第176話 雲散霧消

"乙巳いっしの変"において、巨勢こせ徳多とくだ中大兄皇子なかのおおえのおうじの側に降り、甘樫丘あまかしのおかの邸宅が炎に包まれるのを観て、胸の裡に居るモノに恐れ震えた。


斑鳩いかるが


彼等の魂が錦の雲に昇っていくように見えたのは、煙炎のスクリーンに映った爆ぜる火花が見せた幻覚だったのかもしれないが、今はもう雲散霧消した上宮王家かみつみやおうけの亡霊を。




★☆★


巨勢こせのおみの徳多とくだ

蘇我入鹿の側近で、聖徳太子の嫡男の山背大兄王やましろのおおえのおう征討の指揮を執った人。

"乙巳いっしの変"の後は、蘇我氏討伐に参加し、なんだかんだで左大臣にまで昇進したという、世渡りの上手い人。


炎に包まれて滅亡した、上宮王家かみつみやおうけ蘇我本宗家そがほんそうけを、どうにか搦めたくてさ。



☆★☆


次のお題は〖出る杭は打たれる〗

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