第106話 アイスバーン

その日は、真っ直ぐ帰宅するには寒すぎた。


一杯ひっかけて駅へ向かう途中、すれ違いざま鞄のぶつかった女性の足許の路面が凍っていたのは、不可抗力だ。


転んだ拍子に破けたスカートから覗く脚線美と、挫いた足首を摩り、

「家迄すぐだから」

の誘惑に、妻の顔のブレーキは効かず、アイスバーンを滑った。



★☆★


加害者の男性なら、被害者の女性に、

「大丈夫ですか?」

と声をかけて、タクシーとか、病院とか、某かの対応をするよね。


「自分ち、すぐそこなので…」

とか、女性が遠慮しても、足を挫いて、歩くのに難儀してるように見え、同居家族等、知人に迎えに来て貰うのは可能かどうか等を聞いて、それが難しいようなら、

「送ります」

っていうのも、自然だよね。


家まで送ってもらった女性が、部屋の中に入る事を許可したのが誘惑かな。



☆★☆


次のお題は〖お揃い〗

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