第6話

 はっきり殺すと脅しの言葉を吐いた僕。


「帰りません」

 

 それでもはっきりとサーシャは僕の言葉を拒む。

 わざわざここでサーシャを殺す必要はないし、第二皇子の手駒を殺して、わざわざ敵意を買うのは得策じゃないと思っていたけど……ここまでしつこいなら仕方ないよね。


「じゃあ、死ね」

 

 僕は自分の手刀をサーシャに向けて振るう。





「おーい、アル君ー」

 

 

 

 

 サーシャの首元で僕の腕がピタリと動きを止める。

 僕の手刀がサーシャの薄皮一枚を捉え、一筋の血を流す。


「……ひぃ……ぁ」

 

 本当に殺されるとは思っていなかったのだろう。

 すぐ目の前に迫った明確な死を前にしてサーシャが己の体を震わせ、椅子を倒して僕から離れる。


「番号ッ!」


「え?ば、番号……?紙には三番って書いてあるよ!」

 

 家の外から声をかけてきてくれた酒場のマスターは僕の疑問に対して答えてくれる。


「命拾いしたな」

 

 僕は体を震わせているサーシャを一瞥し、玄関の方へと向かう。

 

「やぁ……お届けものだよ」


「ありがと」

 

 玄関の先にいた酒場のマスターから僕は彼が持ってきてくれた手紙を受け取り、中を一瞬で確認する。……うん。間違いない。


「よし。私はしっかりと届けたからね。それじゃあ」

 

 酒場のマスターは自分のお店へと戻り、僕はリビングの方へと戻る。


「マキナ。ミリア。旅の準備」


「え?なんで?」


「了解です」


「帝国の方に向かうよ」


「……へ?」


「マキナ様。準備が遅いですよ?このままお留守番なさいますか?」


「し、しないしッ!ちょっと待ってて!」

 

 旅の準備をするために慌ててマキナは自室へと戻り、遠出ように準備されているリュックサックを背負ってくる。


「良し。帝国の方に行こうか」

 

 三番の手紙。

 それは時が満ちたことを知らせる手紙だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る