第15話 ソレのある場所。

 おかげさまで昨日洗った羽布団は、無事に干すことができました。洗濯機が動かなかった時はどうなることかと思いましたけれど、何とかなりました♪


 家で羽布団を洗うことからもお察しのように、自分で何かをするのが好きです。お洋服はすべて自分で洗いますし、ヤバイお薬を使って石けんを作ったりします。家には工具が一通りあって、棚を作ったりもします。今は、本棚が欲しいです。本が増えて、整理ができなくなってきました。板は以前に作った棚の余りがあるので、ネジを買えば作れるかなぁ……。ネジ、買いに行こうかなぁ……。


ぜんぜん話は変わります。


 小学生の頃、永久歯(右下の6番?)に虫歯ができました。しばらく放っておいたのですが、治るわけもなく、イヤイヤ歯科へ行きました。近所に開業した新しい歯科医院です。先生は無口なおじさんで、いつもイライラしていました。どんな先生でも通ううちに雑談の一つもするようになるのですけれど、この先生だけは最後まで無言でした。私は怠け者で自分に甘いので、虫歯の治療を途中でやめる良くないクセがあります。痛いから行くけど、痛みが無くなったら、行くのをやめてしまう。でもこの時だけは、私が行くのをやめる前に、治療がストップしました。先生が、いなくなってしまったのです。大人たちのウワサでは、ギャンブルで借金がかさみ、夜逃げをしたらしい。


 再びその歯が痛み出したのは、ギャンブル先生が失踪してから3年ほど後です。私は中学生になっていました。すぐに行けばいいのに、痛みがガマンできなくなってから、やっと歯科に行きました。家の近所にできた、別の歯科医院です。若い男性の先生がレントゲン写真を見て「これは大変! すぐに治療しないと!」と言い、苦労して仮歯を外しました。


「え? ウソだろ!?」 

私の歯を見た先生が、言いました。歯科衛生士さんたちを呼んで、何か相談しています。衛生士さんたちも私の口の中を見て「まさか、それはナイでしょう!」 「でも、どう見ても……」とか、不穏なことを言っています。なんですか? 何があったのですか?


 戦いは、1時間以上にも及びました。たぶん麻酔を射ってくれたと思うのですけれど、それでも痛かった! あまりに痛いので暴れる私を、衛生士さんが二人で羽交い絞め(!)にして、身動きできなくする。口が閉められない器具を入れているので、口を閉じることもできません。私も困りますが、先生だって困ります。中学生にもなって大泣きしている私の口に無理やり器具を突っ込んで、ガリガリ、キイイーン、ガンガン!やるわけですから。


 全員が疲労困憊した頃、先生は「取れた!」と言い、何かをトレイに投げ入れました。カチャン!と金属的な音がして、それを見た全員が「ウソやろ……」と絶句しました。ねえ、何ですか? いったい何があったのですか? 私の口の中に、何があったのですか???


 イスを起こして、先生がソレを見せてくれました。ソレが何かは、中学生の私にもわかりました。それは「ネジ」でした。ホームセンターで売っている、銀色のネジ。忘れもしません。プラスのネジです。そして、大人になった今ならわかります。それは太さ3.1mm×長さ13mmの、さら木ネジです。「木」という文字が入っていますが、ユニクロメッキの金属製です。主に木工細工に使います。たとえば本棚を作るときとか。間違っても、歯の治療に使うモノではない。


先生は、言いました。

「どうしてネジが、歯に刺さってる?」

私は答えます。

「わかりません」

「これ、ネジなんだけど」

「そうですね」

「………」

「………」


 ネジは私の虫歯に文字通り、ねじ込まれていたそうです。そのせいで歯は、真っ二つに割れていたらしい。仮歯が全体を覆っていましたから、ネジは見えません。私は何も知らなかった。

 仮歯を外して初めて、ネジの存在が明らかになった。治療前に先生たちがしていた相談は「このプラスの溝は、ネジ?」「まさか、それはナイでしょう!」 「でも、どう見てもネジ……」というような、内容だったらしい。ガッチリ食い込んで取れないので、歯を削ったり、細かく叩き割ったりして取り出したらしい。そりゃあ、痛いわ。そりゃあ、泣くわ。


 私の仕業でないと理解した先生は、聞きます。

「こんなヒドイこと、誰がやったの?」

「たぶん、以前に通っていた歯科の先生が……」

「どこの先生?」

「〇〇歯科医院の……」

「ああ。あそこか……」

先生は察したらしく、黙ってしまいました。たぶん訴えたら勝算のある事案なのでしょうけれど、当のご本人が失踪しているので、どうしようもナイ。


 結局その歯を中心に前後の歯もダメになり(これはギャンブル先生のせいではナイです。わたしのせいです)。大事な永久歯を抜歯します。成長期に大事な歯がなくなり、そのまま放置していたので、アゴの骨の成長もおかしなコトになってしまいます。その結果、エライことになるのですけれど、そのお話はまた後日。


 大人になってからは治療でなく、予防で歯科に通うことにしました。虫歯がなくても、定期的に歯のお掃除に通う。お掃除をしてもらえば虫歯の予防もできますし、虫歯ができても発見が早い。ちょっと削って(虫歯が小さいから、痛くない)、ちょっと詰めて(痛くない)、すぐに治療が終わります。


 芸能人じゃなくても、歯は大事です。何もなくても半年に一度は、歯のお掃除に行くことを強くお勧めします。




























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