第036話 キャリーオーバー

あの日。

7年間支え続けた彼の、入籍のニュースを聞かなかったら。

その日。

ロト7がキャリーオーバーをしてなかったら。


TVを消しても、手切れ金の余波なごり


些細な不祥事で干されてた彼の離婚を、

小さなネットニュースで見つけた今日。


ゼロが9つ並んだ通帳で、

彼の横っ面をはたきに行くのも、悪くない。




★☆★


キャリーオーバーには、

1.残っているもの。名残り

2.食品において、表示を免除される添加物

って、意味があるそうな。



なんとなくだけど、彼は、俳優さんっぽいな。

共演した女優さんと電撃結婚でもしたんじゃないでしょうか。


献身を裏切られ、絶望した主人公の目に映ったのは、

『キャリーオーバー発生中』。

手元には、彼のマネージャーが渡しに来た手切れ金。


(ぱあ~っと使って、忘れよう)

と思ったら1等10億円当選。


彼の出てる番組から離れても、

それまで質素に暮らし、彼に援助していた彼女に、そんな大金の使い道なんて見当もつかず、老後の蓄えにするにしても、その元手が、手切れ金だと思うと、あの日の惨めさに胸がチクりと。


仕事も妻も失った彼に、

「(あなたに貰った手切れ金が10億になったんだけど)ねえ。今、どんな気持ち?」

と。


本当に行ったか、行かなかったか。

吹っ切れるか、焼けぼっくいになるかは、

皆様の御想像にお任せします。



☆★☆


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