りに計画を立てて、それで……進路希望調査票など、先生のパソコンのデータをハッキングしたり、ちょっと拷問と言いますか……まぁ、他にもいろいろと、調べたうえで、やり……まし……た……」


(それ、ほぼ、俺の個人情報駄々洩れじゃないか……。犯罪に近いとかいう問題じゃないし、犯罪だよ、犯罪)


 敦也は、呆れた表情をしていた。


「それで、調べて結果、同じ高校を三人揃って、受験したと?」


 三人は、同時に頷く。


「まったく……。これだから……」


 もう、ため息がどれだけ出たか覚えていない。


「でも……」


 と、唯が話を続ける。


「あっちゃん、なんで、私達に志望校を教えてくれなかったのかなぁ?」


 と、微笑みながらカウンター攻撃を仕掛けてくる。


「うっ……。そ、それは……」


「それは? 何?」


「姉ちゃん達から離れたかったから……」


「え? 聞こえないよ?」


 唯は立ち上がって、敦也に近づく。


「そ、それは……」


 今度は、獲物に威嚇をされ、怯える子犬のようになっている敦也は、殺されると察知した。


 すると——


「でも、お姉ちゃんは優しいから許してあげます!」


 そう言って、自分の胸に敦也の顔を埋める。


「っんんんんんんんんん‼」


 敦也の顔は真っ赤になる。


「あっ! ズルい、唯! 私も‼」


 と、里菜は唯から敦也を奪い、同じ事をする。


「ちょっと、二人とも、今度は私よ、貸しなさい」


 今度は、咲弥が敦也を奪う。


「いや、咲弥の胸で泣かれても……」


「うん……」


 二人はその状況を見て、悲しい様子になる。


「あんた達、それ、私に対して侮辱してるの? ねぇ、そうなの?」


 咲弥は、唯と里菜を睨みつける。


「だって、咲弥の体って、子供というか、まだ、成長期の途中みたいな感じで……」


「うん、そうだね」


 二人は同意して納得する。


「ムキィ~‼ あんたらの胸なんか、ただの脂肪の塊よ!」


 そして、三人は、敦也をめぐって喧嘩を始めだすのだった。


 こうして、高校入学の初日が終わりを迎えた。

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